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【ジャズ】グレース・ケリー(Sax)

5年位前か、YouTubeでサックスの演奏を聴きまわっていたら、たしかあるスタンダード曲の参考になるソロを探していたときか、昔のハリウッド女優と同じ名前のこの今年30歳くらいのサックス奏者の動画にでくわす。

なんと、大御所フィル・ウッズが、14歳の新鋭サックス奏者ですと舞台によんで、スタンダード「4月の思い出」をいっしょに演奏する。


この動画の14歳の少女は、(聴いててわかるが)決して準備してきたアドリブを吹くのではなく、もう身についているフレーズを一生懸命くりだして、その場でのアドリブを展開していく。ときに、おいしょ、と背伸びして気合をいれながら。

いろんなパターンのリズムをつづけて、時に伸びやかなロングトーンで歌ったり、危うくなる展開もうまく着地したり。粗削りながら緊張感もってちゃんと即興で伝えたいことを展開しているのを聴いて、へえ、やはりこういうのは生まれつきの才能なんだろうなとおもっていたら、動画4分過ぎ、大御所フィル・ウッズが「お見事」とばかりに、トレードマークのハンチング帽を彼女に被せる。

フィル・ウッズは、チャーリー・パーカーのビーバップの伝統をしっかり継承した、バリバリと吹きまくるモダンジャズの巨匠。2015年に他界している。パーカー死後にパーカーの奥さんとも再婚して、たぶんサックスも含めてパーカーの遺品を大事に継承した人。技術もすごいし、表現も豊かな奏者。ビリー・ジョエルのJust the Way You areのソロの人というと知っている人がたくさんいるかもしれない(あれは彼の即興で、あまりにも美しいのでその即興がのちのち曲の一部のようにそのまま演奏される)。

ぐぐると、グレースのほうはアジア人の見かけどおり韓国系アメリカ人2世で、おかあさんが離婚してケリーさんと結婚してグレース・ケリー(本名)となったとある。へえ。しゃべりを聞くと、賢そうで優しい語りのアジアン・アメリカン。

その後、2年前に、ふとインスタで彼女のアカウントをみつけ、フォローしてみる。

さぞかし有名なジャズクラブでばりばり吹きまくっているんだろうと。

ところが、もう30近くになったかつての14歳は、一見、かなりぶっとんだ感じになっていてびっくり。

黒いセクシー衣装でバイオリンとベースとヘビメタやったり、たしかNYの地下鉄の踊りまくりのパフォーマンスで有名になったバリトンサックス奏者と走りながらの不思議なDuo演奏したり。インスタだからもあるだろうが、奇妙な映えることばかりやっている。

このスターウォーズなんて、おもしろい。


インスタをたどると、「おまえはDis-graceだ、フィル・ウッズの帽子(が贈られた相手)にふさわしくない」なんて馬鹿なひどい中傷をジャズファン?からあびたりしてきたようだが、たしかに、ものすごい才能があって、正統派のジャズの継承者としてのしあがれたはずなのにそちらに行っていない。なにかもがきながら、新しい表現を探しているような、そんな印象をうけた。それでその後も、時々、インスタやユーチューブで聴いている。

おそらく、生徒に教えたりしながら、時には正統派のジャズの演奏もこなしながら、一方でなんとも前衛的なものでSNS発信しているということか。

おそらくジャズって、もともと、1930年代とかの歌謡曲をミュージシャンが仲間内でおもしろおかしくいじって、リズムやメロディをくずして、さらには調性の中で自由に即興演奏した(まったく自由というのでなくあくまでも音楽的に成立する中で)ことから始まったので、いろんな、変形の表現法がでてくるのが自然なジャンルなんだろう。遊んでいるような、そんな自由さが、新たな創造につながるんだと思う(その点で劇画Blue Giantのような根性真剣勝負が全面にでるのはなんだかなあと違和感あるが)。

あ、グレースちゃん、映画音楽オンパレードもやっている。伸びやかで、明るい、いい音色のアルト・サックス奏者である。好きですね。 


唄もがんがん歌っちゃってるな:


(タイトル画は、ジャズで検索して出てきた中から一番いけてるのを拝借)

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