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ユキ

昔、柴犬を飼っていた。
ユキという名前で、大好きだった。
ユキも私のことが大好きだったと思う。

ユキとはたくさん散歩をした。
山にも行ったし、田んぼにも行った。
川のふちをずっと歩いたりもした。
雪が降ったときも、2人で散歩に行った。

私が実家を出て暮らしていたとき、しばらくユキに会えなかったことがある。
その頃、ユキはもう老犬になっていた。

ある日、ユキは私の夢に出てきて「もう、疲れた…」と言った。
そんな夢を見たので、実家に電話をして「ユキは元気?」と聞いたら「最近、弱ってきている」と言われた。

慌てて実家に行くと、もう元気には動けないユキがいた。
それでも、散歩に一緒に行ってくれた。
いつものコースのまだ途中のところで、動かなくなった。
もう、動けないのだな、と思った。
そして、抱っこをして帰った。
元気だったときも、動きたくないときは足を突っ張って動かなくなるときがあった。
けれど、そういうのじゃなかった。

その週末、仕事に行く前に実家に寄ってみた。
ユキは、私の顔を見て、それから息を引きとった。
私が来るのを待ってくれたのだと思う。

私はユキが大好きだった。
ユキと私はよく似ていた。
気ままなところも本当によく似ていた。

なんで、何十年も前の頃のことを思い出しているのだろうと思ったけれど、もしかしたら、今ぐらいの季節のことだったかもしれない。

ユキとの楽しい思い出は、私の宝ものだ。