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#9 公共工事で1点でも良い点を取るために

私は公共工事の監督員をしていたとき、数々の工事の採点をしてきました。詳しい内容は言えないこともありますが、施工業者から提出された施工計画書や工事完成書類の中で、もう少し工夫したり、1〜2枚書類を作成すれば加点できるのに、という工事が多々あったため、そういった内容を記事にしてみようと思います。

本記事の内容は、多くの施工業者は当たり前に実施しており、あらためて記事にするような内容ではないかもしれませんので、ご了承ください。

なお、本記事の通り工事書類を整理したからといって本当に加点されるかは現場や自治体、監督員ごとに異なりますのでご注意ください。



・過積載防止対策

過積載防止対策は工事現場毎に若干異なりますが、基本的には自社で様式やルールを1度作成しておけば、どの現場でも使いまわせるため、作成しておくと良いと思っています。

なお、過積載防止対策だけでなく、工事で実施する内容は全て施工計画書に記載しておく必要があります。施工計画書どおり計画的に実施することが加点評価を受ける必須条件ですので注意してください。

・全ての現場で対応できる方法(土砂、コンクリート殻など)

現場毎に土砂の密度は異なるため、移動式の自重計を用意し、荷台の嵩高まで積載可能かを土砂搬出前に確認するのが最も良いと思います。ただし、最大積載量はダンプトラック毎に異なりますので、全てのダンプトラックで事前に確認しておく必要があります。また、土砂・コンクリート殻・アスファルト殻など、搬出する建設資材毎に確認しておくのがベストです。

この結果から、ダンプトラック毎に荷台に土砂の積載可能高さをマーキングし、土砂などを積み込む重機のオペレーターやダンプトラックの運転手、現場代理人など全ての作業員が確認しやすいようにすると良いでしょう。

私が監督員であれば、搬出が伴う全ての作業で毎回自重計に乗る必要は無いと思っています。最初から最後まで同じダンプトラックを使用するのであれば、初回のみ自重計に乗り、あとは現場毎に過積載防止対策の責任者(ダンプトラックの運転手もしくは現場代理人など)を設置し、チェックリストを作成しておけば加点評価したいです。

・アスファルト、コンクリートの剥ぎ取りがある現場

アスファルトやコンクリート(無筋)の単位体積重量は一般的に2.35(t/m3)であるため、予め剥ぎ取るコンクリート及びアスファルト厚さを確認した上で積載可能面積を計算し、剥ぎ取るコンクリートやアスファルトにマーキング(区画割)をしておく方法が良いと思っています。

ただし、剥ぎ取るコンクリートやアスファルトの厚さは等厚でないことが多く、路盤材などもくっついて来ることから、そういったプラスαを想定し、余裕をみて面積を算出し、マーキングする必要があります。

例)剥ぎ取るコンクリート厚さt=10cmで、積載可能重量が5tの場合、
  計算上は以下の通りとなります。これに現場毎に余裕をみておくと
  良いでしょう。
  5(t)/2.35(t/m3)=2.1m3    2.1(m3)/0.1(m)=21(m2)

・現場の整理整頓

私が監督員をしていた時、現場の整理整頓ができている業者は事故を起こさない、と上司から度々言われ、採点項目にも同様の項目があったと記憶しています。私が現場の整理整頓として評価していた項目は以下の通りです。

また、これらは写真を撮り忘れることが多いため、監督員が段階確認として現場に訪れた際に目にしているとは思いますが、1枚でも2枚でも良いので写真を撮影しておき、工事完成時にアピールできるように(加点してもらえうように)しておきましょう。

・廃棄物用コンテナの設置

現場に廃棄物用のコンテナ(鉄箱_鉄屑、廃プラなど)を設置しているかを最初に見ていました。コンテナを設置していれば、型枠の切れっ端やボルト・鉄筋などの鉄屑が現場に散乱していてもすぐに片付けられますし、現場も少しは散らかりにくくなると思っています。特に足場付近などでは、整理・整頓されていないと重大事故に繋がる可能性があるため、不要となった資材をすぐに捨てられるようにしておくことは、安全対策の1つではないでしょうか。

・工具やボルトなどを保管する資材倉庫の設置

廃棄物用コンテナの次に、現場事務所の横などに工具やボルトなどを保管する鍵付きの資材倉庫などを設置しているかを見ていました。工事現場では、現場内にブルーシートなどで建設資材を包みバリケード等で封鎖し、持ち運べるような工具やボルトなどは車や現場事務所に保管していることが多かったように記憶しています。工具やボルトなどを現場事務所に一時保管するのも悪くはないのですが、建設資材が多くなると現場事務所内が散らかったり、移動させることで紛失に繋がるのではないかと感じています。作業効率や生産性、品質等を考えても別途資材倉庫を設け、常に整理・整頓しておくことが安全対策だけでなく品質向上にも繋がるのでないかと考えていました。

・建設資材の保管方法

工事目的物となる建設資材(鉄筋、側溝、ガードレールなど)を現場で一時保管する際は、湿度や降雨などにより品質が低下しないよう注意しなければなりません。というのも、工事目的物となる建設資材は最終的に発注者に納品する成果物となるため、少しでも品質低下を防ぐことは受注者の責務だと思っています。

本項目についても写真を撮り忘れることが多いため、1枚でも2枚でも良いので写真を撮影しておき、工事完成時にアピールできるように(加点してもらえうように)しておきましょう。

・鉄筋の保管方法

鉄筋を現場内に保管する際は、最低限地面と接触しないよう受材(枕木)を置き、その上に鉄筋などを置くのが基本です。この時、ブルーシートを上側から被せるだけでなく、受材の上にもブルーシートを敷き、上下から包み込むように養生することで、より鉄筋の腐食が防げるのではないでしょうか。私の感覚ではありますが、鉄筋搬入から2〜3日以内に使用(配筋)するのであれば、上側から被せるだけでも良いかなと感じています。

また、1ヶ月以上現場で保管したり、現場搬入からコンクリート打設まで1ヶ月以上かかる場合は、出荷時に予め錆止め材(サビラーズなど)を塗っておくことも必要かと考えていました。個人的には部分的な表面のサビ程度は許容値内かなと思っており、それまでの過程(記載したシート養生や錆止め材の塗布等)がしっかりしていれば加点評価していました。

・社内検査

私が勤めていた県では社内検査は必須ではありませんでしたが、社内検査を適切に実施していなければ、適切に実施ている場合と比べ3〜4点くらいは差があったように記憶しています。

社内検査についても施工計画書に記載しておくことが必須であり、①社内検査責任者、②社内検査員、③検査項目、④検査予定時期、⑤社内規格値、⑥社内規格値を満足しなかった際の対応方針、の①〜⑥くらいは最低限記載が必要であり、全て満足していれば社内検査として加点評価していました。

・社内検査項目

通常の公共工事では、監督員の立会確認が必須な段階確認項目が定められています。多くの施工業者は、段階確認項目通り社内検査を実施することが多いのですが、私は段階確認項目全てで社内検査をする必要は無いかなと思っていました。

勿論全ての段階確認項目で社内検査を実施してくれた方が良いのですが、地方の建設業者の多くは人数も少なく、社内検査員だけを任されている人はほぼ居ないため、特に重要な項目に絞って社内検査を行っても良いのではないかと思っています。ただし、着工前測量、目的物の出来形確認(不可視部含む)だけは必ずしなければならず、これを実施していなければ社内検査を実施したことにはならないと考えています。

・社内検査責任者の選定

地方の建設会社では、社内検査責任者は社長や工事部長としていることが多かったのですが、社長や工事部長は多忙なため、社内検査員だけが確認し、責任者の確認が抜けていることが多々ありました。社内検査責任者は必ず社長もしくは工事部長がしなければならない訳ではないため、現場代理人と同等以上の資格を持つ技術者(1級土木施工管理技士等)であれば、社内検査員ではなく社内検査責任者として選定しても良いのでは無いかと考えていました。

・社内規格値の満足

私が勤めていた県では、多くの施工業者が社内規格値を県の規格値の80%としていました。ただ、社内検査時に管理図の作成が間に合っておらず、展開図のみで現地認をしており、社内規格値内に入っているかの確認ができていない建設業者が多々いたことを覚えています。

構造物等は基本的に設計値以上であれば県の規格値を満足するケースが多いですが、社内検査は県の規格値より厳しい社内規格値の満足を目指し、会社として品質確保に取り組むものであるため、展開図通りにできているか(出来形不足がないか)を確認するだけでなく、社内規格値を満足しているかについても確認できなければ加点評価とはなりません。

・新規入場者教育

「新規入場者教育に現場の特性を反映させているか」についても加点要素だったと記憶しています。

新規入場者教育は、現場の安全対策(事故防止)や地域住民からの苦情防止対策として重要な役割を持ち、一番最初に現場で行う安全対策だと思っています。新規入場者教育で行って欲しい内容は以下の通りであり、これが出来ていれば加点評価としていました。

・工事現場への進入ルート及び土砂等の運搬ルートの確認

予め現場代理人が工事現場周辺を調査し、監督員と協議した上で工事現場への進入ルートや土砂等の運搬ルートを決め、それらのルートや工事現場内における「ヒヤリハットマップ」を作成するべきだと考えています。

例えば、現場周辺に学校があった際は、登下校時はそのルートを通らないようにしたり、子供たちが飛び出しそうな箇所には印を付け、工事に携わる作業員全員に周知・配布しておくべきです。

また、地震が発生した際の避難場所や喫煙場所、休憩場所なども記載し、工事現場内の統一ルールを設けておくことで、事故防止や地域住民からのイメージ向上にも繋がると考えています。

◎お金をかけたり特別な事をしなくても点数は取れる

私が監督員をしていた頃は、お金をかける必要は無いので、できる安全対策を確実に実施して欲しいとお願いしていました。本記事にした項目は難しい内容ではなく、多くの施工業者が当たり前にやってはいるが、施工計画書に記載していなかったり、写真を撮り忘れたりして加点評価を取り損ねる事が
多い項目をまとめたつもりです。

ただ、本項目を全て満足したからといって高得点が取れるものではありません、最低限本項目を満足した上で、出来形や品質のバラつきを50%以内に抑え、厳しい現場条件(都市部、DID区間、夜間工事、長期工事など)を無事故で終え、工期内に品質の良い目的物を完成させなければ高得点は取れません。ただ、本項目を押さえておけば、多少は点数の底上げができるのではないでしょうか。

あくまで私の経験上ですので、実際はそうでは無いかもしれません。その時は申し訳ありません。本記事を読んで頂いた現場代理人や、公務員(土木)の方が参考にして頂けると嬉しいです。

現在の本記事はここまでです。今後も本記事について、追記したい内容があれば追記していきます。

最後まで私の記事を読んで頂き、ありがとうございました。

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