カナちゃんごめんなさい

私は、謝らないといけない状況、人に言いにくい状況になると逃げてしまう癖がある。
特に、きちんと口に出して謝るのが苦手だ。罪悪感は人一倍感じているんだけど、フェードアウトしてしまう。フェードアウトしたくせに、謝れなかった事に後悔する。

ここ最近のある事がきっかけで、いろいろぼんやり考えてるうちに、原因に気づいたような気がする。

小学生の頃、近所にカナちゃんという同級生がいた。田舎で子供の数が少なかった事もあって、よく一緒に通学していた。
カナちゃんはスポーツが上手で、毎年開催される地区対抗のスポーツ大会をすごく楽しみにしていた。けれど、私はスポーツがそんなに得意ではなく、スポーツ大会にそこまで思い入れもない。あまりなにも考えずに、スポーツ大会の本番に備えた練習試合をさぼってしまった。

翌日別の友人から、カナちゃんが怒ってたよと聞いてとても焦った。まさか怒るなんて思わなかった。悪い事をしてしまった、謝らなければと思ってすぐに謝った。

1度謝ったぐらいでは解決しなかった。辛すぎてもうあまり覚えていない。記憶にあるのは、カナちゃんの家に謝りに行ったのに、カナちゃんのお母さんにはぐらかされて終わった事だ(本人には会えなかった)。元々カナちゃんは私に不満があって、スポーツ大会の件で爆発してしまったんだろうと、今になれば思う。

私の母親はカナちゃんとは話さなくていい。もう謝る必要もない、と言った。謝っても聞いてもらえないし、母親がそういうならいいか、と思い従った。カナちゃんとは中学まで部活が一緒だったけど、お互いに一言も話さなかった。

この事がきっかけで、私は人に言いにくい事を伝える時、謝らなければならない時に逃げてしまうようになった。臭いものには蓋をして、初めからなかった事にした。だって、勇気を出して伝えても、聞いてすらもらえなかったら辛すぎるから。

私はあの時、カナちゃんに怒られたかったし謝りたかった。自分の悪さを指摘してほしくて、反省したくて、仲直りしたかった。もうカナちゃんに嫌な思いをさせないようにしたかった。だから、カナちゃんのお母さん、カナちゃんはあの時家にいたでしょう。はぐらかさないで、耳障りの良い優しい言葉で私を帰らせないでほしかった。お母さんに怒られて、またカナちゃんと話す事を許してほしかった。

自分でもびっくりするぐらい消化不良の記憶。忘れ去ろうとしてた自分がかわいそうだし、悔しいし、なによりカナちゃん傷つけてごめんなさい、だ。もう一生会うことはないし、第一カナちゃんって仮名だからね。仮名のカナちゃん。

もう、誰かをカナちゃんにしたくない。今の自分の周りにいる人達を大事にしたい。周りにいる人はきっと私の謝罪を聞いてくれるし、悪い事をすれば怒ってくれるし、そんな私の出来損ないの面も含めて、一緒にいてくれるから。 きっと。

届かない謝罪なんて偽善かもしれない、けれど紛れもない私の真実の思い。それから、周りにいてくれる人達と一緒に、今と未来を笑って生きていく決意を込めて。

カナちゃんごめんなさい。

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