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自家現像はいくらかかるのか?

以前、自家現像しようという記事を書いた。
私が始めたのはお店に出すと高い、というのがまずはあった。
実際、一回当たりのコストは下がっているはずだが、正確なところはわかっていない。
気になる人も多いだろうし、一度計算してみようと思う。

固定費

自家現像に必要な器具をそろえるための費用。
使っているものは以下。あくまで買った当時の値段。

・現像タンク:4500円
・ダークバッグ:2500円
・フィルムピッカー:1400円
・バット:110円
・ビーカー*4:440円
・温度計:1650円
・サーモスタット付きヒーター:2200円
・フィルムクリップ*2:2000円
・薬品ボトル*4:1000円
・保護ゴーグル:330円

合計:16130円

変動費

薬品など、買い続ける必要があるもの

モノクロ
・現像液(ミクロファイン):320円
・停止液(クエン酸):110円
・定着液(スーパーフジフィックス):1010円
・水洗促進剤(フジQW):70円

カラー
・現像液(オリエンタルカラーBAN-1R):12650円
・現像液スターター:750円
・漂泊液(オリエンタルカラーBAN-2R):8470円
・定着液(オリエンタルカラーBAN-3R):20900円

共通
・ドライウェル(フジドライウェル):350円

合計:43880円

こんな金額を見せてしまったら、せっかく自家現像に興味を持っている人も絶望してフィルムを辞めてしまうかもしれない。
しかしちょっと待ってほしい。私は金額を書いたが、内容量は書かなかった。カラー薬品が異様に高く見えるのは、薬品が高級なのではなく、単に大容量で売っているためなのだ。

以前はいろいろなカラー薬品が少量で売っていたらしいのだが、現在は種類がない上に少量での購入は難しい。必然的に大容量のものを買って長く使うことになる。
だから、先行投資は少しがまんしよう。たくさん撮影すれば元は取れる。

とはいえ、額が大きいのでやりたい人はモノクロだけやるのがよいと思う。実際、モノクロ自家現像の方がメリットも多い。

まず、店に出すと1000円以上かかるが、自家現像の場合は薬品代すべて合わせても1510円で揃えられ、これで複数回現像できる。

そしてお店に出せば少なくとも1週間は帰ってこないが、自家現像なら2時間もかからない。

また、モノクロは自分で現像の具合をコントロールできるという上級者向けの利点もある。フィルムと現像液や現像時間の組み合わせを試したりできるのはカラー現像にはない楽しみである。

フィルム一本当たりのコストは?

さあいよいよ単位当たりのコストを計算しよう。
まずはモノクロから。

現像液はミクロファイン。1Lで320円、一回の現像で現像タンクに650mL入れる。そしてタンクには2本のフィルムが入る。現像液は時間を空けなければ再利用できるので、液体は2回使うとして、1Lで現像可能な本数は
1L/650mL*2本/回*2回=6.2本
一本当たりのコストは
320円/6本=54円/本

同様に停止液を計算する。
クエン酸が100均に行くと70g110円で売っている。1Lに10g使うので停止液650ml作るのに6.5g必要で、これでフィルム2本分。液体は一度で捨てる。70gで停止できる本数は
70g/6.5g*2本/回*1回=22本
一本当たりのコストは
110円/22回=5円/回

定着液、水洗促進剤、ドライウェルを計算する。
定着液 スーパーフジフィックス:
3L*40本/L=120本
1010円/120本=8円/本

水洗促進剤:
2L/650mL*2本=6.2本
70円/6.2本=11円/本

ドライウェル:200ccを200倍に薄めて使う。
200mL*200/650mL*2本=62本
350円/62本=5円/本

合計すると、
モノクロネガ 一本当たりのコスト:83円

思ったより安かった。ほんとかなこれ。
計算おかしかったら教えてください。
モノクロ現像は1200円くらいなので1/12以下。

カラーは?

・現像液(オリエンタルカラーBAN-1R):12650円
・漂泊液(オリエンタルカラーBAN-2R):8470円
・定着液(オリエンタルカラーBAN-3R):20900円

オリエンタルカラーの配合例を見ると、まず補充液を作り、それを母液にする。


母液というのは実際に使う現像液のこと。補充液とはその現像液に継ぎ足していく液体のこと。現像ラボでは現像液を全部入れ替えることはしないで、秘伝のタレみたいに現像液を継ぎ足しているらしい。
私は毎回作るのであまり関係ない。

BAN-1Rには現像補充液が10L入っている。
現像液の母液を作るには補充液10Lにスターター500mLが必要で、合計10.5Lの現像液ができる。これも二回使うとして、
10.5L/650mL*2本/回*2回=65本
12650円/65本=195円/本

漂泊液は補充液が2L入っていて、母液1L作るのに補充液700mLに水300mLなので、漂泊母液は
2L+1L/700mL*300mL=2.86L
つくれる。
結構使いまわせるようなので仮に10回として
2.86L/650mL*2本/回*20回=88本
8470円/176本=96円/本

定着液 これは補充液と母液が同じ。10L入り。
10L/650mL*2本/回*10回=308本
20900円/308本=68円/本

上記にドライウェル代を足して
カラーネガ 一本当たりのコスト:364円
うーん。まあまあだな。キタムラでカラー現像代は900円なので1/3くらい(2023/6/22現在)。

固定費の回収

固定費を足すのを忘れていた。
しかしこのコストは現像する本数が増えるほど割合はちいさくなるので、何度現像すると浮いたお金で固定費を賄えるかで考える。

固定費:16130円

モノクロは一回当たり1112円安くなり、カラーは536円安くなる。
モノクロとカラーを1:1でやるなら10本づつやれば節約したお金が固定費を上回り、元が取れる。
カラーだけなら30回、モノクロだけなら15回。

注意点

薬品には期限があるということを忘れてはいけない。開封した薬品は空気に触れてどんどん酸化していく。
モノクロは少量から売っているので問題ないとして、カラーは相当撮らないと元を取るまえに期限が切れる。
カラーの薬品だけで4万くらいかかっているので、現像一回900円として、期限切れまでに45本は撮らないとマイナスになる。

さて、期限切れまでに私はそんなに撮れるだろうか…。


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