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忘れられない朝日

朝が苦手なわたしが、日の出を見に行く、という行動をとったのは、後にも先にもあの朝だけ。

バリの東の海岸。

どうやって朝日を見に行こうと思い立ったのかは今では思い出せない。けれども、時間にして1時間ほどのこの一連の出来事は、なぜか今でも鮮明に心の中に残っている。

***

6時の日の出に合わせて5時半に目覚ましをかけた。

アラームの音に揺り起こされると、カーテンの隙間からすでに白みがかった空がのぞいていた。

まずい、これじゃ間に合わない、と飛び起きる。

ビーチまではこの宿から歩いて15分くらいだっただろうか。急いで支度をして、まだ人々が寝静まる宿を出る。

ビーチに向かって駆けながら、昨日街を歩いた時にいた野犬たちが脳裏に浮かぶ。どうか追いかけてきて噛まれませんように、と祈りながら、運を天にまかせて走るスピードは緩めない。

ほどなくしてビーチにたどり着いた。どうやら日の出の時間からビーチに来ているのはわたしだけではないようだ。

残念ながら空にはところどころ雲がかかっている。視界が空と海だけになる場所まで少し歩く。

水平線には雲がかかって太陽が顔を出す瞬間は見えないけれど、空の色と太陽の光の色の柔らかなグラデーションが、グレーの雲に沿って広がる。

グレーの隙間から徐々に光の帯が浮かび上がって、太陽の存在感が増し始める。

光の帯を見つめていると、太陽が雲を超えて顔を出し、水平線が輝き始める。

波打ち際の光が、何よりも眩しくて、美しくて。

ビーチでヨガをしたい、なんて欲張りに思っていたけど、この朝日だけで心が満たされて、しばらくそこにいて夜空が完全に消えてしまったあと宿に戻った。

バリで過ごす最後の朝、頑張って早起きして、野犬に怯えながら走ってよかった。

いつかまたこの景色を見ることができるのだろうか。それはわからないけれど、そう願いながら、遠い場所からこの朝日を懐かしむ。

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