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かたむき

うちのキッチンは幅が約15〜20m、奥行きは5mほどある。
料理番組のセットか? というくらいで4人家族(時として3人)に無駄なほど広い。
天井、壁共に真っ白な漆喰で、壁の下側1mはベージュのタイルを巡らせてあり、フローリングの床とのコントラストの差を中和している。
でも、白すぎるため揚げ物などをすると白い壁は汚れがひときわ目立つのではないかと、とても気が引ける。

キッチンからダイニングや1階の他の部屋との境界は曖昧で、天井にあるアーチを描いた短い壁で仕切られている。
玄関、ダイニング、両親の寝室・浴室ドアまで見渡すことができる。
だから、キッチンから見ると各部屋が放射状に繋がっている印象がする。

コンロは壁際のシンク左側と中央の対面シンク横の2箇所。
それぞれガスと電磁式で他に揚げ物専用のコンロが壁際右側の大きな扉の横にひとつの合計3つ。
4ドアの冷蔵庫がその右側の無駄に広い場所にある。
以前は、食器棚もあったのだがシンク下と壁のはめ込み収納があるので必要がなくなり処分した。

しかし気になるのが冷蔵庫を置いたこの場所。
床に微妙なスロープがあるので、冷蔵庫は部屋の垂直線に対し少し斜めになってしまうのだ。
しかも、冷蔵庫の後側は、まだ3m近い空間を残しており、揚げ物をしている横に冷蔵庫が寄り添って立っているように見える。
無駄な広さが冷蔵庫の存在感をとても小さいものにしてしまったようだ。

冷蔵庫の背面が丸見えというのも絵にならないからと、壁際まで押し付けてしまうと調理場からの距離がとても遠くなり、行き来がとても面倒だ。朝から疲れてしまう!
他の場所へ置くことも検討したが、見通しの良さと壁の収納がアダとなり、置ける適当な場所がない。
それで今の場所へ置いてみたところ、スロープが邪魔になった。
このスロープの傾斜は微妙に幅があり、完全に避けようとすると壁から30〜40センチは離さねば冷蔵庫を完全に垂直にできない。いずれの置き方をしても冷蔵庫に違和感を感じるだろう。

今のところ違和感より合理性をとったので、どうしてもスロープにかかり、微妙な傾きは隠せない。
この傾きのせいで、閉めたつもりの扉が動いて全開してしまうことも少なからずあるのです。
それで冷蔵庫の下に板を挟むことも考えましたが、雑な処理にすぎないので私には納得できない。

「そのうち直してやるよ」

と父は言っていたが、いつまで待っても腰を上げる様子はない。

いまのところ用途に問題ないものの、小さなストレスが解消されることはないのだ。
なんとか見栄えがいいように移動したいといつも考えている。

そもそもキッチン横のこの場所は、壁に天井際まで高さの外へ向かってせりあがる扉がある。
ガレージのドアのような...と例えれば想像がつくだろうか。
いや「ガレージのような」というより「ガレージ」そのものだ。
これは家の中へ車を入れることを想定しているためで、床の2箇所のスロープもそのため設けてあるのだ。

「家の中に車を乗り入れる都合ってなんなのさ…」

ガレージと家が一体化しているお宅はよく見かけますが、家の中まで一体化している家なんて他にあろうか?
電気自動車ならいざ知らず、ガソリン車でエンジンをかけられるとたまらない。白い壁など、あっという間に黒ずんでいくだろう。
そう思ったものの建売の家は納得づくで買ってしまっただろうに。
これはリフォームをお願いしたい。
今のところガレージとしてこの場所を使うこともないし、缶ビールを取りに来る以外にキッチンに興味のない父にとって冷蔵庫の傾きは、取るに足らない小さな問題としか映っていないのだろう。

ともかく微妙に斜に構えた冷蔵庫が気になる。 
何とかしたい。何とかしてみよう!

冷蔵庫下のレバーを切り替えて車輪移動できるようにして、とりあえず場所を動かして検討してみることとした。
ところが横から冷蔵庫を押したところ反対側に向かって冷蔵庫がフニャンとへしゃげてしまった。
慌てて形を立て直したが、なんだか座りが悪くなってしまい、冷蔵庫はシャンと自立してくれなくなったのだ。

「おとうさーん! ちょっとー! 冷蔵庫倒れそうだから手伝ってーっ!」
父を呼んだところ

「ちゃんと広げていないからだろ」

とやる気の全く感じられない声だけが聞こえてきた。
たぶん居間のソファーに横になったまま返事しているのだろう。

「ちゃんと広げてない? 何? なんのことさ??」

冷蔵庫の周りを観察すると、一見模様のような細かい仕組みがあった。
手で触ると少しザラザラとした感触があるが、指や髪を挟む余裕がないほどミッチリと込み入った作りになっている。
「なにこれ?」と思いつつ、そこからなんだか広がりそうで、冷蔵庫の前後をつかみ、力を入れると…

伸びる伸びる!アコーディオンみたいにwww
広げられるだけ広げてみると冷蔵庫の後ろの空間に届くまで伸ばせ、変に奥行きの長い冷蔵庫になった。

正面にも同じような仕掛けがあり、その伸び加減が面白くて引っ張っていくと冷蔵庫は冷蔵室というくらいキッチンの一角で、元からこの姿であったのだというくらい大きな姿となりシャンと立ち上がっていた。
私はあまりの変化にスロープのことなど、どこへやら...。

「これって中はどうなっちゃったの?」

ドアを開けると、外側の変化に合わせて中のレイアウトも自動的に組み変わったようで、ウォーキングクローゼット… もとい、ウォーキング冷蔵庫となりました。
縦4ドアが、横4室になったイメージです。
手前から通常食品庫、野菜室。最奥の仏壇みたいな2つがメインの冷蔵庫と分離した冷凍庫。
前室の横壁にネット状のポケットがいくつかあり、中にお米の袋(5㌔)が無理やり入れてありました。
 さっき冷蔵庫が自立できなくなっていたのは、このお米のせいでバランスをたもてなくなったからだと思います。

冷蔵庫が大きくなって、若干キッチンが狭くなった感が否めませんが、キッチンから他への見通しは損なわれていないので、かえってよかったかもしれません。

当初の問題解決とは方向が変わってしまいましたが、心のスッキリボタンは押し下げられたので良しとしたいと思います。

それでは夕食の支度でもしましょうか。
まだ時間は十分にあるので備蓄の根菜類(ジャガイモとタマネギ)が早くも春の訪れを感じ始めて芽を出してきたから早めになんとかしようと思います。

ジャガイモは使う度毎より、予め塩ゆでしたものを保存しておくと、他の料理を作る際に時短になるし、茹でたてのホクホクをホットサラダで食べるのが好きなので、鍋いっぱい茹でることにしました。

タマネギを加えてポテトサラダを…とも考えましたが、別にして2品にしたほうが消費できるかな…ということでオニオンリングにします。
タマネギは炒めるより揚げたほうが甘みが強くなります。

日曜日は、外出しない限り家でラジオを聴くことが多い私です。
Mプレイヤーで音楽を聴きながら…ということも少なくないですが、
今日は午後のラジオが面白く、ずーっと聴いているので、Mプレイヤーはポーチに戻してキッチンの前に置いておきました。

お洗濯片手間で夕食の準備を初める。
外国の曲の歌詞が「ピョンチャン」と聞こえるのがあるということで、その曲が流れ始めた。

なになに? どれどれ!
タマネギに衣をつけながら揚げ油にポイポイ入れていく。

フランス語の軽快な曲は、確かに「ピョーンチャーン!」と言ってるよw
うへへ…
浮き上がってくるオニオンリングをバットへ揚げあげで移していく。

あっ!!!!!!

ノリノリで単純作業を繰り返していたら、
うっかりMプレイヤーの入ったマトリョーシャ型のポーチに衣を付けて揚げ油に入れる寸前、我に返った。

じゅわん!

手を止めるつもりが衣ポーチを落としてしまったwww

あーっっっっっ!!!!!!

あわてて油から引き上げたものの
ポーチはダメだなこれは…
中身は大丈夫かな…

中身はジッパー部分から少し油が染み込んだようですが
本体は部分的に油が着いていましたが無事だったようです。

キッチンに正座してMプレイヤーをフキフキ…
ラジオからはずっと流れ続ける

ピョーンチャーン! ◎△※□=✕○△◎……

※お分かりいただけただろうか
 このお話は、私の見た夢の内容です。
 実際のうちのキッチンは、めっさ狭いですw
 壁もすでに油色です。
 願わくば、この夢に関して、診断していただけるとありがたく存じます。




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