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テレビ評 3年B組金八先生 第2シリーズ

卒業シーズンが近付くと、どこからともなく流れてくるのが、海援隊の贈る言葉である。この贈る言葉は、名作ドラマの1つと言っても過言ではない3年B組金八先生の第1シリーズの主題歌で、初回では杉田かおるの15歳の母がメインとなっていた。今回、取り上げるのは第2シリーズ。問題を起こすため、他校から放り出される形で、金八先生のクラスに転向してきた直江喜一扮する加藤大がメインだった。このシリーズの見どころの1つが最終話直前の回で、加藤大が放り出した学校を仲間とともに占拠し、校長に謝罪をさせ、その後警察に逮捕されるというストーリー。警察では、加藤ら子どもたちの処遇をめぐって、教師、PTA、警察の3者を巻き込んで激論を交わすシーンが、ほとんど長廻しで流されていた。主演の武田鉄矢は、このシーンについて本番1発撮りで、もし自分が噛んだら終わりになってしまうので、相当なプレッシャーの中で臨んだ旨を、ドラマを振り返る番組で話していたのを記憶している。そのなかで出てくるのが、放り出した形となった校長の「我々には一般の生徒を守る義務があった」という発言に、金八先生が「だから腐ったミカンは放り出せということですか?」と反応し、そこから始まる長い台詞である。

この腐ったミカンという表現は、問題児が出てくるとこれがミカンのようにほかの子供たちにも影響し、それを防ぐために「放校」という形で、加藤が金八先生のもと転校してきたことを指しているのだが、校長への反論という形で始まった長いセリフでは、加藤を預かることになった初めはあまり自信がなかったものの、周囲の協力などを経て、やって来れたなどを話す。そして、以下の名言が出てくる。

「我々はミカンや機械を作ってるんじゃないんです。我々は毎日人間をつくってるんです。人間のふれあいの中で我々は生きてるんです。」

自分はこれを見たのは、再放送時でその後も何度か見ているけれども、語気をかなり強くしていた武田鉄矢の演技もあるものの、やはり震える一言だった。第2シリーズの主題歌が「人として」だったというのも象徴的だが、良くも悪くも人のなかで、いろいろと考えて、行動して、生きていく存在なのだと歳を重ねるにつれて強くかみしめてしまう。金八シリーズはその後も続くが、第2シリーズのこの回は、個人的には日本のテレビドラマの歴史のなかで、五指に入る作品と言っても過言ではないと感じる作品。

#テレビドラマ #金八先生 #腐ったミカン