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NASA 軌道計画ツールを使って、自分だけの宇宙の探査計画を立てよう

宇宙機の軌道計画とは、宇宙機が宇宙空間のどの場所を、いつ、どうやって移動するかの計画を立てることです。ご存知の通り、太陽系には地球のほかに、月や、金星、火星などの惑星、小惑星など、様々な天体が存在しており、衛星の目的に応じて、必要な天体にに衛星を移動させることになります。最近だと、「はやぶさ2」が小惑星「リュウグウ」に着陸し、地球に帰還したが、あれはまさに綿密な軌道計画によって、はるか遠くの的を射抜くような業でした。

「はやぶさ2」のようなミッションで、軌道計画は綿密である必要があるのは、単に狙う的が地球から遠いからという理由だけではありません。前述の通り宇宙空間には様々な天体が存在しており、それぞれが重力を発生させ、衛星に引力を与えます。さらに、天体は太陽や惑星の周りをまわっており、位置が刻一刻と時間変化します。そのため、わずかでも時間、場所がずれると、まったく違う方向に衛星が引き寄せられて、目的とする場所にたどり着けなくなってしまいます。

前置きは長くなったが、このように、様々な天体の時間や位置、重力を考慮できるシミュレーションを素人が一から作るのは大変です。また、衛星の位置は三次元的に(時間も合わせると4次元的に)移動するため、わかりやすいグラフィックがないと、出てきたシミュレーション結果を解釈することは難しくなります。
このような問題を解決するツールとして、NASAが無料で公開しているGeneral Mission Analysis Tool (GMAT)というツールがあるのでそれを紹介します。

GMATはこちらのサイトでダウンロードできます。
https://gmat.atlassian.net/wiki/spaces/GW/overview?mode=global

年度ごとにupdateしており、これから使う人は最新年度のツールをダウンロードするといいと思います。Windowsしか試してませんがzipフォルダを解凍してbinフォルダのexeファイルを起動すればツールを使うことができます。

起動するとこんな感じです。

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すでに三次元で宇宙機の位置を可視化するモデルが作られており、再生ボタンを押すだけですぐに衛星の位置の時間変化を見ることができます。
モデルはマウスでクリック、ドラッグをすることで、位置を変えたり、拡大したりできます。直観的でわかりやすいですよね。

また、衛星の初期位置を変えたい場合は、Spacecraftのタブに定義されている衛星のアイコンをダブルクリックすることで、初期位置や時刻を変えることができます。

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このように衛星の軌道を3Dモデルで可視化してくれるだけでも、理解がわかりやすくなりよいのですが、GMATではさらに、衛星の推進系を用いた軌道変更計画や、その最適化を実行することができます。

衛星は遠くに行こうとすればするほど、多くの推進剤を必要としますが、多くの推移剤を積むと重量が大きくなってしまい、コストの増大につながります。そこで、天体の重力を考慮しつつ、燃料が少なくても目的の場所に行ける軌道を見つけることが重要になります。
そのようなプロセスを軌道の最適化と呼び、GMATで簡単に行うことができます。下の図は、試しに人工衛星を地球から月へ移動させ、月の周りを周回させるように最適化したものです。

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詳しいやり方は、またの機会に説明したいと思います。

それでは。

参考: Hughes, Steven P. "General Mission Analysis Tool (GMAT)." International Conference on Astrodynamics Tools and Techniques (ICATT) Darmstadt. 2016.



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