見出し画像

「リトル・マーメイド」ディズニー映画が未だ興行的な底力を持つことに学ぶもの

このところ、少し胃もたれするような邦画を続けて観たので、何も考えずに観られるものはないかと思い、いつぶりなのか忘れたが、ディズニー映画を観ることにする。世界興行的には米国以外は今ひとつと言うニュースが流れているが、日本の二日目は若者中心にほぼ満杯の館内。とは言っても、重い邦画に比べると観客層は流石に違う。いわゆる、ディズニーに癒される層と言うのは決まってるわけで、そう言う意味では作品的に評価がないとなかなか爆発的なヒットにはならないのだろう。そして、このところのアニメ作品の実写バージョンは、その客層を少し変化させようという意味もあるのだと思う。実写と言っても、映画のほぼ半分くらいはCGありきの世界で、アニメとテイストは変わると言うだけ。まあ、現在の映像制作の最先端みたいなのがここで見られるわけで、それは私も楽しいわけだ。

しかし、題材はアンデルセンの人魚姫。私はアニメは見ていないが、主人公のアリエルの姿など、ディズニー制作でなかったら、なかなか日本では受けいれられないのではないかと思った。実際もアリエルのキャラが好きと言う人が多いようで、この映画のアリエルに違和感を感じると言うことはあるようだ。その辺は後で書く。

とにかくも、映画のストーリーのオリジナリティとエンターテインメント性が強く求められる今日の映像制作において、いまだにこの世界昔話のような題材で勝負してくる、ディズニーの厚かましさは大したものだ。まあ、ミッキーマウスの版権を強くビジネスとして使うために誇示する会社ではあるが、そんなことより、皆がよく知ってる話を大金かけて最新鋭の技術を使って新作にして、ビジネスが成立してることは奇跡であるとしか言えない。そして、見に来た人に対し裏切らないで楽しませるのが彼らのテーマなのだろう。それは、ディズニー文化の特異性だ。私は、ディズニーランドに何度も行く人たちの気分はよくわからないが、他に似たようなものがないことで彼らはこのビジネス惹かれているわけだ。そう、他にないのと、万人を飽きさせない魅力?とはいえ、あと半世紀したらそれも変わるかもしれないけどね。どこまで、似たようなネタが続くかではあるだろう。考えれば、私の幼少の時の映画といえば、ディズニーか東映動画だった。その本質は今も変わらず、そして新しいビジネスとしても成立してるのは、本当に化け物である・・・。

で、この映画の話に移ろう。巷で問題視されているのは、主人公アリエルがハリー・ベイリーという新人の黒人女優によって演じられていることだ。黒人向けに書かれた人魚姫の絵本とかはあるのだろうか?それがないなら、いわゆる初めての黒人の人魚姫と言うことであると思う。まあ、私もそれがあって観に行ったと言っても良い。それ自体は違和感がなかったが、海の中でサラサラの長髪が丘に上がるとドレッドヘアーになるのは、これも魔女のイタズラなのか知らないが、今ひとつ違和感はあった。役者としてはなかなかチャーミングでよかったが、まあ、アニメのイメージとか色々なものがあって、いろんな感想が出てくるのは作り手としてはわかっていたことだろう。個人的に彼女は、顔のパーツのばらつきなのどが、宮崎あおいっぽい感じだなと観ていた。宮崎が人魚姫やっているようなテイストと考えれば、結構わかりやすい。とはいえ、彼女は声で選ばれたところが大きいのかもしれない。その歌声は映画館全体を魅了する力があった。

まあ、話としては魔女以外は、皆良い人であり、良いカニだったり鳥だったりするし、心地よい135分と言ってよい。正攻法なハッピーストーリーをお望みの方には問題ない映画である。そして、ただ一人の悪者が大ダコとして暴れるシーンはなかなかの大迫力であった。「テンタクルズ」や「キングコング対ゴジラ」などのしょぼい大ダコとは比べ物にならない感じ。そこに打ち勝つ、アリエルとエリックの愛の力みたいなものは、これがあるからすごく大きなものに見えてきますよね。まあ、水を使ったシーンはCGならではの本物感があるのもありますけどね。そう、この映画の海底シーンを見ていると、海洋アクションももっと新しいものが作れそうな気がしてきますよね。そう言う刺激になるのがディズニー映画であることも事実でしょう。

そして、ラストは、めでたく結婚して、人魚たちが丘に上がってきて祝福するシーン。これはなかなか良いシーンでしたね。最初、人魚の男がお父さん以外出てこないなとか思ってましたら、ここには老若男女いて、なかなか楽しかった。昨今は、再度、人種差別問題というものが世界的に色々表面化していて、ここでの異人種の結婚というのはそれに対するメッセージということもあるのでしょう。そして、そこのところは、主人公が黒人であることで大きく感じられるようになっている気はしますね。多くの人にそういう意味合いを感じさせたなら、この映画は成功なのでしょう。

とにかくも、ミュージカル映画としてのサウンドトラックは見事だったし、そこに合わせた画であり、演技は、見事なプロのお仕事。海底シーンだけを見に行っても楽しいと思えるつくりでした。まあ、文句を言うような野暮なことは必要ない映画なのですよ。たまにディズニーの世界に触れるのもいいものだなと思ったおじさんでした。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?