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特急能登かがり火号で金沢から和倉温泉へ


北陸新幹線金沢開業後の七尾線特急

2014年3月15日ダイヤ改正時点で、金沢駅から七尾線へ直通する特急列車は、大阪駅発着の「サンダーバード」が4往復、越後湯沢駅発着の「はくたか」と名古屋駅発着の「しらさぎ」が1往復ずつの、いずれも北陸本線からの乗り入れ列車計6往復が運行されていた。

しかし、2015年3月14日に北陸新幹線の金沢延伸開業に伴い、特急列車の運行体系が大きく見直され、「サンダーバード」は1往復で継続運行するが、在来線特急「はくたか」は運行終了、「しらさぎ」は全列車が金沢駅発着になった。
特急本数を維持することを念頭に北陸新幹線連絡特急として「能登かがり火」が運行を開始した(2023年3月ダイヤ改正時点で1日4往復が運行されている)。

金沢駅7番のりば。
1日1本の和倉温泉行き特急サンダーバード号

2024年3月16日の北陸新幹線敦賀延伸後は、大阪発着の特急「サンダーバード」の七尾線乗り入れが廃止されるため、代替として1往復増発され、5往復の運転となる予定である。

【名称の由来】
 能登各地には、キリコ祭りに代表される「火」や「灯り」を連想させる夏祭りがたくさんあります。このような「火」と結びついた幻想的な能登の風景、かがり火の燃え盛る勢いをイメージしてつけた名称です。

特急能登かがり火3号 金沢→和倉温泉(乗車日:2023年12月30日)

意外と速い

金沢11:21発の列車に乗車する。681系の3両編成で自由席が1両設けられる。七尾線の起点は津幡からとなるため、津幡まではIRいしかわ鉄道線を走行する。東金沢、森本を通過すする。間近に東金沢までは車両基地が続いており、折り返しのサンダーバードやしらさぎが待機していた。

金沢駅5番乗り場
側面表示。イラストは描かれていない。
681系

津幡駅を減速しながら通過し、七尾線に入る。津幡駅を減速しながら通過し、七尾線に入る。すぐ先にはデッドセクション(電源切替区間)があり、交流から直流へ切り替わる。一時的に車内の空調が停止した。

ここで七尾線の歴史について触れておきたい。

七尾線は、鉄道敷設法により北陸線の一部として盛り込まれたが、七尾線となる部分は編入されなかった。一方、1897年には七尾港が特別輸出港の指定を受け貿易港となるが、この指定は一定量の輸出量を維持ができなければ取り消されるため、金沢など、加賀地方からの貨物を集める目的で、地元の船主などが出資して加能鉄道株式会社が設立され、後に七尾鉄道株式会社(以下、七尾鉄道)へ社名変更して1898年に開業した。

七尾線はこの七尾鉄道を鉄道国有法によって国有化したことを端緒とする。七尾から先は国鉄の手で建設が進められ、部分開業を繰り返しながら1935年までに輪島駅までの全線が開通した。

半世紀ほど後の1987年からは七尾線電化の議論が活発化する。JR西日本と地元自治体との交渉の結果、津幡駅 - 和倉温泉駅間を電化し、和倉温泉駅以北の経営はすでに能登線の営業を引き受け開業していたのと鉄道に委ねることとなり、1989年に津幡駅 - 和倉温泉駅間の電化と和倉温泉駅以北の運営方式の変更を運輸省に提出し、2年後の1991年に電化・転換がなされた。その後、のと鉄道に引き継がれた区間のうち、乗客減少のため2001年に穴水駅 - 輪島駅間の第二種・第三種鉄道事業が廃止され、現在に至っている。

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%83%E5%B0%BE%E7%B7%9A
和倉温泉駅に設置されている電化記念石碑
電化までの経緯

最初の停車駅は宇野気(うのけ)である。津幡町からかほく市辺りを走行している。この辺りは駅間距離も短く住宅地が広がる。宇野気駅には一部の特急列車が停車する。

宇野気から羽咋まで、直線区間を走行していく。北陸本線と比較して高速運転は叶わないが、最高時速100km/hでの運転が可能である。七尾線は単線ながらもある程度スピードを落とさず駅通過が可能な一線スルー方式が導入されており、スピードを落とすことなく通過していく。特急らしい走りを体感できる。

途中の高松駅は一部の普通列車が折り返す。約17分で羽咋に到着する。羽咋はすべての特急列車が停車する。

羽咋を出発して列車は右へ進路を変える。羽咋市から中能登町を進む。ほとんどスピードを落とすことなく、各駅を通過する。途中の良川駅は一部の特急列車が停車する。旧七尾港駅からの線路が右手から合流する。線路として残っているのは七尾駅分の一部のみであり、七尾駅構内の留置線へ入れ替えを行うための引き上げ線として使用している。

12:14に七尾に到着した。七尾駅は七尾線の運行拠点となっている。駅構内には車両留置線のほか、七尾線を管轄する乗務員の拠点「七尾鉄道部」も置かれている。七尾駅からはのと鉄道と接続している。

JR七尾線は次の和倉温泉までとなるが、七尾から和倉温泉までは特急列車とのと鉄道の列車のみで、JRの普通列車は入線しない。運行会社が異なれども、旅客上はJR路線として案内されている。七尾駅からは車内清掃のための職員数人が乗務した。和倉温泉駅到着後に車内清掃と座席の転換作業を行っていた。

七尾駅から約5kmで終点の和倉温泉に12:20、改札口直結の1番のりばに到着した。当該列車は金沢行きの能登かがり火号として折り返し運転を行う。和倉温泉駅は駅員が常駐しておらず、みどりの券売機プラスで定期券や指定席特急券の発売を行っている。

折返しの金沢行き
和倉温泉駅1番乗り場。
能登かがり火は一部を除き3両編成。
サンダーバード号は6両編成である。
2023年12月30日時点で開業まで残り77日

温泉街へは駅前から発車する路線バス等への乗り継ぎが必要である。また、旅館への送迎輸送も実施されており、訪問当日は駅構内に法被を着た旅館従業員が特急能登かがり火からの下車客を出迎えしていた。

駅名標。芦原温泉駅と同様所在地町名入り。
観光特急「花嫁のれん」号は金沢から和倉温泉間を運行する。
可愛らしいポップでお出迎え。七尾線用521系も描かれている。

二次交通としての役割を強化

2024年3月16日ダイヤ改正後、七尾線の特急列車は、能登かがり火号に集約され最大5往復の運行となる。北陸新幹線との接続を前提としたダイヤ設定となる。和倉温泉行きの所要時間は57分前後となる。季節臨時列車を設定し、1時間おきの運行を基本とする。

7両編成の停止位置表示。電化当初は「スーパー雷鳥」が7両編成で七尾線へ乗り入れた。
折返しを待つ特急能登かがり火号。
チェックアウト後の宿泊客を乗せて金沢へ折り返した。

追記:令和6年(1月1日発災)能登半島地震について

今回の記事は2023年12月30日に乗車した特急列車の乗車記をまとめたものである。

この2日後、2024年1月1日に能登半島沖でM7.6の地震が発生し、日本海側の広い範囲で津波を観測した。能登半島の輪島市、珠洲市を始め能登地域が壊滅的な被害を受け、多数の死傷者が確認されている。今もなお、余震が続いている。

報道等からの情報では、今回訪問した羽咋、七尾、和倉温泉を含む七尾線沿線の各地で甚大な被害が出ている。

すでに被害の比較的少なかった津幡から高松までの運行が再開されている。JR西日本は高松から羽咋までの区間について、今後2週間以上で復旧させる見通しを発表した。羽咋から和倉温泉までは運行再開の目処が立っていない。沿線の被害状況を確認する必要があるため、復旧まで一定の時間を要するものと思われる。
1日も早い全線復旧が待たれる。

https://trafficinfo.westjr.co.jp/dat/images/kana/24105nanaojyouhou.pdf

今回の記事はごくわすがではあるが、被災前の様子を記録している場所があることを申し添える。被災前の貴重な記録してご覧いただければ幸いである。

なお、和倉温泉に到着後、七尾駅へ戻り、のと鉄道に乗車し穴水へ向かった。こちらの乗車記についても追って公開する予定である。

また、今後の「北陸特急乗り納め旅」については、地震活動の状況を見極めながらの判断となる。

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