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『稲盛和夫一日一言』 8月18日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 8月18日(金)は、「理想を見失わない」です。

ポイント:「こうあるべきだ」という理想を最初に描き、それに近づくためにどうすればよいのかを常に考えていく。壁に突き当たったとしても、安易に行きやすい道を選んではならない。

 1989年発刊の『心を高める、経営を伸ばす』(稲盛和夫著 PHP研究所)の中で、未踏の領域で成功をもたらすものとして、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 山登りをしていて、ガスに包まれ視界ゼロという状況で、分岐点に行き当たるたびに進路を判断していては、ルートを見失って遭難してしまいます。このようなときは、再度ベースキャンプに戻ってやり直すことがいいといわれてます。

 新たな領域では、何度も壁に当たって、行き詰まることがあります。そのような局面では、当面の問題点の克服だけに終始してしまい、そこを何とかクリアしたとしても、目標に対して若干のズレが生じることがよくあります。そして、何度も当面の課題解決を繰り返しているうちに、当初の目標からはいつのまにか大きく逸脱していってしまうのです。

 本人はいくつもの障害を乗り越えられたことに感動して、「よくやった」と自らを慰め、「まあ、このくらいやれればいいだろう」と自己満足しているのですが、いかんせん結果は成功とはほど遠いものになっている。

 その場かぎりの判断を繰り返し、原点に立ち返ろうとしないがために、そのような結果となってしまいます。いかなる場面においても原点を見すえ、物事の本質に立脚した判断を心がけていくことこそが、未踏の領域での成功をもたらしてくれるのです。
(要約)

 このことは、2011年発刊の『京セラフィロソフィを語るⅡ」(稲盛和夫著 京セラ経営研究部編/非売品)の「迷った時は原点に返る」の項でも詳しく解説されています。

 2012年発刊の『京セラものづくりの心を語る』(伊藤謙介著 京セラ経営研究部編/非売品)の中で、「製品の理想の姿を追求する」として、伊藤謙介元京セラ会長は次のように述べられています。

 メーカーには、常に製品に望まれる理想の姿を追求することが求められています。お客様からの要求仕様は、メーカーとして守るべき最低のレベルです。しかし、それをただ守っているだけでは、とても「手の切れるような製品」はできません。
 本当にお客様に喜んでいただける理想の姿、つまり高品質で高性能、そしてコストパフォーマンスに優れた製品をタイムリーに提供できているか。それぞれの現場で、より厳しい管理を行っていくことが大切です。
 社員一人一人が、それぞれの持ち場立場で、一つの妥協も許さないという姿勢を持って、製品の理想の姿を追求していかなければならないのです。
(要約)

 ものづくりに携わる者一人一人が持つべき心構え、考え方として説かれた内容ですが、これはものづくりの世界にとどまらず、あらゆる分野に通じることではないでしょうか。

 今日の一言には、「こうあるべきだという理想を最初に描いて、それに近づくにはどうするかを考える、真の理想主義者でなければならない」とあります。

 ドキュメンタリー番組やテレビドラマなどで、陶芸家が窯から取り出した自らの作品を片っ端からハンマーで割っているといったシーンを見られたことがあると思います。
 その行為は、取り出して一目見た瞬間に、「これは自分が創ろうとしたものではない。こんな中途半端なものを後世に残すわけにはいかない」といった陶芸家の心の中の葛藤があった末での判断のように感じます。

 事業に携わる者一人一人が、それぞれの持ち場立場で、一つの妥協も許さないという厳しい姿勢を持って理想の姿を追求していく。個々人であれチームであれ、今後とも大切にしていくべき姿勢、心構えではないでしょうか。


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