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共振回路2(並列共振回路)

前回はコイルLとコンデンサCを直列につないだ直列共振回路について議論しました。今回はコイルLとコンデンサCを並列につないだ並列共振回路と呼ばれる回路について考えていきましょう。ただ、全体的に直列共振回路と一部の文言を変えただけで説明ができてしまうため、似たような文章が並んでいます。手抜きじゃないよ。

1.並列共振回路

並列共振回路はコイルLとコンデンサCを並列に接続した回路で、以下の図のような構成になります。

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回路を並列につないだ場合、電流が流れやすい経路、つまりインピーダンスが小さい経路がメインの電流経路になります(いつも渋滞している道路に平行したバイパス道路を造れば、車の流れのメインはバイパスの方になるイメージ)。
低周波極限f→0ではコイルがただの線(Z=0Ω)に見えるためコイルに電流が集中し、全体のインピーダンスは低くなります。逆に高周波極限f→∞ではコンデンサがただの線(Z=0Ω)に見えるためコンデンサに電流が集中し、やはり全体のインピーダンスは低くなります。そして、直列共振回路と同様に中間の周波数で並列共振回路は共振状態というコイル単体ともコンデンサ単体とも違う動作します。並列共振回路のインピーダンスは以下の式で記述されます。

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並列共振回路の特徴は、インピーダンスの並列共振回路がω=ω_0というコンデンサの容量CとコイルのインダクタンスLで決まる周波数のときにインピーダンスが無限大に発散すること、この周波数を境に分子の符号が変わるという特徴を持っていることがわかります。(ちなみに直列共振ではインピーダンスはゼロでした)

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共振周波数を境に分子の符号が変わることに対応して、共振周波数1kHz以下では位相が+90°とコイル的な動作を、共振周波数1kHz以上では位相が-90°とコンデンサ的な動作をしています。インピーダンスの絶対値からもこのことが読み取れ、共振回路で使っているコンデンサとコイルについて重ね書きしたものが下図になります。低周波で直列共振回路はコイルのグラフと重なり、高周波でコンデンサのグラフと重なり、その交点が共振周波数となっていることがわかります。

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以上をまとめると
・並列共振回路は共振周波数f_0=ω_0/2πを境に低周波ではコイル、高周波ではコンデンサの動作をする。
・コイルとコンデンサのインピーダンスが同じとき、共振状態と呼ばれるコイル単体ともコンデンサ単体とも違う動作をする。
・並列共振回路の共振状態では回路のインピーダンスが無限大に発散する。
という動作をすることがわかりました。

2.共振周波数上で起こっていること

共振周波数直上で何が起こっているのか、並列共振回路についても見ていきましょう。共振周波数でのコイルとコンデンサのインピーダンスは直列共振回路で言及したように、絶対値が同じで符号が逆になっていることがわかります。

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並列回路ではコイルとコンデンサにかかる電圧は同じことから、(I=V/Zの関係より)コイルにある電流i_0が流れたときに、コンデンサでは全く同じ大きさで逆方向の電流-i_0が流れ、この回路の外に流れ出る電流やこの回路の中に流れ込む電流が入り込む余地がなくなってしまいます。この状態で並列共振状態からさらにコイルにたくさん電流を流そうとしても、同じだけコンデンサに逆向きに電流が流れてしまい、共振回路への電流の出入りやはりゼロのままということになります。この結果、どんなに電圧をかけても並列共振回路の向こう側に電流が流れない状態となり、インピーダンスが無限大となります。

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また、エネルギー収支の瞬時値(電力)について考えると、コイルとコンデンサで値が逆になっており、ある時は電源からの電力がすべてコイルに吸われる代わりに全く同じ電力がコンデンサから吐き出されるという状態になっています。

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この結果、コンデンサとコイルはエネルギーをシーソーのようにやりとりするだけでその外側にエネルギーを吐き出すことをしなくなります。つまり、下の回路のように実質的に電源及びGNDから切れた状態でエネルギーのやり取りをしていることになっています。

LC並列共振回路

なお、電源の電圧を上げるとその瞬間はコイルに流れ込む瞬時の電流が増しますが、このエネルギーはコイルとコンデンサに蓄えられるエネルギーになるため、回路の右側に電流は流れません。この時、電流の増加分だけ電源から即座に共振回路に電流が流れ込みますが、それ以降電源から共振回路に流れる電流はゼロのままです。

3.並列共振回路の使い道

並列共振回路は主に
1.特定の周波数だけ阻止するバンドエリミネーションフィルタ(BEF)や同調回路
2.特定の周波数の電力をため込む
といった使い方がされます。

同調回路は直列共振回路で言及しましたが、並列共振回路でも実現できます(こっちのほうが多いかな?)。並列共振回路は特定の周波数だけ信号を通さない回路なので、これを負荷と並列につなぐことで特定の周波数だけを負荷に送ることができます(ほかの周波数は低インピーダンスの並列共振回路を通るため負荷に電流がいかない)。

並列共振_BPF

また、直列共振回路と並列共振回路を組み合わせることでバンドパスフィルタやバンドエリミネーションフィルタを作ることもできます。この辺りはフィルタ理論で言及することになるかもしれません(すごく将来な気がする)。

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