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赤字借金状態から2年で資金調達へ挑戦し本田圭佑氏からも出資!3ヵ月弱で1.1億円の資金調達を実施できた理由

こんにちは、キャリーミー代表の大澤(@ryo_oosawa)です。

キャリーミーは、シードラウンドにて8,400万円を調達し、シリーズAラウンドでは2019年4月10日のピッチから2ヵ月と20日後の7月1日に1.1億円を調達する等により合計約1.5億円調達しました。その後、2022年3月までにシリーズBラウンドとしてNVCC9号投資事業有限責任組合(無限責任組合員:日本ベンチャーキャピタル株式会社)他3社、プロパティエージェント株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:中西聖)、個人投資家を引受先とした第三者割当増資、および金融機関からの融資により約3.5億円を調達し、これまでに累計5.8億円を調達しています。

また、シリーズAではプロサッカー選手であり経営者・投資家でもある本田圭佑氏に投資頂き、アンバサダー契約も結んでいます。本田圭佑さんを起用した様々なマーケティング施策によって、自社の認知が上がってきたのは間違いありません。

シリーズAで出資・アンバサダー契約を締結いただいた本田圭佑氏

しかし、本田さんに出資頂く2年前は、キャリーミーはローンチしたばかりの事業で赤字借金状態。そこからどのように資金調達できるまで事業を成長させたのか、シリーズAの資金調達の流れやどのような意図で資金調達をしたのかを公開します。(ちなみに、アイキャッチ画像はシリーズAリリース時のもので、右から、PERSOL INNOVATION FUND合同会社石田真悟氏、CAR大澤、PERSOL INNOVATION FUND合同会社代表パートナー加藤丈幸氏、弊社CMO 毛利優子です。)

・資金調達を検討しているスタートアップ経営者やCFOなどの経営陣
・今後起業を検討している方

には参考になるのではないかと思います。また、投資の際に全て質問事項をメモしていたので、合計約20社の投資家からの質問・回答例を以下の通り共有します。これから資金調達シリーズAを控えている方の一助になれば幸いです。


キャリーミーがシリーズAの資金調達に至るまで

キャリーミーは2016年に「日本の埋没労働力を解消しよう」とローンチした。それまでは教える人と学びたい人のマッチングプラットフォーム事業「shAIR」を運営していたが、事業の収益化が課題となっていた。そこで原点に立ち返ろうと、shAIRに登録してくれていた先生(つまり教える側)などからヒアリングを実施すると、こんな声があがった。

「自分の余っているリソースで社会貢献がしたい」
「これまでのキャリアやスキルを活かしたいが、子どもがいて働ける時間に制限があるので正社員として就職は難しい」
「独立したものの、営業活動が上手く行かない」

大澤は、土屋鞄製造所で取締役兼COOを務めていた時代にプロダクトデザインやマーケティングなど、専門性の高い業務をプロに業務委託で依頼し、成功した経験があった。

ここから、「週2,3回程度の出社で稼働できるプロの個人を人手不足の企業に紹介する事業」を立ち上げようと決意したのがキャリーミーローンチのきっかけだ。

▼キャリーミーの法人サイトはこちら

しかし、shAIRで2度約束されていた資金調達が破談となり自社が倒産寸前、キャリーミーをローンチさせた当初は大澤個人からの持ち出しでスタートするなど、本当に厳しい船出だった。

厳しい中でもミニマムの費用でサイトをリリースし始めたキャリーミーは、SEOを中心に広告費ゼロでプロ人材5,000名の集客に成功。組織自体もプロ人材のみで構成し、創業2年で通期黒字化を達成した。

軌道に乗り始めたキャリーミーをさらに良いサービスにしたい。また、企業に対して認知を上げるための広告施策などを行うには単純に資金がない。であれば資金調達しようと動き出したのがシリーズAだった。

▼資金調達について、より詳しく知りたい方はこちらも参照いただきたい。
シリーズAとは?投資ラウンドごとの資金調達の特徴・企業の成長過程をシリーズA経験企業が解説
ベンチャー企業の資金調達完全ガイド! 方法と注意点を累計5.8億円の資金調達をしたキャリーミーが解説

シリーズA資金調達でキャリーミーが取った戦略とは?

スタートアップの経営者にとって、正直に言うと「資金調達は面倒だしできれば簡易的・効率的に済ませたい」と思うだろう。例えば、

  • 資料作りが大変そう

  • ヴァリエーションをどうすべきか

  • 資本政策も考えるのが大変

  • そもそも調達できる可能性があるのか、なければ無駄な手間はかけたくない…

などと、悩みの尽きない方も多いのではないか。

大澤もまさしく、同様に思っていた。そこで、なるべく無駄なことは避け、重要なことを2、3点に絞って時間を使って資金調達活動を済ませようと考え、実行した。

その際に参考にしたのはビジネスプロデューサーとして約2.5年在籍したドリームインキュベータでの経験だった。投資も一部担当していたため、投資側の気持ちや理屈はそれなりに理解しているつもりだ。

具体的には、以下の3つの要件を満たせば、投資したい、と思うだろう。

①事業ドメイン(市場)が魅力的(市場規模が大きい、かつ成長していること)
・なぜ、魅力的なのにこれまでプレーヤーがいなかったのか
・世の中のどのような変化があって、事業として成り立つ要素が出てきたのか
の2点も合わせて説明できるようにする必要がある

②その魅力的な市場の中で、今後市場の中で他社より良いポジションをとれること、差別化して勝てる、もしくは独占できること

③結果、中長期的に利益を生み出せること、収益性が高いこと

短期間で合意に至るには「投資家が最も懸念するであろう点を予想し、投資家が納得するであろうストーリー」を準備し、語れることが極めて重要だ。ここに資金調達にかける総時間のうちの7~8割の時間をかけた。

市場の中でのポジショニング、そのポジショニングの中で差別化する方法

上記3点が主に証明すべきポイントだが、いわゆるITスタートアップでは、どの説明に最も苦労するだろうか? 

恐らく、②の「市場の中でのポジショニング、そのポジショニングの中で差別化する方法、勝てる・もしくは独占できる根拠」ではないだろうか?

事業アイデアは、他の人も考えられることであり、参入障壁を築けるビジネスモデルはそうそうない。

少なくとも、大澤はこれまで5度事業を立ち上げた(うち2度は売却)が、どの事業も100%模倣可能なものであったし、投資を担当していた時も、模倣できない差別化が明確な事業は殆どなかった。

ましてや、昨今は異業種含めどこから競合が参入してくるか予想できない時代であり、その中で競争優位性を証明することは至難の業だ。

そこで、効率的な資金調達のために、2つのことを意識的に実行した。

  • 自社の事業領域(事業ドメイン、事業の範囲)の明確化、潜在・顕在化している競合他社との明確な違いを、わかりやすく説明しきること

  • 全く同じ事業領域に参入してきても、そこでは差別化が論点ではなく、市場が急成長する(から自社も成長しやすい)こと

自社の事業領域の説明で必要なことは何か

まず、1つ目の自社の事業領域の説明だが、「そんなもの当たり前だろう」と思われるかもしれない。しかし、類似サービスが多いと「どの領域に、なぜ」絞っているかの明確な説明が必要だ。

下手をすると同様のサービスを聞き飽きているかもしれない投資家は、「またあの類似サービスね・・・」と聞く気をなくしてしまう。

キャリーミーは、2016年から
・週2,3回出社してクライアントの課題を解決するハイスキルなプロ人材
・優秀な正社員をなかなか採用できない企業
を業務委託契約でご紹介しているが、世の中の働き方改革や副業解禁の流れもあって「近いが異なる」サービスが急増している。そこで「わかりやすい事業領域の定義が必要」だと感じた。

キャリーミーのプロ人材の定義

言葉にすると、以下のような具合である。(登録人材数、ご紹介企業数は2019年当時)

キャリーミーは、副業ではなく、「本業」で週2,3回「出社して」業務委託で稼働できるプロ人材4,500人を650社の企業に紹介しています。
よくあるフリーランス紹介事業や、在宅で働く女性支援でもなく、プロとして自律して働ける、企業からすると「正社員では確保できないレベルの優秀な層」のマッチングをしており、結果的にフリーランスや、子育て中のキャリアウーマン、起業家の登録があります。
こうした層のうち、「非エンジニア」であり「顧問」とも違う「30代中心の実務ができる」層で、「マーケッター中心」にマッチングさせていることが特徴です。
マーケッターの定義は、Webマーケティング各施策のプロ、広報・PR、上流のマーケティング(マーケティング戦略やブランディングなど)の3分野で、プロ人材約2000人を抱えています。
弊社が複数のマーケティングのプロ人材を活用し、「広告ゼロで」毎月200人増のペースで、合計4,500名を突破しました。
なぜマーケティングにニーズがあるかというと、昨今のマーケティング施策は、SEO、広告運用、SNS運用・・・など多様化・高度化しており、企業は1人経験者を採用できても各施策には対応しきれないことから、複数の人材を採用する必要があるからです。
そうした際に各分野でプロの力を20万円~30万円/月で活用する、いわばプロ人材を「借りて内製化する」ことが企業にとって合理的であり、価値になるからです。

こうして事業領域の絞り込みとその理由を明確にすると、副業や顧問サービスは多々あっても直接競合となる先は殆ど見当たらない。

しかし、投資家は必ず「では、今後大手企業などが参入してきたときに、どう戦うのか。どう差別化を図るのか」と質問してくるだろう。
そこを先読みして、どう話していくかが極めて重要だと思う。

事業領域における市場成長性の説明

そこで2つ目の「全く同じ事業領域に参入してきても、そこでは差別化が論点ではなく、市場が急成長するから自社も成長しやすいこと」の説明が必要だ。

大澤は「そもそも事業の成功や急成長のために、差別化が最重要な要因とならない市場であることが重要だ」と考えていた。

差別化はどの市場でも極めて重要ではないか?と思われる方は以下を読んで頂きたい。

まず、どの事業でも独占できれば理想である。が、独占できるビジネスなどは非常に今の時代困難である。一時的に独占できてもすぐに他社に追随されるからだ。

次に、独占が難しければ、複数のプレーヤーがいる中で、明確に他社が模倣できないような差別化を実現できれば良い。
が、情報の伝達が早く、海外の情報ですら簡単に手に入る時代に、模倣されない差別化などは、独占するのと同様になかなか難しい。

であれば、独占でもなく、差別化も意識しないで済むような市場を選ぶことが重要なのではないか? ということだ。

では、競合との差別化を最優先で意識しなくても良い市場はどんな市場か。

簡単にいうと、

「市場全体が急成長する」ことが確実な「ブルーオーシャン市場」であり、
②Winner Takes All(勝者総取り)にはならない市場であり、
③上記条件のもとに、スピードをもって成長市場に対応できる体制が自社にあるという根拠があれば、尚良い。
と考えていた。それぞれについて説明していく。

①「市場全体が急成長する」ことが確実な「ブルーオーシャン市場」であること

まず、ブルーオーシャン市場において、競合がいない間は実質独占もしくは寡占しやすい。しかし、ブルーオーシャンは永遠にブルーオーシャンということはあり得ず、場合によっては早期に競合が参入してくる。

その時に重要なことが、「市場全体が急成長する」ということである。

成長しない(もしくはすぐに市場が飽和する程度の小規模な)ブルーオーシャン市場だと、すぐにレッドオーシャン化して、「決められたパイの奪い合い」になる。利益を享受できるとしても、その一間限定、ということになってしまう。

一方、急成長する市場かつ一定規模以上を見込める市場であれば、巨大化するパイを複数で分け合うことになるので、競合を意識しないでも、自社プロダクトに専念することで自然と成長していける。

1970年代、80年代に多くの日本企業が同時に成長できたのは、各社が差別化を図ったからではない。人口が増え、1人あたりの所得も増えたため、殆どの市場全体が急拡大したからにほかならない。市場全体が急拡大するなかでは、差別化が論点にはならないのである。

成長市場では、複数の会社が、同時に売上も利益も成長できる。

「プロ人材市場」でいうと、日本の若手労働人口が急減し、これまで人材=正社員採用一辺倒の日本では、外部人材の活用が殆ど進んでこなかった(つまり市場拡大の余地がある)という背景があり、この市場は急成長することは間違いない。

※日本では外部人材(弊社でいうプロ人材)の活用率は2019年当時18.9%にとどまっていた。なお、2023年10月8日付日本経済新聞電子版によると、米国では労働力の4割がフリーランスであると言うから、日本はまだ遅れを取っていると言える。

ロジックだけでなく、自社でも実際に急成長ができていることが伝えられると、説得力が増す。
キャリーミーの場合は、2つのことで市場が成長することを証明した。

・1つは、自社が前年から売上640%(7倍)で急成長し、かつ年次で黒字化できていたこと。(ご参考:2019年当時は前年から約7倍、ローンチした2016年から2021年でみると、40倍の成長をしている。)
・もう1つは、自社の成長の理由が、自社に登録してくるプロ人材を積極的に活用し、プロ人材:正社員の割合を9:1(2019年6月時点)で構成し、Webマーケティング、法人営業、など至る箇所でプロ人材を半ば社員のように扱いながらも成長できたことだ。 

(転職市場にはいないレベルの)プロ人材を活用することで事業を急成長させることが有効であることを自社で証明している。

自社が成長している方法を、そのまま他社に導入しており、かつ多くの取引先が「継続して」「1社あたり複数のプロ人材」を活用頂いていることは、何より市場があることの説得力がある。

②Winner Takes All(勝者総取り)の市場では「ない」こと

最終的に1社のみが生き残る、いわゆる“Winner-Take-All”の市場ではないことも重要である。GoogleやAmazonなどは世界でもはや1社で市場を独占しようとしている巨大企業である。

こうしたWinner Take Allの市場だと「大きく勝つか、あとは負けて撤退するか」のどちらかになってしまう。その「大きく勝つ」のは大抵、1社のみである。

1社のみが生き残る市場において、「当社がその1社になります」というのは、もちろんリターンも巨大になる。しかしそこへのハードルはとてつもなく高く、かつ、それを投資家に証明することは困難極まりない。

「プロ契約」事業をカテゴリー分けをするとしたら、人材系、HR関連のサービスに属すると捉えることができる。いわゆるHRの市場は、ほぼ全ての領域で勝者総どりにはならない。

媒体であればマイナビ、リクナビ、Typeなど多くが混在する。

キャリーミーは近い将来、法人と個人が直接やりとりできるようにする「ダイレクトリクルーティング型」に移行させるつもりだ。このダイレクトリクルーティングという一つの市場でもビズリーチ、Wantedly、Green、ミイダス、など多々サービスが存在する。
更に、職業紹介(人材紹介)会社だと、なんと16,000社を超える企業が存在する。

つまり、独占とは真逆の「複数が存在し、かつ利益をそれぞれが生み出せる」市場である。

③スピードをもって成長市場に対応できる体制

そして、最後が、3つ目のスピードを持って展開できることが重要となる。
市場が急成長しており、複数の会社でパイを分け合えても、スピードが遅ければ、「美味しい部分」を獲り逃し、後塵を伍してしまうことになるからだ。

弊社がスピードを持って展開できることの理由として、第一に挙げたことは、弊社が「プロ人材採用・活用し放題」だからである。

2019年7月時点で毎月200人のプロ人材が登録し4,800人の登録者となっている(2023年現在では約13,000人)。

こうしたプロ人材を、(正社員採用であれば6ヵ月から1年など時間を要するところを)必要な時に(すぐに)、業務委託なので必要な分だけ活用でき、しかもそのプロ人材活用のノウハウも自社で保有しているので、こうしたリソースを活用してスピード展開することができるという、根拠がある。

ご参考まで、2019年時点での組織図は上記の通りである。2023年現在でも正社員:プロ人材比を1:3(10人:30人)としながらも、成長を実現できている。

以上が、早期の資金調達のために意識したポイントであるが、正確に言うと、起業や新規事業を開始する前に上記のようなポイントを意識すると、更にその後の調達、成長もしやすいはずだ。

投資家から実際にもらった質問リストと回答例・ポイントを共有

実際には本記事以外のポイント以外にも、投資家からの様々な質問があった。
投資の際に全て質問事項をメモしていたので、合計約20社の投資家からの質問・回答例を共有したいと思う。

シリーズAでコンタクトを取った合計約20社の投資家からの質問(と返し方)と回答ポイント(弊社事例つき)
※弊社への投資を見送った企業の、その見送った理由も記載している(A4 9ページ程度)

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最後に、経営者は事業そのものに集中するために、短期間での資金調達を実行したいはずだが、そのためには、短期で投資の決定をできる投資家にコンタクトをとることが必要です。そうした意味では、ピッチで登壇して早期にパーソルグループさんと出会えたことはラッキーだったと感じています。

改めて、パーソルグループさん、他投資家の皆様、また、投資家との出会いを創ってくれたMonthly Pitch運営事務局(株式会社サイバーエージェント・キャピタル)さんに感謝いたします。

また、記事に少しでも学びがあったり、共感したら、お気軽にXやFBなどでの拡散をお願い致します。
大澤のXでもつながっていただけたら嬉しいです。
継続して、少しでもビジネス面でのリアルな学びをお届けできたらと思っています。自分自身が、「事前にこういう情報を知っていたら助かったのに」という視点でも執筆していきますのでよろしくお願いします。

資金調達も奏功して事業が急拡大しているので、正社員も、プロ人材も、絶賛募集中です!
弊社のビジョン「あなたの人生に挑戦を」に共感し、いろんなことに前向きに挑戦できるような方とお会いしたいと思っています。学歴・年齢等問いません。ご連絡お待ちしています!

キャリーミーの法人サイトはこちらです。事業課題をその分野のプロに依頼し解決できます。ご相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

個人(プロ人材)のご登録は以下より承っております。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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