放送大学 グローバル経済史('18) メモ12 エネルギー

現在も未解決な最重要課題にして歴史的にも影響力が大きかった割に忘れがちなエネルギー問題。

シラバス

放送大学 授業科目案内 グローバル経済史('18)
https://www.ouj.ac.jp/hp/kamoku/H30/kyouyou/C/syakai/1639609.html
グローバル経済史(’18)

12 エネルギー

産業革命による主要な変化には以下の3つ: 機械化(自動織機など)、動力源(蒸気機関)、化石燃料の利用開始(石炭)。

石炭は蒸気機関のエネルギーとしてだけでなく製鉄にも大量に使われるほかガスを取り出して使うこともできる。それまでの動力は家畜や水力などであり、エネルギー源は木材を利用した。蒸気機関はニューコメンやワットらによって発明、改良された大型の装置でこれまでとは大量のエネルギーを利用する。しかし石炭には以下のデメリットもある: エネルギー効率が石油より悪い、パイプで運べず輸送が不便、CO2増加・酸性雨・大気汚染の原因となる、ガス爆発等の炭鉱事故。このことから20世紀初頭にはエネルギーの主役を石油に明け渡した。一方で現在でも価格の安さから石炭はある程度使用が続けられている。資料:軍艦島(端島)の炭鉱で盛んに採掘され、最盛期には5000人が小さい島で暮らしていた。

ポメランツ「大分岐論」によれば、1700年までの段階で中国とイギリスの経済状況は似たような発展を遂げ土地制約に苦しんでいたが、石炭へのアクセスの近さが産業革命を決定づけることとなった。

石油は19世紀後半にアメリカで油田開発が始まり、20世紀初頭にはスマトラ島、ボルネオ島、ベネズエラ、20世紀後半には中東や北海で油田が開発された。石油の産地は大きく偏っている点が石炭と異なる。石油開発販売はスケールメリットが効く。流通面では国際石油資本(メジャー)が18世紀末ごろから寡占化し、ロックフェラーが設立したスタンダード石油(1870)はアメリカの流通量の8割を占めたため、反トラスト法により1911年に34社に分割された。その後もこれらの分割で生まれたエクソンモービルなどの会社が寡占を続けた。ヨーロッパでロイヤルダッチ石油(1890, オランダ)、シェル石油(1897, イギリス)が設立され国際石油資本の仲間入りをする。自動車、航空機の発明と船の石油への転換により使用が伸びたほか、化学繊維やプラスチックの原料にもなる。

20世紀の長い間、石油価格は低く安定していたが1973年第4次中東戦争の際、軍事的にはイスラエルが勝利したものの、OPEC加盟のペルシア湾岸の産油国が70%値上げ、アラブ石油輸出国機構がイスラエルの同盟国への禁輸措置を取った(第1次石油ショック)。これにより国際石油資本に代わりOPECが価格決定の影響力を持った。1979年のイラン革命で親米的なパフレヴィー王朝が打倒された際にも価格が高騰した(第2次石油ショック)。石油価格は乱高下しながら現在まで高い水準が続いている。

原子力は第2次大戦後1950年代に実用化され欧米の発電量の2-3割を占める。特にフランスでは依存度が高い。石油ショックを経て、石炭、石油に代わる安価で安定、かつCO2を排出しないクリーンなエネルギーとして期待されるが、これまでにスリーマイル島、チェルノブイリ、福島第1で大規模事故が発生しており、それ以外にも小規模な事故が発生しているなど、人類が原子力を完全にコントロールしているとは言い難い。

グローバル化と産業革命は高度大衆消費社会という豊かさをもたらす一方で大量のエネルギーを必要とし、資源問題および環境問題も発生してきた。石油代替エネルギーの開発は石油ショック以降進められており、世界規模で見ると石炭、石油、天然ガスが主要エネルギー源であり、原子力の割合は現在でも少なく、割合は少ないが風力や太陽光などの自然エネルギーが増加している。天然ガス(メタン)はエネルギー当たりの炭素量が少なく相対的にCO2排出の負荷が小さいうえ1970年代に液化して海上輸送することが可能になったため近年主力となっている。

参考文献、日本語訳あり
ポメランツ「大分岐論」
J.C. アレン「世界史のなかの産業革命」

感想

ポメランツ「大分岐論」は読まなあかんですな。。。なぜ産業革命はイギリスだったのか、なぜ我々は化石燃料を使っているのか、と考えたときにイギリスの科学技術が進んでいたからとか考えがちですが(もちろんそれもある)、炭鉱がたまたま近くにあったから、という指摘。天然資源の産地が地理的に偏っているということが歴史に影響を与えているということですね。最近だとシェールオイル革命やリチウム、レアアースなんかでしょうか。そう考えるとUSはどれだけラッキーなんだという感じがします。

当面は天然資源の分布に左右されるのでしょうが、長期的にはCO2規制とSGD投資とやらに影響された再生可能エネルギーの普及は国の経済バランスに影響しそうに思います。

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