見出し画像

私がゾウを好きなわけ

じゃじゃ麺ちーたんたんリベンジで盛岡を再訪した。(前回訪問時の記事はこちら

前回とは違うお店に入り、今回は無事、最後のちーたんたん(あらかた麺を食べ終わった皿に溶き卵とゆで汁を入れてスープにする)まで完食した。たいへん満足したが、個人的にリピートはしなくていい気がした。それにしても周囲のジモティの食べるスピードには驚く。後から入店した女性もあっという間に麺を平らげ、私より先にちーたんたんステージへ。きっとほとんど噛まずに飲み込んでいるに違いない。それほど麺が柔らかく、消化も良いということだろう。ごちそうさまでした。

それはともかく、盛岡再訪の本当の目的は、岩手県立美術館で開催中の「堀内誠一 絵の世界」展を見るためだった。

私の世代なら、1970〜80年代前半(昭和45~50年代後半)に創刊したアンアン、ポパイ、ブルータス、オリーブなど、当時一世を風靡したといっていい雑誌たちを覚えていると思う。それらの題字デザインを含むアートディレクションをしていた人と、私が子どもの頃夢中になって読んだ絵本の絵を描いた人が同一人物だったとは、恥ずかしながらこの展覧会のチラシを見るまで知らなかった。

私が小学校に上がる前だったと思うが、親はどういう了見か私を週一度近所の英語教室に通わせていた。といってもその歳だから大したことはやらない。絵本を見ながらそのお話が録音されたテープを聞くのが主であったが、私はそれにどハマりした。自宅にもそれら絵本とお話テープと再生機(ファクス機くらいの大きさがあって重かった)を買ってもらって、教室がない日も毎日絵本を開いてテープを聞いた。文字通りテープが擦り切れるまで聞いた。そうやって覚えたお話のいくつかのフレーズは今でもそらんじることができる。

もちろん絵本の文字もテープ音声も英語だったので、私はこれらの絵本はみんな外国製だと思い込んでいた。そうではなく日本語原作からの翻訳だったと知ったのは、かなり後になってからのことだ。

Stop, Taro! は、たろうのおでかけ。A Surprise Visitorは、ぐりとぐらのおきゃくさま。The Sky Blue Seedは、そらいろのたね。It's a Funny Funny Dayは、だるまちゃんとかみなりちゃん。Spring Breezes Huff and Puff!は、はるかぜとぷう。そしていちばんのお気に入りだったThe Kindergarten Elephantは、ぐるんぱのようちえん。

これらの絵本はどうしても捨てられず、実は半世紀以上たった今も大事にとってある。それなのに、表紙にローマ字で書かれた作者名は気に留めたことがなかった。大好きだったGurumpaやTaroの絵を描いた人の名前を知らなかったことに、先日、美術館のチラシに印刷されたぐるんぱの絵を見て初めて気づいたのである。

なんてことだ。

と思って出かけた展覧会。平日のせいか混雑もなく、たっぷり心ゆくまで楽しめた。懐かしさだけじゃなく、アーティスト堀内氏のすべての作品を堪能した。

私の父の一つ歳上だった氏は1987(昭和62)年、54歳の若さで急逝したそうだ。日本と日本人が、ある意味いちばん元気かつナイーブだった時代に最先端の広告界・出版界で活躍し、かつ絵本作家・画家としても多くの作品を残した堀内氏。もしいま生きていたらどんな絵を描くのだろう。

ぐるんぱのようちえん初版は1965(昭和40)年、私が1歳のときだったと、展示で知った。ほんとに、昭和のあの頃ってきっと日本中が元気でナイーブだったのだろうな。いまの経済成長が永遠に続き、明日は今日よりもっと良くなると、おそらく大方の一般人が信じていたと思う。

Gurumpa、大好きだった。でも、どれだけ懐かしんでもその時代には戻れない。私も、社会も。

もちろん、戻ったほうがいいとか戻るべきだとも思っていない。

というのは建前で、やっぱり「あの頃に帰りたい」心理を表わしているのだよね、私のゾウさんグッズコレクションは(笑)。

バナもぐるんぱ似。そして岩手といえば宮沢賢治。この絵本の絵もすばらしい。

トップの画像は岩手県立美術館へ向かう橋の上から撮影。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?