放送大学 グローバル経済史('18) メモ2.アジアとヨーロッパ-経済発展の国際比較-

昔の経済の国際比較のやり方について。昔からヨーロッパ人の平均身長が高かったわけではないらしい。データが足りない中での補正の工夫など。

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放送大学 授業科目案内 グローバル経済史('18)
https://www.ouj.ac.jp/hp/kamoku/H30/kyouyou/C/syakai/1639609.html
グローバル経済史(’18)

2 アジアとヨーロッパ-経済発展の国際比較-

ヨーロッパおよびアジア諸国を視察した岩倉使節団による報告「大使全書」(国立図書館サイトで公開)はアジアの隷属化の現状を報告し使節団に参加した日本の政治及び高等教育のリーダー(津田梅子、新島襄ら)がいわゆる脱亜入欧論に至ったことは想像できる。

ポメランツ「大分岐論」において、18世紀までのロンドン、アムステルダム、日本の畿内と長江下流域の経済を比較し、両者ともプロト工業化の発展と資源不足という共通の状態にあることを示した。その後、西欧だけが急速な経済発展をした理由について、2つの地理的偶然(1)炭鉱が近く化石燃料への転換が進んだ(2)新大陸にアクセスでき大市場があった(中国では周辺地域でも代替生産が可能なため競合するがアメリカは奴隷制のため生産力が低かった)、を指摘した。これはノース&トマスやジョーンズらの西欧の社会制度の先進性に理由を求める学説と異なり注目された。

継続的なデータの比較として、例えば平均身長はヨーロッパ人が高いように思われるが、この傾向は19世紀後半以降であり、国の平均身長は豊かさに強い相関がある。同様に平均寿命も18世紀後半から伸び始めている。経済指標としては一人当たりGDPと実質賃金があるが、物価などの調整が難しい。

斎藤先生(一橋大)の話:GDPは過去の推計が十分成熟しておらず主には実質賃金が用いられる。オックスフォードやケンブリッジでは中世13世紀から帳簿を付けており賃金を推計できる。地域差・時代差によらない実質賃金の指標(ボブ・アレン):ウェルフェア倍率(生存水準倍率)=1年あたりの名目賃金を扶養家族で補正した一人当たり名目賃金 / バスケット(=1年分の健康に必要なカロリーとタンパク質を得る食事の金額)。これによると18-19世紀ロンドン、アムステルダムのウェルフェア水準は1.5-3倍で裕福なのに対し京都、北京、ミラノ、銚子は1倍未満(カツカツ)、オックスフォードが1倍程度となっており、西欧vsアジアという単純な構図ではなく、ヨーロッパ内部でも南北、農村・大都市の格差を考慮する必要がある。比較史は思い込みを認識させてくれる良い手法だが比較指標を決めるには理論的な思考が必要。

感想

岩倉使節団の話、単にヨーロッパをまねただけでなく、アジアの経済的な搾取されっぷりを見てしまったというのは興味深い指摘。

この講義の特徴は給与水準とか貿易額とかの100年スケールでのグラフや統計資料が豊富に出てくるところ。こういうの、個人や企業で保管されてた帳簿などから地道に再現するんでしょうね。

第1回から引き続き、歴史学における西欧中心主義からの脱却ということで、似たような経済発展が世界各地で起きることを指摘していますが、新大陸=市場という視点は確かに抜けがちかも。

noteエディターに箇条書きってないんだっけ・・・

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