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#84 紙と水素結合~紙が強い本当の理由~

この番組では、様々な切り口から、これからの紙の価値を考えたり、紙にまつわる情報、たまに紙に全く関係ない情報を発信しています。
この番組は、清水紙工(株)の清水聡がお送りします。

今回は珍しく、紙を化学的に見ていきたいと思います。
僕が学生時代に一番苦手だった教科は、何を隠そう「理科」です。
元素記号が出てくると、吐き気を催します(笑)
この先も、出来ることなら元素記号とは関わりたくない、そんな人間です。
ですが、紙の構造を根本的に知る為には、今回のテーマは避けて通れません。
今回は、僕のような理科が苦手な方にも分かりやすいように、難しいことはスッ飛ばして、重要なポイントだけお伝えできればと思います。
それでは、本日もよろしくお願いします。

さて、「和紙と洋紙を比べたら和紙の方が強い」というのは皆さん分かっていると思います。
じゃあ、なぜ和紙の方が強いのか?
「和紙に使われる楮や三椏や雁皮といった植物のセルロース繊維は、木材のセルロース繊維より長く、強く絡み合うため」
この答えは、50点です。
確かにその理由もあります。
しかし、一番大事なポイントが抜けているんです。
それが、今回のテーマ「水素結合」です。

まず、セルロース繊維というのは、グルコース(ブドウ糖)がめちゃくちゃ連結してできて鎖状になったものなんですね。その数なんと、500~6,000個と言われています。
そんなグルコースは、ヒドロキシ基(通称:OH基)を持っています。
はい、僕はこの時点で泣きそうです。でも、頑張りたいと思います。
皆さんイメージしてください。セルロース繊維に先ほどのヒドロキシ基(通称:OH基)がたくさん生えています。
水分を含んだ紙というのは、このヒドロキシ基(通称:OH基)が生えたセルロース繊維同士の間に、水(H2O)が存在します。だから、弱い。
一方で、水分が抜けた状態だと、ヒドロキシ基(通称:OH基)が生えたセルロース繊維同士が直接くっつきます。これが「水素結合」です。
この水素結合があるからこそ、紙はめちゃくちゃ強いんです。
湿度を持った紙や、水にぬれた紙が弱くなるのは、この理由から説明できます。

最初の質問に戻りましょう。
なぜ和紙の方が洋紙に比べて強いのか?
それは、和紙の方がセルロース繊維が長いので、水素結合がより多く、より複雑に起こるから。これが答えです。

それから、紙がリサイクルできるのも水素結合が理由です。
水に溶かせば、水素結合が外れます。
それをもう一度抄けば、紙になります。

もう皆さん分かりましたね。
紙が強い理由。
それは、「水素結合」です。

はい、という訳で、今回は「紙と水素結合」というテーマでお届けしました。
僕の頭がパンクしないように、かなり端折りました。
もっと詳しく知りたいという方は、ネットにもたくさん情報が出ていますので、調べてみたら、より理解が深まると思います。
いやー、今回の感想は、「ヒドロキシ基がめちゃくちゃ言いづらい」です(笑)
はい、それでは、今回はこの辺で失礼いたします。
最後までご視聴いただきありがとうございました。

▼ 参考資料
『トコトンやさしい紙と印刷の本』(日刊工業新聞社)
「コラム(81) 〈資料〉 水素結合について」(紙への道)

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