受動素子(RCL素子の基本性質)

電子回路について備忘録も兼ねてつらつらと記載していこうと思っています。最終的に目指すところは高周波回路の話や通信方式についてまで記述したいと思います。本当の最先端は仕事とぶつかるのでたぶん書けないですが。

今回はRCLといった受動素子について。受動素子というと当たり前すぎて今更感がありますが、基本ということでRCLの3素子の電圧電流特性について書きたいと思います。

0.交流信号の表現方法

まずは電圧と電流の表現方法について定義しましょう。主に交流回路と呼ばれる時間変動する信号を扱っていきます。その際、いきなり複雑な形の信号は難しいので、正弦波について深く考えていくことにしましょう。(モチベーション維持のためにネタ晴らししますが、実際は正弦波だけ考えれば事足ります。詳細はフーリエ解析のあたりで書く予定)
ある時刻tに振幅i_0[A]、周波数f[Hz]でcos関数の形をした電流i(t)がある時を考えます。

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抵抗器・コンデンサ・コイルの三種類にこの電流が流れているときの電圧v(t)がどのようになるか考えていきましょう。

1.抵抗器

抵抗器オームの法則が成り立つような回路素子のことで電圧と電流の間に次のような比例間関係を満足します。このときの比例係数Rを抵抗と呼び、単位はΩ(オーム)が使われます。

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という建前ですが、逆にこのような電圧電流特性をするものを抵抗器と呼んでいるほうが正しいかもしれません。この式がどうして出てくるのか、とかそういうところは今回は立ち入りません。抵抗器の外観はリード部品である上のイメージをお持ちの方が多いでしょうが、最近はチップ抵抗という下の図(出典:Panasonicのホームページ https://industrial.panasonic.com/jp/products/resistors/chip-resistors/small-and-high-power-chip-resistors)のような平べったい長方形状の素子が出ており、仕事で扱う電子回路はこちらが主流でしょう。とはいえ大電力を扱う電源系の電気回路やアマチュアの電子回路ではまだまだリード部品が使われていたりします。

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電流iがcosの形で流れたときの電圧の形がcosの形をしているので電流と電圧は下の図のように振幅が異なるだけで全く同じ形をしています。(赤:電流、緑:電圧)

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2.コンデンサ

コンデンサはキャパシタとも呼ばれるもので、電圧をかけるとそこに電気エネルギーをためることができる素子です。蓄積された電荷量q(t)[C]とかかっている電圧v(t)[V]の関係は比例関係にあり、その比例係数Cをキャパシタンスとか容量とか呼びます。単位はF(ファラッド)。1Fのコンデンサは途方もない大きさなのでμFやpFといった単位がよくつかわれます。ただ、数年前くらいから大容量のコンデンサとして1Fくらいの大きさのコンデンサが出てきており時代も変わったなと思った覚えがあります。

キャパシタ

上のイメージ図を見てもらえればわかると思いますが、線が切れているので直流信号は通りません。しかし時間変動する信号についてはコンデンサの両側にかかる電圧が変動するため、ここにたまる電荷が時間で変わります。このときこの電荷をため込んだり吐き出したりするために電流が流れるので交流回路では信号が通るようになります。電荷q(t)は電流i(t)の累積値と考えるため、以下の式のような電圧電流特性となります。この時t_inは信号が入力され始める時間と考えるとよいでしょう。通常、信号が入力される前はコンデンサに電荷はたまっていないことが多いのでq(t_in)=0と考えればよいでしょう。

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コンデンサにかかる電圧は電流の積分で表される結果、電流がcosの形で流れるときにsinの形の電圧が加わっていることになります。これは電流と電圧の波形がお互いに時間軸方向に横ずれしてしまっていることを示しています。(青:電流、赤:電圧)

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このようにコンデンサは抵抗器と比べて若干複雑な動作をしています。また、毎回こういった積分をするのは掛け算よりもめんどくさいので困りますね。このあたりの煩雑な部分の扱いは次回説明する予定です。
ここでは式の物理的意味を少しだけ考えてみましょう。この式の係数を見ると周波数に反比例していることがわかります。これは言い換えれば低周波信号を通さず、高周波信号を通す素子と考えればよさそうです。例えばですが信号を通すけれども直流はカットしたいときなんかにも使います。こういった簡単な使い方もよく使われます。

3.コイル

コイルはインダクタとも呼ばれるもので、電流をエネルギーとしてためることができる素子になります。これは電磁誘導の法則によるもので、電流の変化があるとそれに逆らうような起電力が発生します(レンツの法則)。この時の電圧v[V]と電流の時間微分との間の比例係数を自己誘導とかインダクタンスと呼び、Lで表します。単位はH(ヘンリー)。1Hのコイルは途方もない大きさなのでnHとかがよくつかわれます。

コイル

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コイルにかかる電圧は電流の微分で表される結果、電流がcosの形で流れるときに-sinの形の電圧が加わっていることになります。これは下図のように電流と電圧の波形がコンデンサとは逆向きに横ずれすることを示しています。(緑:電流、青:電圧)

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コイルもまたの煩雑な部分の扱いが必要になってきますが、この扱い方も次回以降に論ずることとして、まずは物理的意味を少しだけ考えてみましょう。
この式の係数を見ると信号の周波数に比例していることがわかります。これはコンデンサとは逆に高周波信号を通さず、低周波信号を通す素子と考えればよさそうです。こちらは逆に直流だけ通して高周波信号をカットするときに使われます。この機能のことをチョークなんて呼ぶこともありますね。これも便利です。

これら3つの素子「抵抗器」「コンデンサ」「コイル」が受動素子と呼ばれる基本的な回路素子になります。これ以外にも半導体と呼ばれる複雑な動作をする回路がありますが、この3つだけでもかなり多様で有用な回路を作ることができます。
次回はこれらの素子の電流ー電圧特性について考えていきたいと思います。

(noteで下付き文字や斜体の書き方がわかり次第、文中の文字のところ直します。)


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