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「改正電帳法」について ~②企業の対応状況~

こんにちは。
連休初日いかがお過ごしでしょうか。

さて、前回に続き、改正電帳法に関しての記事です。
前回は、そもそも「"改正"電帳法とは?」について解説しました。
今回は日経コンピュータ2022年12月22日号の記事を基に、事業者の法対応の状況について見ていきたいと思います。

事業者の対応状況が芳しくなく、「特例」で紙保存も容認の報道

2022年11月25日の日経新聞にて、以下のように報じられた。

経理のデジタル化が遅れる企業を対象に請求書のデータを簡易保存することを条件に紙での保存も事実上、容認する。

日経新聞(2022.11.25)

記事によれば政府・与党は、メールで受け取った請求書データをパソコン内の専用フォルダーに保存するなどの条件で、紙での保存を容認する方針という。

資金面等の理由で会計ソフトを導入するのが難しい企業などに配慮した結果のようです。(あくまで方針検討段階です。)

ちなみに、前回の記事で紹介した通り、専用のシステムや会計ソフトが無くても改正電帳法への対応は可能です。
よろしければ前回の記事をご参照ください。

企業の対応状況

前回の記事でも解説した通り、改正電帳法は2022年1月から施行されており、電子取引の電子データ保存については、移行期間として2023年12月31日までは紙での保存が認められている。
2024年1月からは電子データの保存が必要です。
つまり、完全施行まであと1年を切っております。

これに対して、日本商工会議所は、かねて改正電帳法の緩和や簡素化を求めてきました。規模の小さい企業を中心に同法に準拠したシステム整備が進んでいない状況があるからです。
(何度でも言いますが、システム整備しなくても同法へは対応できます。。。)

下図は日本商工会議所と東京商工会議所が2022年9月に調査した結果で、売上高1,000万円以下の企業の半数以上が「何もしていない」という状況です。

出所:日本商工会議所、東京商工会議所

調査結果の中身をもう少し細かく見ていきたいと思います。 

まず、規模の小さな事業者について、売上・仕入の集計業務はほどんど手書きで、四半期~1年程度実施する事業者が多い、というのは皆さんの肌感覚と同じなのではないでしょうか。
(改正電帳法とは何ら関係ない調査結果ですが)

出所:日本商工会議所、東京商工会議所
「消費税インボイス制度」と「バックオフィス業務のデジタル化」等に関する実態調査結果

次に、今回の改正で最も影響が大きい電子取引に関する調査で、小規模な事業者ほど手書きの割合が高い結果となっています。
また、請求書の作成は取引都度であったり、1か月ごとであったり、高頻度で行ってるようです。

前回の記事を読んでくださった方であればお分かりだと思いまいますが、改正電帳法では、手書きの請求書に関しては電子データの保存を要求していないので、手書きの請求署が多いということは、それだけ対応が不要なケースが多いことを示しています。

出所:日本商工会議所、東京商工会議所「消費税インボイス制度」と「バックオフィス業務のデジタル化」等に関する実態調査結果

次に受発注業務ですが、小規模な事業者でソフトウェアを使っている事業者は"稀れ”で、大多数が電話やFAX等で行っているようです。
おそらく、電話で商談を行った後、手書きの受注伝票をやり取りしている事業者がほとんどではないでしょうか。

出所:日本商工会議所、東京商工会議所「消費税インボイス制度」と「バックオフィス業務のデジタル化」等に関する実態調査結果

電子取引のデータ保存について対応状況のまとめです。

出所:日本商工会議所、東京商工会議所「消費税インボイス制度」と「バックオフィス業務のデジタル化」等に関する実態調査結果

同法を機に、システム導入を検討されている企業が一定数以上いらっしゃるのは凄いですね。
インボイス制度も始まりますし、システム化して生産性向上を狙うには良いタイミングだと思います。

我々も1社でも多くの事業者と伴走し、微力でもお力になれればと思います。
なお、繰り返しになりますがシステム導入せずとも、改正電帳法には対応可能なので前回の記事をご参照ください。(お気軽にご相談ください。)

経理デジタル化に向けて

上記の調査結果で少し気になったのが、電子取引のデータ保存の課題の中で「メリットが感じられない」と回答した割合が38.8%もいることです。

2023年10月にはインボイス制度が始まりますが、インボイスを受け取った事業者は、税額などの記載事項を会計システムに反映する必要があります。
取引先相手が「デジタルインボイス」のデータ形式を採用しているかもしれません。
※インボイス制度については別途記事を作成する予定です。

そうなれば、紙の請求書と電子データ、デジタルインボイスなど様々なデータ形式が混在するようになり、経理業務の負荷が高まってしまいます。
業務負荷を軽減し、少なからず生産性を向上させるメリットはあるかと思います。

そうは言っても、逆にすべて紙で保存する、といった事業者が増えることでデジタル化・電子化の機運をそいでしまう方向になるのも本末転倒です。

改正電帳法に対応した事業者に税制優遇措置を設けるなど、電子化を促す動機、もっと直接的な誘因・メリット、を享受できるような制度設計が今後なされることを期待しております。

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