政令指定都市めぐり【第6回】

博多駅が起点となっている九州新幹線が、全線開通して鹿児島中央駅までつながったのは、2011年3月12日のことだった。

このとき、熊本市はまだ政令指定都市ではなかった。

熊本市が政令指定都市に指定されたのは、その翌年の4月1日である。

ただ、熊本の人にとっても、東北の人にとっても、この九州新幹線の全線開通時は、お互いに複雑な心境だったはずである。

何より、私自身もその一人だったからだ。

無理もない。

九州新幹線の全線開通の前日、テレビ各局は特集を組むなどして、お祝いムードが夜まで続く予定だったはずだ。

それをいっぺんに吹き飛ばしたのが、あの東日本大震災である。

どの局も、緊急特番に切り替わり、テレビ画面に映し出されたのは、あの津波が街を呑み込む映像である。「この世にこんなことがあってよいのか」と全国民が凍りついたことだろう。

その熊本市が、まさかその5年後の4月14日と16日に、二度の大地震に見舞われることになろうとは誰が予想できただろうか。

全国の政令指定都市の中では、一番新しく指定された熊本市は、東区・西区・南区・北区・中央区という、分かりやすい4方位で5つの行政区で構成されている。

九州新幹線がまだ一部しか開通していなかった2004年は、熊本市の南側の八代市にある新八代駅から鹿児島中央駅までの区間しか乗れなかった。

博多駅から新八代駅までは、在来線特急の「リレーつばめ」で全線開通まで7年もガマンすることになった。

今では、博多駅から九州新幹線「みずほ」に乗ると、途中停車駅は福岡県南部の久留米駅だけで、わずか35分で熊本駅に到着する。

ご当地キャラクターのくまモンが、市内の至るところで見られるだけでなく、日本三名城の一つである熊本城は、今や復興のシンボル的存在である。

2年前の3月には、天守閣の復旧工事が完了したが、城全体が完全に修復されるのは2052年だという。

あと30年、生きていられるか分からないが、応援したいものである。

熊本市の東側に隣接する益城町(ましきまち)は、震度7の大被害を受けたが、「阿蘇くまもと空港」という空の玄関口があることでも有名である。

また、熊本駅と同じJR鹿児島本線の上熊本駅からB系統、熊本駅前からはA系統の熊本市電が走っている。

どちらの系統路線上にも、「新水前寺(しんすいぜんじ)駅前」という停車駅があり、この新水前寺駅は、JR豊肥(ほうひ)本線の駅であり、熊本駅から大分駅までの区間上にある。

九州新幹線で熊本駅までひとっ飛びしたあとは、のんびりと大分まで、鈍行列車の旅も楽しめるのである。






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