古典100選(32)鳴門中将物語
もし現代において、自分の上司が、「昇進を約束する代わりに妻をよこせ」と言ってきたならば、絶対に大問題になるだろう。
『鳴門中将物語』は、実在した後嵯峨天皇が、ある少将の妻をたまたま蹴鞠の会で見初めて、蔵人(くろうど)に頼んで後をつけさせてその女性の居所を突き止め、少将の中将への昇進と引き換えに、自分の元に通わせることに成功したお話である。
今ならゲス野郎と非難される事案ではあるが、当時の天皇に逆らえる貴族はいなかった。後嵯峨天皇は、鎌倉時代の1242年から1246年までの