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春 青春/人生で一度/一年に一度

冬の間、動きを遅くして、枯れていくばかりであった藪が、春になり青い芽を伸ばし始めた。初めの頃はようやくポツポツと見えてきた青い色は、もう日々勢いを増すばかりで、数日見ないでいるとすっかり様子を変えてしまうのだった。

いつもと違う道を車で通り、信号にひっかかって脇の公園に植えられた高い樹々を見た。落葉広葉樹のその樹たちは、冬には枯れていた枝に新しい若い葉をつけ始めたところで、年を経た幹や枝の回りに、まだ若々しい緑をまとい、これから来る暑い夏に向かう勢いを思わせた。夏にはすっかり枝が伸びて見えなくなるはずの向こうの空がまだ若い葉の間から透けて見えるのだった。

季節は来年もめぐってくるけれど、人生は一度きり。

年を経た樹々のまとう若い色を見ながら、そんなことを考えていた。

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