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手背部痛の症例

以下に記す症例について、見方、知識の使い方、考え方の流れが参考になれば幸いです。

情報)
両手をテーブルに置き体重を手にかけると、左手の背部に痛みが生じる。

右                           


   手前左


      痛みの部位は、示指の付け根あたりである。


Q) 原因は?

A) 痛みの部位からは手根関節、あるいは橈骨手根関節の問題が考えられる。

Q) 評価は?

A) 手関節の可動域に問題なかった。

背屈


掌屈


尺屈


橈屈


Q) すると?

A) 手根骨の問題と考えると、痛みの部位から舟状骨か有頭骨である。


舟状骨と有頭骨は手根中央関節を形成する。

林 典雄 他著:運動器疾患の機能解剖に基づく評価と解釈 上肢編より引用


手に荷重をかけると


屈筋支帯で形成された近位横アーチが潰れてくる。

Keith L.Moore 他著 佐藤達夫 他訳:臨床のための解剖学 第2版 より引用


Donald A.Neumann 原著 嶋田 智明 他監訳:筋骨格系のキネシオロジー 原著第2版 より引用


すると、手根中央関節を形成する舟状骨と有頭骨で圧迫が起こり、痛みが生じる?

林 典雄 他著:運動器疾患の機能解剖に基づく評価と解釈 上肢編より引用


Q) 評価では?

A) 近位横アーチを形成する筋に、屈筋支帯に付着する母指球と小指球がある。

Donald A.Neumann 原著 嶋田 智明 他監訳:筋骨格系のキネシオロジー 原著第2版 より引用


症例の痛みは母指球寄りなので、左右の母指球を視診と触診で調べると、萎縮が確認された。

右      


また、母指内転筋斜頭は有頭骨に付着するので、痛みに関与している可能性がある。

AnneM,Gilroy 他著、坂井 建雄監訳、市村浩一郎 他訳:プロメテウス解剖学コアアトラス第2版より引用


Q) アプローチは?

A) 母指内転筋の筋力強化を5分間行った。

右手で左母指内転筋への抵抗運動


Q) 結果は?

A) アプローチ前の痛みを10とすると、アプローチ後は8であった。

Q) 効果としては微妙である。

他に、考えられることは?

A) 近位横アーチを形成する筋に長掌筋がある。

AnneM,Gilroy 他著、坂井 建雄監訳、市村浩一郎 他訳:プロメテウス解剖学コアアトラス第2版より引用


Q) 評価では?

A) 触診では、緊張が高く、筋力が低下しているのが確認された。

右     


Q) どのように調べたか?

A) 長掌筋腱のテンションを高めるために、母指と小指の対立運動を行なわせながら手関節を掌屈させて、その時の長掌筋腱の張り具合の左右差を触診で確かめた。

Q) アプローチは?

A) 母指と小指の対立と手関節掌屈を同時に行い、これに抵抗を加えた。

この状態で3秒間保持する運動を、休憩を含めて5分ほど実施した。

Q) 結果は?

A) 荷重時の痛みは、アプローチ前を10とすると、1に低下した。

右         


近位横アーチ形成に関して、単関節筋と多関節筋のパワーの違いを見せつけられる結果だった。


最後までお読み頂きましてありがとうございます。




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