見出し画像

NASAに行って今に至るまで【番外編:英語について】

NASAに行ったということは、NASAで普通に通じる英語力があったということである。今回はこの話をしようと思う。

英語が本当にできなかった

まず、僕は元々英語が全くダメだった。今この記事を読んでくれているあなたは嘘だと主張するかもしれないけれど、例えばセンター試験。英語以外は8~9割以上取れたと記憶しているが、英語は6割だった。リスニングに至っては4割である。別に英語を勉強していなかったわけではないし、むしろ苦手意識をもって勉強していたはずなのだが、どうもセンスがなかったのだろう。なので、英語が今できない人も諦めないでほしい。うまくやればセンスを磨くこともできるだろうし、そうでなければ量で押し切ることもできる (もちろん僕は後者だが)。それからよく言われることではあるが、ピンチな状況に陥ると、不思議と一気に伸びる気がする。

大学入学当初はTOEICも500点台とかだったと思うが、これは大学院入試などに必要だったので、学部3年の頃にはコンスタントに800点台後半を取れるくらいまでは勉強した。問題集を何度も繰り返し解きまくっただけだ。そしてここまではよかった。なぜならTOEICではスピーキングテストはないのだから。そしてこれが落とし穴である。TOEICの点数がある程度高いと、スピーキングテストを受けていないのに、英語を喋れると勘違いしてしまうのだ。僕はそれまで英語で会話をしたことは多分一度もなかったが(授業では少しくらいあったかもしれないが、外ではなかったと思う)、すっかり話せる気になっていた。多分周りの人からも、どうせ喋れるでしょ、と言われていたし、その気になっていたのだと思う。研究室に入ってからも英語を話す機会はなかったが、英語の読み物と書き物は日頃から行っていたし、何も不安を感じていなかった。

話すためには話す訓練が必要

時は来た。学部4年生の10月、所属研究室に海外から研究者が来られるということで、一緒に飲みに行くことになった。展開は読めていると思うが、結果は撃沈だ。それも思ったより話せなかった、というレベルではなく、文字通り全く話せなかった。特に自分から話し始めることは一切できなかった。ようやく現実を知った。翌日、幹事をされていた当時の招聘准教授M先生に、自分がいかに惨めで情けなく、悔しい思いをしたか、そして今後死ぬ気で鍛えて挽回するという決意表明を添えた、場を盛り上げられなかったことに対する謝罪文を送った(今考えればただのウザいやつかもしれない)。その先生からの返信はこうだった。「英語は道具なので、使わないと上手にならないです。ハシと一緒ですね。逆に言うと使っていると誰でもできるようになります。日本人でハシ使えない人いないでしょ。いくらデスクで勉強してもしゃべれるようにはならないと思う。」僕はこの時初めて、英語を話せるようになるためには、机の前で教材と向き合う従来の英語学習とは異なる、英語を話すための訓練をしないといけないと気がついた。NASAへの計画を実行に移すまであと数年、時間がない。

話せるようになるまでやったこと

とりあえずやれるだけやろうと思い、色々試すことにした。そして結果的に普通に話せるようになった。同じような境遇で、どうすればいいかわからないという人は、(人それぞれ合う合わないがあると思うが)参考にしてみてほしい。(1)留学生のパーティ―に行ったり、海外の研究者が大阪大学に来られる時にホストを名乗りでたり、とにかく海外の友人を増やした。そして色んなところへ案内したり、英語縛りの環境を増やした。(2)オンライン英会話 (某Q社) に登録して、2年間ほぼ毎日1~複数コマの英会話レッスンを行った。(3)修士から研究室に入ってきた英語を話せるFくんにお願いして平日はほぼ毎日30分くらい英会話に付き合ってもらった。内容は色々で、フリートークだったり、自分たちの研究やある論文についてのディスカッションだったり。特定のスピーキング系の教材を一緒にやったり。スピーキングができるようになると、ボキャビルなど一緒に色々取り組んだ。とにかく英語縛りで毎日やる。Fくんは僕の英語の救世主である(僕が英語ができなかったことは彼が証言できる)。皆も意識高い人を探して一緒にトレーニングするとよい。(4)定期的にTEDを完コピした。発表や発音が美しいと思う発表者を選び、発表者とほぼ同じ発音で完璧にシャドーイングできるようにした。(5)いくつかの教材(なるべくネイティブ発音、ネイティブスピード以上のもの)もシャドーイングメインで取り組んだ。やはり発音とスピードを完全にコピーする(ように意識する)のが大事だと思っている。(6) 研究室の進捗発表などは日本語だったけど自分(とFくん)だけ英語でやったりした。(7)積極的に国際会議に参加した。一人でも参加した。そして頑張って日本人以外に話しかけた。

以上だ。どうやって英語を話せるようになったのかという質問はこれまで何度も受けているので、一度まとめてみた次第である。1年くらいで問題なく話せるようになった気がする。TOEICなどの勉強で多少は基礎があったことも関係しているかもしれない。ただ、もちろんこの程度ではネイティブスピーカーの足元にも及ばず、未だに彼らの高速ディスカッションに割り込むことは難しく感じる。それでも1対1なら全く問題ないし、研究発表も問題ない。ここまでくれば、(英語のスピーキングという意味では)研究者として「一応は」生きていけるはずだ。実際、NASAでは特に問題はなかった。7項目あるが、まとめると、結局(ほぼ)毎日話すこととが一番重要で、その次になるべくネイティブスピーカーに似せるように意識することが大事だと思う(これは必要ないという人もいるかもしれないが、僕は必要だと思う)。これには特別な技術は要らない。最低限の知識は必要かもしれないが、大学の講義や恐らく課せられるであろうTOEICに真面目に取り組めばそれで自然と身に着く程度だと思う。一番難しいのは継続することで、言うまでもなく何度も心が折れそうになる。それを僕はNASAに行って流暢に英語を話している自分を想像して乗り切った。英語を話す先に特定の目標があるのなら、そこで上手く話せている自分を想像するのだ。そして現実に戻り、自分に喝を入れる。そして最後まで鍛え切った暁には、事実に基づく絶大な自信が得られる。どこに行っても、話せる気しかしないのだ(この感情は重要だ。自信がないと大抵上手くいかないが、自信があれば不思議と何とかなる、と僕は思う)。

番外編はここまで。人生で一番英語を勉強したのは上記の時だ。この記事を書いていて、もう一度頑張らねばという気になってきた。次回は本題へ戻り、NASAから帰り、今自分がどのように生きているかについて記す予定だ。

つづく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?