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ペアローン、ホントに組んでも大丈夫?と思う件。

「ペアローン」をご存じだろうか?住宅ローンを夫(もしくは妻)単独で組むのではなく、夫婦共同で組むローンである。メリットとしては所得が合算されより多くの金額の住宅ローンが組めることだ。デメリットとしては、片方が亡くなった場合はその分しか残債が軽減されないことなどがある。

通常住宅ローンは(一部例外を除く)債務者が死亡すればローンはチャラになる団体信用生命保険が掛けられているのだが、ローンが半分ずつなら、チャラになる金額も半分になるという事だ。残された方は家事負担や育児負担が増えるにもかかわらず、自身のローン分を払い続けなければならず、ローンは半減したとはいえ、それまでより返済がきつくなるケースが多い。

しかしながら、最近この「ペアローン団信」問題を解決すべく、新たな保障を開始している金融機関がある。PayPay銀行やりそな銀行は加入者が死亡やがんになった場合、自身だけではなくペアローンを組んだ配偶者の分まで完済できる団信を始めている。

私が金融機関に勤めていた時代は、夫婦でローンを組むことなどほとんどなかったのだが、最近は増加傾向にある。特に20~29歳では22.2%(5組に一組)が利用しているというのだから驚きだ。全世代では8.9%の利用率なので、いかに20代での利用が多いかがわかる。

若い世代ほど共働きの確率は多いし、一人ずつの収入は低くても、二人合算すれば住宅ローン借入限度額も増えるので、若い世代に人気があるのも納得である。

住宅ローンの需要自体は大きく伸びていないので、より高い金額の住宅ローンを利用できるペアローンは金融機関側にもメリットがあるのだろう。
住宅ローンは低金利競争が行われてきたが、今後はこのペアローン団信のように、保障内容で差をつける動きが広まるとみられている。

ただ、いくら保障が良くなったとはいえ、個人的には「ペアローン」をお勧めしない。ペアローンの最大のデメリットは団信ではないからだ。

それは「離婚した場合」である。

離婚した場合(ペアローン住宅は夫婦の共有財産なので)基本的には

1,売却して財産分与する
もしくは
2,片方が住み続け住宅ローンを払い続ける
となる。

1の場合、住宅がローン残高より高い価格で売却できれば問題はないが、多くの場合売却しても残債が残る。しかし、残債が残るとしても、それを完済すれば解決なので、2の場合よりは問題が少ないと言える。

2の場合だが、出ていく方のローンを完済しない限り、両方の支払い義務は続く。相手の支払いが滞った際には、連帯保証人になっているので、自分でローン全額を支払う羽目になる。住んでもない家のお金など払いたくないのが普通だ。

また、通常離婚した場合、あまり相手とは会いたくない心情になるものだが、ローンが続いている限り、相手との関係性は消えない。加えて再婚しても新規ローンが組めないリスクもある。

さらに「もう私一人で払うから名義変更して住宅ローン組みなおすわ」と腹をくくったとしても、、もともと所得合算しなければ組めない金額でローンを組んでいるので、一人ではローン組み換えができない場合が多いのだ。

なので、ペアローンを組む際には「離婚したときどうするか」を決めておくことが大切である。団信をどうするかよりもずっとだ。

しかし、住宅ローンを組む際に「離婚するかも」と考えている人はほとんどいないだろう。ましてやペアローン組むならなおさらだ。アメリカではハリウッドスターが結婚する時に離婚時のことも決めるなんて話があるが、日本でそんなことをする人はまずいないだろう。

ちなみに現在の日本では3組に1組が離婚をすると言われているが、実はすべての世代で共通する確率ではない。19歳以下の女性で60%、20~24歳の女性で40%を超える。つまり極端な若年層の離婚率が全体を引っ張っているのである。昔でいう「できちゃった婚」今でいう「授かり婚」も離婚率は高い。
また「単身赴任中の不倫」も離婚原因には多くなっている。

という事で、もしペアローンを組む場合は「若年での結婚」「授かり婚」「単身赴任のある仕事」はより注意を要すると言える。該当してしまう方ごめんなさい。あくまで統計なので気にしすぎないでください。

まあ、最近は住宅価格も上がったし、不動産営業の人も「より性能の良い高額な家」を売ろうとしてくるので、今後もペアローンを組む世帯は増えると思う。たまにFPとしての仕事で住宅メーカーでライフプラン設計をする際に「予算より高くてもローン返済は問題ないようにしてください」なんて依頼されることも多いが、個人的にそういった要望はしれっと受け付けないようにしている。これから金利も上昇する可能性も出てきているのだから、FPとしてはリスク管理をちゃんと伝えなければいけないと思っている。こんな言い方をすると、不動産営業はみんな悪い人のように思えるかもしれないが、決してそんなことは無いので安心してください。まあ、正直不動産の山Pみたいなのはさすがにいないと思うけど。

大切なのは、今は本当に自己責任の時代だという事だ。投資にしても、住宅購入にしても、誰の意見を聞いて行ったとして、すべては自分の責任である。何に関してもしっかり勉強をしなければいけない時代なのである。

「ペアローン」を考えているご夫婦も、色々な可能性をしっかり考えて、責任を持って契約をしてほしいなと思う。

今日はここまで。

引き続き、どうぞよろしく!


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