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AM3:27 繁忙期の一課員

外に出ると冷気が白衣を貫いて肌を刺す。
辺りは街灯も消え、深夜営業のスナック・スタンドだけが誘蛾灯のように通りを照らしていた。
寝不足の頭でフラフラとスタンドに引き寄せられる、スナックを数種、カフェイン飲料、タバコを二箱手に取ると
「お勤めご苦労さまです。」
半分アンドロイドのような店員が声をかけてくる。
ギシギシと音を立てながら決済用の端末を差し出す老人に無愛想に返事をすると、少し間をおいて自分が仕事着のまま寝ていたことを思い出した。
顔を上げると老人は瞳孔のランプをチカチカと点滅させながら少し含みのある声で
「環境課の方はお目立ちになりますから。」
と続けた。
見知らぬ者に身分が把握されている居心地の悪さを感じながら「どうも」とだけ返すと商品を抱えスタンドを後にする。

端末のメッセージボックスを確認しながら通りを歩く、たまに見る人影は黒と蛍光イエローの服を見るやいなやそそくさと裏路地へ隠れてしまう。
近頃は季節のせいか胡散臭い雰囲気が街に漂っている、それに合わせ仕事も忙しさを増していた。以前に増して急な案件や新規の設計が増え、足取りも重くなる。
味のしないホットドッグを無理やり口に押し込みながら駐車場向かい、IDをかざす。
[No.75684 Liam==認証完了]
短い電子音の後、年季を感じさせる音をさせながら扉が開いた。
今は庁舎には何人ほど残っているだろうか…そんなことを考えながら車に乗り込むと端末から通知音が鳴った。
[to開発/整備係 リアム== 新規タスクの追加について]
横目で確認し小さなため息を漏らす。
自分を鼓舞するようにエンジンを掛け、リアムは庁舎へ走り出した。

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