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『稲盛和夫一日一言』 9月20日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 9月20日(水)は、「常識を疑う」です。

ポイント:利益率や組織のあり方など、経営の常識といわれているものほど恐ろしいものはない。経営者は、固定観念を持つことを戒めなければならない。

 2016年発刊の『稲盛和夫経営講演選集 第4巻 繁栄する企業の経営手法』(稲盛和夫著 ダイヤモンド社)の中で、常識にとらわれずに判断することの大切さについて、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 後々考えれば不思議に思えるほど、いわゆる常識というものに、いとも簡単にとらわれてしまうことがあります。

 もちろん、私は常識とされていることを、とにかく頭から否定すべきだと言っているわけではありません。問題は、本来限定的にしかあてはまらない「常識」を、まるで常に成立するものだと勘違いして、それを鵜呑みにしてしまうことが問題だと言っているわけです。

 「常識」にとらわれず、常に本質を見極め、正しい判断を積み重ねていく。絶えず変化している経営環境の中では、そうした姿勢を貫くことが必要となります。

 例えば、製造業の場合、販売費及び一般管理費は売上に対して15%ぐらいかかるものと、多くの人が思い込んでいます。では、「他社が15%かかるなら、うちはもっと努力して10%にして売ってみよう」となぜ思わないのか。実際、こうした費用は、努力と工夫次第で抑えられるものなのです。

 またこんな事例もあります。不思議なことに、毎年賃金が上昇しても、それをカバーできるだけの利益水準は出せるのに、どうしてもそれ以上の利益は出すことができないという会社が数多く存在します。
 それは、3%ぐらいの利益が出るのが常識で、うちもそれぐらい出なければ世間体が悪いと思って、猛烈にコストダウンをしようと努力されるために、赤字転落をしないで済んでいるからです。

 経営者の常識からすれば恥ずかしい、赤字転落直前という必死の状況に追い詰められると、何としてもそこから逃れようと馬鹿力が出て、合理化が進み、何とか例年並みの利益率は確保するものの、「うちの業種では、このくらいの利益率を出すのが精一杯だ」と思い込んでいますから、それ以上の追い込みはしようとしない。

 こうした事例は、いわゆる常識というものに、いかに簡単にとらわれてしまうものなのかということを示しています。
 常々私は、「常識を否定し、物事の本質、原理原則から考えなさい」と言っています。経営に限らず、あらゆる場面において、人間のメンタリティが非常に大きく作用するということを、ぜひ頭に入れておいていただきたいと思います。(要約)

 京セラにおいては、経営というものは「売上を最大限にし、経費を最小限にして、売上から経費を引いたその差が儲け(=利益)」という名誉会長の経営の原点が、今なお経営の大原則となっています。
 ですから、創意工夫をしさえすれば、利益率はいくらでも高くすることができると考え、それまでの「常識」を破っていくことができたわけです。

 1998年発刊の『稲盛和夫の実学 ー経営と会計ー 』(稲盛和夫著 日本経済新聞社)の中で、物事の本質にまでさかのぼることの大切さについて、名誉会長は次のように述べられています。

 何事においても、物事の本質にまでさかのぼろうとせず、ただ常識とされていることにそのまま従えば、自分の責任で考えて判断する必要はなくなる。また、とりあえず人と同じことをする方が何かとさしさわりもないであろう。たいして大きな問題でもないので、ことさら突っ込んで考える必要もないと思うかもしれない。
 しかし、このような考え方が経営者に少しでもあれば、私の言う原理原則による経営にはならない。どんなに些細なことであっても、原理原則にさかのぼって徹底して考える。それは大変な労力と苦しみを伴うかもしれない。しかし、誰から見ても普遍的に正しいことを判断基準にし続けることによって、初めて真の意味での筋の通った経営が可能になるのである。(要約)

 物事の判断にあたっては、常にその本質にさかのぼること。そして、人間としての基本的なモラル、良心にもとづいて、何が正しいのかを基準にして判断をすること。大切にすべき考え方ではないでしょうか。


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