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『稲盛和夫一日一言』 1月20日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 1月20日(土)は、「仕事を愛する」です。

ポイント:自分の仕事、製品に対して愛情を注ぐことができなければ、いい仕事などできない。

 2009年発刊の『働き方』(稲盛和夫著 三笠書房)の中で、自分の仕事、製品に対して愛情を注ぐことの大切さについて、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 「自分の製品を抱きしめたい」
 私は、製品開発にあたって、いつもそう思っていました。
 自分の仕事、自分の製品に対し、それくらいの愛情を注がなければ、いい仕事などできないのではないでしょうか。

 「仕事は仕事、自分は自分」と割り切って、距離を置いて働くことと向き合う。最近の若い人にはそうした傾向があるようです。しかし本来、いい仕事をするためには、仕事と自分の距離をなくして、「自分は仕事、仕事は自分」というくらいの不可分の状態を経験してみることが必要です。

 すなわち、心と身体ごと、仕事の中に投げ入れてしまうほど、仕事を好きになってしまうことです。いわば、仕事と「心中」するくらいの深い愛情を持って働いてみないと、仕事の真髄をつかむことはできません。

 創業間もないころ、水冷複巻蛇管(すいれいふくまきじゃかん)という直径25cm、高さが50cmもある大きくて複雑な構造の陶磁器製品の注文を受けたことがありました。

 小さなセラミック製品しかつくったことのない京セラには、製造ノウハウもなければ生産設備もありません。ただお客様の熱意にほだされ、「ウチでもできます」と言って引き受けた以上、どうしてもやらなければならなくなってしまったのです。

 この製品をつくるために、たいへんな苦労を経験しました。
 一般の陶磁器と同じ粘土を使って何とか成形まではできたものの、製品のサイズが大きいため、乾燥に時間をかけすぎると、製品自体の重みで形が崩れてしまいます。
 そこで私は、その蛇管を「抱いて寝る」ことにしました。つまり、工場内の窯(かま)のそばで、乾燥に適した温度の場所に私が横になり、そっと蛇管を胸に抱いて、夜通しそれをゆっくりと回すことで、型崩れを防ぎながら乾燥させるという方法を取ったのです。

 はた目には、さぞかし異様な光景だったことでしょう。
 しかし私は、「何とかこの製品を一人前に育てたい」と、まるで自分の子どもの成長を願うように、深い愛情を抱いていました。だからこそ、夜を徹して蛇管を抱いていることができたのです。

 そのような涙ぐましい取り組みの結果、何とか無事完成品を納品することができました。
 「製品を抱いて寝る」
 それは確かにあか抜けないし、効率的とも言えないやり方でしたが、どんなに時代が変わって、自分の手を泥まみれにし、油まみれにしながら働くということが流行らなくなったとしても、「自分のつくった製品を抱いて寝る」くらいの愛情を持って、自分の仕事に向き合わない限り、難しいテーマや新しいテーマに挑戦し、それをやり遂げていくという、仕事の醍醐味を心の底から味わうことはできないはずです。
(要約)

 1996年発刊の『成功への情熱 ーPASSIONー 』(稲盛和夫著 PHP研究所)の中で、働くということの意義について、名誉会長は次のように述べられています。

 仕事は精神的満足を与えてくれるものです。事実、仕事を通して、人生の新しい意義を見つけることもあるはずです。

 一方、仕事を続けていくことは大変なことです。長期にわたって人知れず努力を重ねなくてはなりませんし、非常に困難なことにチャレンジしなくてはならないときもあるからです。
 もし義務感だけで仕事をするのなら、それはただ単につらいだけのものになってしまうでしょう。義務感だけで何年も働くことは耐えがたいことです。

 
 それでは、つらい仕事を生きがいのあるものに変えるにはどうしたらいいのでしょうか。それにはまず、「仕事は楽しい」と、自分自身に言い聞かせることです。意識的にそうする努力を重ねることにより、本当に心から仕事が好きになれるのです。
 生涯を通じて打ち込める仕事を持てるかどうかで、人生の幸不幸は決まります。まずは、働く意義を見つけることです。
(要約)

 京セラで働き始めたころ、「製品を抱いて寝る」というこのエピソードに触れ、「果たして自分はそこまでの精神状態で仕事をやれるようになるのだろうか」と不安に感じたのを覚えています。

 しかししばらくすると、頭のてっぺんから爪先までどっぷりと仕事に浸かって、猛然と突っ走っている自分がいることに気づきました。おそらく当時の私は、自身に「仕事は楽しい」と言い聞かせるステップをすっ飛ばして、一気に「仕事を好きになる」というフェーズに突入していたのだと思います。
 ですから、生きるためにとか家族を養うためにお金を稼がなければならないから働く、という感覚はまったくありませんでした。

 数々の修羅場をくぐりながらも、仕事の醍醐味を味わい尽くす。
 これから仕事を始めようとされている方々が、そうした生涯を通じて打ち込むことのできる仕事に巡り合えることを願っています。


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