Let Vanilla it a May

街の百貨店いわゆるデパートにひさびさに入った。
「ひと坪バザール」という催事があり、行ってみたかったのだ。
駅前から伸びるこの街のメインストリート開店時間を過ぎているものの
人の動きは思いのほか少ない。
お店の間口をはみ出さんばかりにデカデカと主張する文字と
イキイキと天を仰ぐ街路樹からは活気にあふれるようですが
対面的に都市空洞化をごまかしているようで痛々しくも感じる。
それはなにも、この街だけに限ったわけではなく
どこの町にもありえることだ。

ビルが立ち並ぶ通りでありながら
その大半は居酒屋の類が軒を連ねており
間にアパレル店やコンパクトなホテルが挟まっている。
こんな様子なので日が落ちてからが
本格的に街が目覚めるようなところがある。
それで昼間からファミリーや恋人たちが
通りを行き交うことが少ないのかもしれない。
観光シーズンを除きこの大地を生活の場とする人にとって
街は暮らしから少しばかり離れた場所になっているのかな。

展望エレベーターから見下ろすとまばらな人の流れは一層際立ち
緩やかな流れに身を任せる落ち葉か
多くの人類が滅びてしまったあとの世界を表現した
低予算のSF映画のように感じられるのです。

そらそうか
中心街を利用するには駐車料金もかかり移動も面倒。
郊外の複合大型店舗のほうが便利は良いに違いない。
街中の老舗も過去の栄光が純度を失ったみたい。
街は健康を失って
歯が1本づつ抜けていくように更地が増えていく。
『空き●台分』と駐車場の表示板が2桁の数字を虚しく点滅している。

私が街に出るのは、お気に入りのお店があるからと
街へ写真を撮りに出かけたりなど。
街歩きが目的でたまーに、お店限定のスイーツ欲しさなどそんな感じです。

それにしても地下駐車場は便利が悪い
暗い、狭い、出入りがめんどくさい
1,500円以上の買い物で1時間無料というのもやや不満だ。
郊外複合店なら無料なのに。
街並みが改修されたとしてもバリアフリー化が進んでいるとは言い切れず
ベビーカーを押すママは段差のある横断歩道でひと苦労したり
エレベーターでしか階上への移動ができないとなると
街に疎遠になるのも無理ないかもしれない。

痛っ! なに?

催事場であれこれ眺めていたら左足を蹴られたように衝撃が走った。
『ような』ではなく、たしかに蹴られた。
目をやると左足のストッキングに靴跡がついている。
犯人は、おそらくすぐ脇にいた不満そうな顔の3〜4歳の男の子で
ママが知り合いと長話に夢中になっているようで
つまらなそうなその子は、固く繋がれた手から逃げることもできず
手当たりしだいに反逆を試みたところに私がもらい事故したようだ。
さすがに小さな子を叱る気にもならず
親御さんに注意を促すこともせずその場を離れた。
改めて左脚についた足跡を見て
それ以上店内を動き回る気がすっかり萎えてしまい帰ることにした。


そうすることにしたものの
正直、このデパートの駐車場を出るのは入るとき以上に面倒だ。
建物の構造上、強度を保つため
地下の駐車場の階の天井は思いのほか低く
エレベーターも地上階止まりで地下へは行けない。
その不便を解消するため、駐車場への出入りには
専用のケーブルカーが設けられている。
いやケーブルカーというより遊園地の遊具そのものだw

ワニ型の乗り物を3台連結した作りでその背にまたがり
トンネルへズリズリ入っていく様は遊園地のアトラクション遊具だ。
子ども連れのファミリーには楽しいかもしれないけれど
一般客には、かなり照れくさい。
ワクワクすれども駐車場へ降りるだけで
それ以上、面白みがあるわけでもなく
この配慮が、返って客足が遠のく原因なのかとも思う。

『皆様、ワニくんの背中のハンドルにしっかりおつかまりくださいませ。出発いたします』

はぁ…
恥ずかしさに臨死体験を足したような気分…
でも1人じゃなきゃ楽しめたかもしれないなw

カコン カコン と段のある動きで
ワニはゆっくりと暗闇へ入る
楽しむ間もなく ワニは駐車場へ到着。
後ろのワニに乗った子は、暗がりが怖かったのか
真上を向いてワンワン泣いていた。

煮え切らない気分で帰るのもなんなので
街の外へドライブがてら写真を撮りにいこうかと思う。
でもその前に最大の難儀。
地下2階から地上へは一直線の長いスロープ。
普通の坂道というよりも結構きつめの峠道というくらいの傾斜がある。
その真ん中辺りに傾斜のゆるいところがあって料金所になっていた。
2時間と少しの間いたけれど何も買わずに出るので
駐車するために来たようなものだ。
最初の30分は無料。
以降1時間毎に¥200。¥400はかかる。
まぁ今回は仕方ない…

前の車に準じて通路を進んで驚いた!
例の地上へつながるスロープが砂利敷になっているじゃないか!
脇に急場のような手書きの張り紙あり
『改装中 たいへんご迷惑をおかけしております』

普通でさえ勢いをつけないと料金所まで達しないのに砂利敷は辛い。
前の4輪駆動車は機動力にものいわせてタイヤを空転させつつ
小石を跳ね飛ばしながらグイグイ登っていく。
小石が私の車の前面にバチバチ当たってきた。
不愉快なので後に続かず、その車が行き過ぎるまで下で待っていた。

そして先の車と同じように不安な感触を感じながら料金所へ上がりきる。
『ありがとうございまーす 駐車券をどうぞ!』
チケットを差し出すと係員がガチャガチャと端末機を操作している。

『お客様! 口座登録されてませんよ』
「へっ? なにそれ? 手続きはしてないですけど?」
『そうですか。じゃ現金ですね』
なんだ? 月極じゃあるまいし、今どきは普通の駐車も口座引き落としになったの?せめてプリカにしなさいよ。

『はーい!¥600のお返しです。ありがとうごっざいましたーっ』
解せない気がしながらも出口めざしてアクセルを踏む。

ガリガリガリ…
うわっ! タイヤが空転して全然上がっていかない。
車体を斜めにぶれたりしながら少しづつ登ってはいたけれど
地上に達するまでは、えらく時間がかかりそう。
一度止まると絶対登れない!たぶん、このままじゃムリ…
一度下まで下って勢いをつけないとダメかな…
そう思いミラーを見ると
後続車が、ほぼ私の車の真後ろまで接近していて下がることはできない。

「ちょっと寄り過ぎだよーっ これじゃ無理無理無理無理無理!」
頭の中がパニックを起こした。
「誰か助けてーっ! 助けてーッ! 助け…」


目が覚めた。 夢だった。夢でよかった…
それにしてもリアルな夢だったな…
これは本当に夢だったのでしょうか。
私はたしかに眠っていたのかもしれない。
だけど、この記憶はパラレルワールドにある
もうひとつの地球でもうひとりの私が経験したことに
私がシンクロして、向こうからの救いを求める叫びを
受信していたのかもしれません。
いや、そうに違いない!
しかし私は助けに行く手段も知らないし
その技術(すべ)も無い私は小さな人間です。

でも、小さな私の小さな一歩ですが人類にとって大きな一歩であろう。
そう思って明日からまた、たくましく生きていこうと思います


ご成長 ありがとうございました。
あまり成長すると部屋の入口で頭打ちますよw



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