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伸び上がり歩行の症例

以下に記す症例について、見方、知識の使い方、考え方の流れが参考になれば幸いです。

情報)
20代の方で、病歴や怪我の既往はない。

歩行で伸び上がりがある。

学生時代は運動部であった。

歩行の状態) 歩行周期は左下肢 
      ※ 上着の下ラインに注目

PSw      TSt      ①    MSt      LR       IC


Q) 歩行周期のいつ、伸び上がりがあるか?

A) MSt~TSt初期の間の①で起こる。

Q) 何故、ここで伸び上がるのか?

A) 伸び上がりの時期が立脚後期の初期である。
この時、踵が浮いているので、前足部荷重になっている。

PSw      TSt      ①    MSt      LR       IC


前足部荷重で必要なことは、前足部剛性による支持とそれによる蹴り出しの効率化である。

それを軸に考えると、早期の足関節底屈は足指の伸展の動きを増す。

これは、ウインドラス機構による足部剛性と関係する。

Q) 早期より足指伸展を促し、ウインドラス機構を強化するのは何故か?

A) 内側縦アーチの低下により、足指伸展が少ないためと考える。

Q) 症例のアーチは?

A) 低下していた。

踵骨の外反と内側の出っ張りから内側縦アーチ低下を伺わせる。


Q) アプローチは?

A) 内側縦アーチを形成する後脛骨筋や母趾屈筋などを強化する。

Q) 評価では?

A) 筋力に問題はなかった。

Q) 内側縦アーチが低下している原因は?

A) アーチを直接形成する靭帯や足底腱膜などの伸張性が大きいためだと考える。

Q) 筋は内側縦アーチに関与しないのか?

A) 関与はするが、立位では筋緊張、歩行では無意識下での筋収縮で行われる。

全体重を支える部位で、それら筋の力ではアーチ形成は困難である。

もしも筋のみで支えると恐らく筋腹や筋の付着部で損傷が起こる。

Q) では、アプローチは?

A) 問題は足部結合組織の伸張性である。

結合組織を短縮させるには拘縮を作らなければならない。
これは、非現実的である。

そこで、結合組織の代わりとしてアーチパッドを挿入する。

Q) 結果は?

A) 今回、アーチパッドの代用として、丸めたティッシュを入れた。



伸び上がりは消失した。また、ティッシュを入れた後では重心の前方移動が速くなった。

歩行の状態) 歩行周期は左下肢 
      ※ 上着の下ラインに注目
上段は前
下段は後

PSw      TSt      ①    MSt      LR       IC


Q) 何故、足部の結合組織の伸張性が大きくなったのか?

A) 症例には、外傷などの既往はないので先天性と考える。

Q) ティッシュを入れた後で重心の前方移動が速くなったのは?

A) ティッシュを入れたことで、足底内側が高くなり、荷重が外側に移動した。

それにより、荷重域の幅が狭まり、荷重線の蛇行が減ったからである。

写真の赤線が荷重線、黄色がアーチの範囲

アーチ高
荷重線が通れる道幅は狭い


アーチ低
荷重線が通れる道幅が広くなる


最後までお読み頂きましてありがとうございます。




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