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書評 あさま山荘 1972 坂口弘

上記のニュースによれば、彼女は「再出発」したいらしいが、もういい加減黙っていたらどうかという感じしか、個人的にはない。朝日の記事の最後にも出ているが、赤軍派のメンバーはまだ国際手配中。そのなかには、クアラルンプール事件の超法規的措置で、出国した坂東国男がいる。坂東はあさま山荘事件で公判中だった。坂東と同じように、当時の赤軍派が釈放要求を出したのが、坂口弘だったが、彼は出国を拒否した。その後、93年に死刑判決が確定した。それから30年近くになろうとしているが、執行されないのは坂東の裁判が終了していないためとされる。

その坂口が、事件に至るまでの記録を書いたものが、上記の書である。出版されたのは、その確定判決が出た後のことで、自分が19歳か20歳の学生の頃。いまは参院議員になった猪瀬直樹が産経新聞の書評で(たぶん当時在籍していた新聞店か図書館で無料で読んだ)、この本を取り上げていて、しばらく経ってから読んだ。左翼の学生運動の話を、当時は保守系のスタンスの発言が目立った猪瀬が、自らの学生運動の歴史と重ね合わせ、「いまの若い世代にも当時の闘争の歴史を知ってほしい」旨のことを書いていて、ちょっと驚いたのを憶えている。読んでみて感じたのが、自らのことを反省を込めつつ、終始正当化することもなく、美学化することもなく、ひたすら客観的に書いていたことだった。のちにこの事件について、当時を語ると称して、出所した植垣や加藤といった元赤軍派メンバーが、事件は反省すべきことがあったと前置きしつつ、どこか当時の若者は真剣だったと言わんばかりの感じで、自己弁護にしか聞こえない印象の発言を繰り返しているのを見ると、坂口の同書での反省を込めた客観的な印象が余計に際立つ。

まあ、最近の足立の映画の件といい、あの世代は基本的に反省とか客観的分析とか、そういうのは無縁なのかもしれない。先もそんなに長くないのに。

#書評 #赤軍派 #重信房子 #坂口弘 #あさま山荘