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自分のことがわからなくなった私の心を軽やかに弾ませてくれた考え方集

noteで人気の書き手、サクちゃんこと桜林直子さんの初の著書『世界は夢組と叶え組でできている』がもうすぐ(3月19日に!)発売となる。

やりたいことがない人は、どうしたらいいの? そもそもやりたいことって、なに? そんな問いを持って、サクちゃんが2年間考え続けたことが、なんとも気負わない軽やかな筆致で書かれたエッセイ集。

昨日、一足先に、刷り上がった書籍を手に取って、にんまり嬉しい気持ちに満たされた。上路ナオコさんが描いてくれたピンクの芝犬をぎゅーっと抱きしめたくなるような衝動に駆られて。この本、背表紙にもカバーを外した表紙にも、本文にもいたるところに芝犬がいて、本当にかわいくていとおしいんですよ。芥陽子さんのデザイン、最高。改めて、この本に編集者のひとりとして関われたことをとても幸せなことだと思う。

振り返れば1年以上前、ダイヤモンド社の横田さんに「サクちゃんの本の編集を一緒にしませんか?」と声をかけてもらった。サクちゃんの考え方や言葉のセンスが好きでnoteをよく読んでいたし、インタビューもさせてもらってその人柄にも惹かれていたので、二つ返事でやらせてもらうことにした。

当時、自分の直感的な「やりたい」や「好き」に素直に反応できた自分に拍手したい。

というのもちょうどその頃、私はなんだかモヤモヤ霧の中にいた。娘が生まれて生後7ヶ月でフリーランスのライター・編集者として仕事復帰して数ヶ月。具体的な深刻な悩みがあるわけではないのだけれど、心に靄がかかっていて、アクセルを踏み切れないもどかしさがあった。

子どもが生まれる前、私は割と自由に、自分の意思で、仕事でもプライベートでもやりたいことをやってきたほうだと思う。1日は24時間だけれど、そのほとんどを自分のために使えたし、何かしたい!と思った瞬間に衝動的に行動することだってできた。

圧倒的にいとおしい娘という存在ができて、夫というまったく違うの人間と家族を築いていくなかで、大切にしたい人が増えたぶん、自分の意思だけで決められないことも増えた。実家が遠い核家族での慣れない子育てに手一杯だったし、常に自分よりも娘を優先することが当たり前になっていた。

娘を保育園に預けて働くのだから、自分の好きな人たちとやりたい仕事をしたいと思いながらも、時間やお金の制約が頭をよぎって、会いたい人に会うことをあきらめ、やりたいと思う気持ちに蓋をしてしまうこともあった。もちろん、娘と過ごすことは私のやりたいことでもあるのだけれど、やらなきゃいけないこともたくさんあって、物理的にも精神的にもとにかく余裕がなかったのだ。

仕事だけでなく、日々の暮らしの中で、些細なことでも、あきらめ蓋をすることが重なっていくうちに、自分で自分のことがよくわからなくなっていた。そしてその混乱は夫にぶつけられることとなった。なんで私ばかりが我慢をしなくちゃいけないの?と(溜め込まなくてよかったと思うけれど)。

たぶん当時の私は、仕事も子育ても自分の好きなことも全部「100」でやろうとして、満たないことに焦っていたし、できないことに戸惑ってもいた。

そんな最中にゆるやかに始まったサクちゃんの本づくり。サクちゃんとの初めての打ち合わせは、神保町さぼうるで、ただひたすらにおしゃべりをした。話しているうちに自然と、私自身も心の靄を吐露していて、そこに対してサクちゃんが答えではなく「問い」をくれて、あれこれ考えを巡らせていた。気づけばあっという間に3時間。保育園のお迎え時間に気づいて、自転車を漕いでいた帰り道、少しだけ霧が晴れていくのを感じて、私はちょっとニヤついていたと思う。

そこから約1年、サクちゃんと本づくりの打ち合わせと称して、たくさんおしゃべりをした。特別テーマを決めるわけでもなく、目的もなく(一応あるのだけれど)、一見意味を持たない雑談をするなかで、きらりと光る言葉や発見があって、私はいつも弾むような気持ちで帰路についた(やっぱりサクちゃんは雑談のプロだと思う)。

そして後日、サクちゃんが話したことを軸にnoteを書いてくれた(ちなみにサクちゃんはこの本の原稿をすべてnoteで書いた!)。

たとえば、あれもこれも全部100%でやろうとして「やりたいこと」がよくわからなくなっていた私に、サクちゃんは、やりたいことを「時間を何でつかうか」で考えるという思考の型をくれた。当時、興奮のあまり書きなぐったnoteはこちら。

サクちゃんと話して、note(原稿)を読んだあとは決まって、自分の頭の中で考えが巡って、ノートにたくさん書き出した。校了を迎える頃には、無印のノートが2冊目に突入するほどに。なんでも書き出して考え続けることもサクちゃんが教えてくれたことだ。

サクちゃんはユーモアとやさしさを交えて、ほんとのことを言う。しかも押し付けるようなことはなく、こんな考え方もあるよ、という感じで、なんともいい距離感で突き放してくれる。だからこそ、言葉がすっと心に入ってきて、ああ、そういうことだったのか!と自分のなかで霧がかっていた気持ちが輪郭を表していく。

そうやって自分の気持ちに気づいていくうちに、気づけば私の中にあった、お腹に重りがあるような感覚はなくなって、とても軽やかな気持ちになっていた。前よりも、自分のこと、大切にしたいことがわかって、人と比べて落ち込むようなことも減った。自分で自分を喜ばせることも少し上手になったと思う。むりも背伸びもせず、気負わず焦らず自分のペースで、どんな些細なことでも今、自分にできることややりたいことを少しずつコツコツやっていこうと思っている。

こうして振り返ると、私がこの本のためにしたことと言えば、サクちゃんと雑談をしたことくらいかもしれない(敏腕編集者の横田さんも伴走してくれていたし。書籍編集は5年ぶり!だったけれど、横田さんがいてくれる安心感が常にあったし、視点が違うからこそ発見や学びもあった)。そしてそれはとても楽しく贅沢な時間だった。

本が完成した今、私がサクちゃんと雑談する機会は減ってしまう(正直、さみしい)けれど、この本が手元にあれば大丈夫。また自分がわからなくなったときや立ち止まったときには、いつでも、何度でも、この本を開こうと思う。

まあ正直、今でも自分で自分のことはよくわからない。だから、考え続けることを止めずにいよう。

サクちゃんの言葉を、この本を必要としていたのは、紛れもなく、私自身だった。だからこそ、自信を持って届けられる。私と同じように、この本を必要としている人に、届くといいな。届けるぞ!

さっそく、発売前日の3月18日、noteのライブ配信で出版記念イベントを行います。ゲストはカツセマサヒコさん。この本のテーマでもある「やりたいことがない人は、どうすればいいの?」をテーマにおふたりがおしゃべりします。誰でも無料で観られるので、ぜひ。



読んでくださりありがとうございます。とても嬉しいです。スキのお礼に出てくるのは、私の好きなおやつです。