藤のトンネル

「目からウロコ」が落ちるインタビュー集筑豊の炭鉱・石炭王」伊藤伝右衛門の実像

「筑豊の炭鉱・石炭王」伊藤伝右衛門の実像を広める

白蓮事件で見せた男の我慢と愛情

「金の力で華族の娘と結婚した炭鉱成金」。そうした伝右衛門に対するイメージはずっと定着したままだったが、ここ最近見直される動きが出てきた。炭鉱・石炭王の実像と、白蓮事件の知られざる事実とは…

日本経済大学 講師 竹川克幸氏(飯塚市幸袋出身) 



虚像とのギャップ


―最近放映されたNHKドラマ「花子とアン」でクローズアップされた伊藤伝右衛門のキーワードは、「筑豊の炭鉱・石炭王」と「白蓮事件」ですが、意外に伝右衛門の実像が伝わっていないような気がしますね。白蓮事件も当時のマスコミは面白おかしく報じている感じがします。

竹川 二十五歳という年齢の差と、名家の子女と成り上がりの炭鉱王、育った生活環境があまりにも違いすぎたことから、世間の「お金で買った結婚」という見方も含め、好奇の目にさらされたこともあるでしょうね。白蓮の父は伯爵の柳原前光で、白蓮は大正天皇の従姉妹に当たる名家中の名家ですから、伝衛門は身分ではまったく足元にも及びません。そうした名家と縁戚関係を結べるのは、伝衛門にとっては大変名誉なことだったと思います。また、柳原家の方もメリットがあったでしょうね。白蓮の兄・義光が貴族院議員、伯爵会の会長だったこともあり、政治資金が必要だったのも事実で、この結婚は双方何らかの思惑があったのでしょうね。

―実際、二人の結婚生活はどうだったんでしょうか。

竹川 現在、観光名所になっている飯塚市幸袋の「旧伊藤伝右衛門邸」(庭園は国の名勝)を白蓮のために大改装します。白蓮専用の部屋に二階を増築したり、英国製の大理石のマントルピース、ステンドグラス、暖炉、当時は珍しい水洗トイレなどをあつらえたりして、華族出身のお嬢様であった白蓮を下にも置かないような迎え方をしています。また、白蓮のために朝食をパンに切り替えたと言われていますが、これは最近では伝衛門が胃を悪くしたことも理由にあると言われていますが、いずれにせよ伝衛門の白蓮に対する気遣いは相当なものだったようです。

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