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『解体新書』のごとくの、IT用語「クラスタ」

『蘭学事始』は、文化12年(1815年)、江戸時代の蘭学医・杉田玄白が、亡くなる3年前にあたる83歳の時に綴った回顧録です。

この回顧録に出てくる『ターヘル・アナトミア』と呼ばれる『解体新書』は、杉田玄白の友人の中川淳庵が、江戸の長崎屋(オランダ商館長(カピタン)の江戸での定宿)で入手したものを、杉田玄白、前野良沢、中川淳庵の三人が定期的に集まり、読んで(会読)訳したものです。

会読を始めた当時、杉田玄白39歳、前野良沢48歳、中川淳庵33歳。
忠臣蔵から70年後の明和8年(1771年)のことです。
(因みに、杉田玄白の蘭学仲間であった平賀源内は4歳上)

この『蘭学事始』の講談社学術文庫の現代語訳を著された片桐一男先生は、青山学院大学の名誉教授で、大学を退任されたあと青山で江戸時代の古文書のサロンをされていたことがありました。

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私もそのサロンのお仲間に入れていただいて、長崎の出島にやってきたオランダ商館長のカピタンや、日本側の通訳として活躍した阿蘭陀通詞のこと。毎春に通算166回行われたカピタンの江戸参府のことや、途中宿泊した東海道の本陣の大福帳のこと。そして、長崎や江戸での蘭学のことなど、片桐先生が水書板に筆で書かれる麗しい文字とともに、お話を聞くのがとてもとても楽しかったのです。

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阿蘭陀人を一目見ようと江戸っ子が大勢集まって
江戸の阿蘭陀宿の長崎屋(JR総武本線の新日本橋駅のところにあった)

で、この『蘭学事始』には、オランダ語で書かれた「人体のこと」を読みはじめたときの状況が書かれていて、その感じが、IT技術関連の文章を前にした時の感じととても似てるんです。そういっては、杉田玄白翁に大変申し訳ないというか失礼なのですが、、だって、こちらの文章は一応日本語なので。。

例えば、ITで言う「クラスター」の意味がいまひとつ掴めなくて、Googleで検索したら、(ニュースで聞かない日がない有名な言葉なのに。。)こんな風に書かれています。(あちこちからの抜粋です。)

定義的な説明では

クラスター(Cluster)は「房」「集団」「群れ」の意味。 ネットワークに接続した複数のコンピューターを連携して1つのコンピューターシステムに統合し、処理や運用を効率化するシステムのこと。

疫学におけるクラスターは、時間的および地理的の両方の観点で、近接して発生する特定の疾患または障害が異常に高い発生率である集団 。

cluster(英語)clus・ter:房(ふさ)、群れ、集団

クラスタは、端的に言うと「集まり」のことのようですが、
でも、クラスタがでてくる説明では、

Kubernetesは、Dockerホスト達をクラスタリングし、実用的なコンテナアプリの運用基盤を作れるOSSです。

「Red Hat OpenShift 4.5」での3ノードクラスターのサポート。ネットワークのエッジにある小規模な拠点で、エンタープライズKubernetesのフル機能を利用できるようになる。

クラスタメンバー同士がお互いの状態を確認しながらクラスタを構成する The Raft consensus Algorithm のようなアルゴリズムを想定して、なぜ「3」なのか?また、クラスタを構築するときに気を付けるべきポイントをまとめてみたいと思います。

Redis では、単一ノードプライマリまたはクラスター化されたトポロジでプライマリ/レプリカアーキテクチャを構築できます。

などなど。。???

この日本語?で書かれた文章を前に、まさに、蘭学事始のこんな気持ちになります。

すこしは記憶している単語があっても、文章の前後がいっこうにわからないことばかりであった。
たとえば、「眉(ウィンブラーウ)というものは、目の上に生えた毛である」とあるような一句でも、意味がぼんやりしていて、長い春の一日かかっても理解することができず、日が暮れるまで考えつめ、たがいににらみあっても、わずか一、二寸ばかりの文章でさえも、一行も理解することができないでしまうことであった。

(『蘭学事始』片桐一男(講談社学術文庫)より)

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解体新書はオランダ語ですし、辞書もない中でのことなので、さもありなん。なのですが、それでも、

「鼻は、フルヘッヘンド(verheffend)しているものである」

の「フルヘッヘンド」が「?」であってときに、
他の蘭書の小冊子に書かれていた

「木の枝を切り取れば、その跡がフルヘッヘンドをなし、また庭を掃除すれば、その塵土が集まってフルヘッヘンドする」

から推測して、

フルヘッヘンドとは、「堆(うずたかく)くなる」という意味。

と、日本語に置き換えていった話などは、「読み解く」方法の大変参考になりそうです。

そんな風に、Google検索した「クラスタ」の含まれる文章を要約すると。

・ホスト達はクラスタリングされる。
・DBはクラスタリング化される。
・クラスターは可用性が高い。
・クラスタリング技術はシステムの可用性を高める。
・クラスタリングには推奨ノード数というものがあり、その数は3つ以上が多い。
・「Red Hat OpenShift 4.5」は3ノードクラスターをサポートしている。
・クラスタメンバー同士はお互いの状態を確認しながらクラスタを構成する。
・クラスタは構築されるもの。
・何かの動作を期待して、クラスタには少なくとも3つのマスターノードが必要。
・停止したノードがクラスタに復帰することがある。
・需要に応じてクラスターを拡張するできます。

という感じなので、そこからさらに特徴を取り出すと

●クラスタは、クラスタリングされたものを指すらしい
●クラスタリングされるのには、ホストやDB(データベース)があるらしい
●クラスタはシステムの可用性*を実現するらしい
(*いつでも用いられることが可能、つまり、24時間365日止まらない)
●クラスタにはメンバーがいて互いの状態を確認しているらしい
●クラスタリングするときにノードの数があってそれは3つがいいらしい
●ノードは停止しても復帰するらしい

という特徴が取り出されてきますので、なんとなくですが、

ITでの「クラスタ」とは、コンピュータやデータベースがチームプレーで、止まらないシステムを実現させているものや、その状況を示す言葉のようです。

世界中のどこかが常に活動しているし、国内であっても24時間利用できるのが、ある意味当然になっているので、こうした技術が必要になってきたのでしょう。

クラスタとは、そうした「止まらないシステムの実現に向けたチーム」を組むために「集まった」状態をいうようです。さらにノード(node)は「結び」ですので、クラスタは、同じ機能を持った仲間が集まって手を組んで仕事する感じでしょうか。

なんとなく、ライオンなどの肉食動物が群れで狩をするのと似てるかも。


といった感じで、IBM Cloud の「言葉」の世界に分入っているところです。



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