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左小指の術後にバネ指様の引っかかりが生じた症例

以下に記す症例について、見方、知識の使い方、考え方の流れが参考になれば幸いです。

情報)
2年前に左小指末節骨を骨折して手術を施行した。

以降、左小指が動かしにくく、バネ指様の引っかかりが生じるようになった。

それによりPCのタイピングが不自由である。

指の引っかかりは術後からであるが、いつから起きたか不明である。

引っかかりは左小指MPの自動伸展運動で生じる。

小指単独でIPを屈曲させてMPを伸展させると引っかかりが大きく生じる。

指全体を伸展させたり、小指のIPを伸展させてMPを伸展させると引っかかりは少ない。


Q) どのように考えるか?

A) ポイントは、IPを屈曲させた状態のMP伸展で大きく生じることである。

それだけではよくわからないので、小指単独で動きを調べた。

Q) 状態は?

A) 伸展して引っかかりが生じたところでMPが内転した。


そこから、引っかかりは腱と組織の挟み込みによるバネ指ではなく、MPのズレから生じていることがわかった。

そこで、MPを触診すると、中手骨底が右に比べて左は掌側に偏位していた。

また、その肢位からのMP伸展で違和感を感じ、徒手でMPを正常な位置に補正しながらの伸展では違和感が軽減した。

Q) 原因は?

A) 全指の伸展では症状が少ない。


この時に作用する主な筋は、小指側では総指伸筋と小指伸筋である。

いずれも指背腱膜に付着する。

指を屈曲させたときは、総指伸筋と小指伸筋の機能は低下する。

この時、小指屈曲位からMPの伸展方向に移動させるために小指の指背腱膜が使用される。

その時に使用される筋は、小指外転筋である。

AnneM,Gilroy 他著、坂井 建雄監訳、市村浩一郎 他訳:プロメテウス解剖学コアアトラス第2版より引用


小指外転筋の低下はMP伸展で内転方向に移動することから伺える。


以上から
IP伸展位からのMP伸展の動きで引っかかりが減ったのは
総指伸筋と小指伸筋の作用により指背腱膜が緊張して、中手骨を背側に引っ張り、MPのアライメント補正が行なわれたからだと考える。

指屈曲位では、その機能が低下してしまい、小指外転筋の低下から指背腱膜を介して伸展が行えず、ズレが生じて症状が出現した。

Q) アプローチは?

A) 左小指外転筋の強化である。

Q) 方法は?

A) 総指伸筋と小指伸筋の機能を押さえるために、IP屈曲位でMPの伸展・外転運動を5分間、休憩をとりながら実施した。


Q) 結果は?

A) 症状は減少した。

Q) 何故、このようなことが起きたのか?

A) 現象はMPなので、末節骨骨折手術の直接的影響はない。

術後、小指外転筋の使用が少なかった事による廃用と考える。


最後までお読み頂きましてありがとうございます。



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