見出し画像

映画/『羊たちの沈黙』『アメリカンサイコ』『ダークナイト(Joker)』/人々が求めたそれぞれの殺人鬼

こんにちわ😊✨

 さて、お盆です✨そして、この季節は映画公開ラッシュ🌼アニメ作品からシリーズもの、そしてコメディ映画まで、比較的家族で楽しめるワクワクドキドキの新作映画が待ち遠しい♪✨
 しかし、そんな中、このドキドキは一方で怖いもの見たさと好奇心のドキドキとなって私には現れます。

 そんなわけで!今回は(というか今回も💦笑)映画が創り出した3人の殺人鬼(架空)を紐解きながら、それぞれの殺人鬼に人々が魅了され、そして求めていたこと考えていきたいと思います😁💕

ハンニバル・レクター『羊たちの沈黙』(1990)

レクター

 まさに、ダークヒーローの元祖、というか我々が「初めて殺人鬼に魅了される」という経験をしたのがこのハンニバル・レクター博士😱✨
 

 さて、レクター博士の圧倒的な魅力の秘密とは?🙈✨

 レクター博士という殺人鬼キャラクターに我々が求めたもの、それは圧倒的なカリスマ性によって我々の隠してきた本能をなんとも華麗に実現してくれる。まさに、我々の「本能の実現」です。
 映画の中のキャラクター設定をみてみましょう。主人公クラリスはFBIの研修生であり、男社会の中で「男勝り」に優秀です。さて、しかしそんなクラリスに対して、まわりの男たち(同僚の研修生、そして先生、またはFBIの先輩たちなど・・・)はクラリスを決して公平には扱いません。
 女である、というだけでなめられ、そして「女」として観られてしまい、生き辛さを感じながら過ごすクラリス。人々はそのクラリスのキャラクター設定に、無意識に自分を重ね合わせます
 映画の中では、このような一般的に「正しい」とされるFBIや警察、そして医師といった人たちの「不公平さ」が強調され描かれます。
 さてそんな中で、この猟奇殺人鬼(なぜなら、レクター博士は殺した死体を食べてしまうというおぞましさの極みのようなキャラクター設定です😱笑)のレクター博士だけは彼女を公平に扱います。彼は人を性別や外見で判断するのではなく、「誠実さ」「礼儀正しさ」といった自身の指標で判断します。

 このキャラクター設定により、鑑賞者に社会の「正しさ」への疑い、危うさ、そして無意識に抑え込んでいるこの、実は不平等な社会の生き辛さが露呈されていきます。

 社会の秩序とやらに期待して、いつも一般的な「正しさ」にすがって生きる我々にレクター博士はその危うさと脆さを浮き彫りにします。
 彼は映画「ハンニバル」(このシリーズの第2段の映画)の中で、自身の殺人の動機について

「無礼な人間を殺して、食ってやりたい」

 となんともおぞましい発言をします😭💦しかし、まさにそれこそがレクター博士が我々を魅了する要素でもあります。彼の殺人は彼独自の「秩序」と「倫理観」のもと計画的に実行されます。本能に従い、自分自身の「正しさ」の中でのいたって正気の殺人なわけです。
 そして人々はそんなレクター博士に自分自身が実現できない「本能に従い行動」することへの憧れと魅力を感じるわけです。

 ハンニバル・レクターという殺人鬼キャラクターは人々の社会への不信感、そして本能への憧れが創り出したものと言えます。

パトリック・ベイトマン『アメリカン・サイコ』(2000)

サイコ

 さて、ハンニバル・レクターという殺人鬼が出来上がってから約10年後に生まれたパトリック・ベイトマン。この殺人鬼キャラクターはレクター博士とは完全に真反対、まさに、社会が創り出した殺人鬼と言えます

 キャラクター設定からみていきましょう。ベイトマンは世にいうエリート街道まっしぐらの男であり、周りと区別がつかないほどの、まさに「社会そのもの」をキャラクターにしたような男です。
 ベイトマンが社会の中で認められ、社会の中に溶け込めば溶け込むだけ、彼の殺人への衝動は膨らんでいきます。会社や同僚との関わりの中のベイトマンと侵犯の本能(要するに人を殺したい!とか罪を犯してやる!みたいな)を抑えきれないベイトマンとのギャップが大きくなるに連れてベイトマンの殺人も大胆に、そして猟奇的になっていきます。

「本当の意味で、自分は存在しないのです」
ベイトマンのセリフにこんなものがあります。

 ベイトマンというキャラクターに我々はまたも自分を重ね合わせます😂✨
 同調圧力によって自分を抑え込まなくてはいけない自分、そして本能にうすうす気がついているのにも関わらずそれに従うことができない自分。その自身と社会への不満が爆発してしまいそうになりながら生きていることに、人々はベイトマンを通じて実感させられていくのです。

 自身の殺人が現実か妄想か、区別もつかなくなるほど狂ったベイトマンは知り合いの弁護士にこの殺人を洗いざらい告白し、どうにかこの自分の殺人への欲望を止めてもらえると期待します。しかし、翌朝にはその告白ももみ消され、いつもと変わらない仲間と社会がベイトマンに待ち受けます。

 そう、この映画で最も絶望的に描かれるのは、ベイトマンの殺人への欲望でも、精神の狂った状態でもなく、どんな本能が抑え込まれていようとも、いつもと変わらない、「エリートであるベイトマンの1日がいつも通り始まる」、ということなのです。

 パトリック・ベイトマンに人々が求めたこと、人々が表現したかったこと。それは人々がまさに「パトリック・ベイトマン」である、ということの訴えといえます。

ジョーカー『ダークナイト』(2008)
*今回はバットマンシリーズのジョーカーについて

ジョーカー2

さて、まさに社会が創り出した殺人鬼ベイトマンが誕生してから8年後(大体10年に一度その時代に合わせた殺人鬼が生まれていきますね。笑)、ジョーカーという全く新しい殺人鬼がまたもや人々を魅了します✨。
(今回はジョーカーというキャラクター全体ではなく、『ダークナイト』(2008)におけるジョーカーというキャラクターで考えていきたいと思います)
 このジョーカーというキャラクター、彼は人々の社会への不信から生まれたわけでも、また、社会が創り出した悪役でもありません。ジョーカーは心底殺人を楽しむ殺人鬼、どことも所属せず、何かの使命を果たすわけでもなく、ただただ殺人を犯していく、まさに真の快楽殺人鬼🙈💦として描かれています。

 設定から見ていきます。舞台はゴッサム・シティ(架空の都市)⭐、ご存知の方も多いと思いますが、バットマンのホームであり、ギャングと汚職にまみれた街です。「正義」「正しさ」から連想するもの(例えば警察やら政治やらそういった・・・)すべてが悪と絡み合い、悪と紙一重の街です。そういった設定からすると、少しハンニバルと近い部分も感じられます。
 さて、そんな、要するに何が悪で何が正義かもわからなくなってぐちゃぐちゃな街に「ジョーカー」が現れます。


 そんな秩序という言葉が通用しない、街に現れた悪役とは?

 ここでこの『ダークナイト』のジョーカーというキャラクターの魅力的な部分、その「無意味さ」💦です。2019年に公開された映画『ジョーカー』という作品ではジョーカーという悪役にも悲しい過去が、もしくはこんな殺人鬼となってしまうバックグラウンドが、とジョーカーにも何かしらの心があったと言うような内容が描かれていますが、
(というか、最近の映画の傾向としてヴィランにも大変な過去があった、ヴィランが生まれる壮絶な人生を知ってくれ!と言わんばかりの映画がはびこっています。)
この作品の中においてはジョーカーは徹底して過去を語りません。たまに悲しい過去を語りだしたと思うとそれが嘘である描写が描かれ、彼の語る内容すべてが本当か嘘か我々はわからないのです。
 何の恨みも、不満も、もしくは何かしらの使命感も持たない殺人鬼、「無意味」で「無秩序」で、そんなジョーカーが殺人に求めたもの、それはただの快楽と言えます。

「なんでそんなに真剣になるんだ?」

 これはジョーカーの口癖ですが、彼は真剣さを嫌い、意味を持たないことを楽しみます。
 すべてが嘘っぽくて遊びで、目的や使命を馬鹿にしていきます。
そんなジョーカーに人々はなぜ魅了されるのか?

 それは、現代社会において、ときに、無意味で無秩序であることが武器となるからです。

 すべての事柄に意図をもたせて、全てに善悪はどうとあれ目的があることを社会はあまりにも求めすぎます。
 この殺人にもきっと何か背景があったに違いない。きっとこの人がこうなってしまったのには深い理由があるに違いない・・・
社会は全てに理由をもたせようと必死になります💦。

そんな社会と人々をジョーカーはあざ笑っているのです

 ゴッサム・シティは現代社会を少し誇張してはいますが描いているのです。正しさの象徴が悪と絡んでいたり、正義のヒーローのバットマンだって、弱虫で優柔不断です。
 そんな現代社会で、意味を持たないことがときに強いということ。真面目に、そんな社会に従って生きていくことの滑稽さを人々はジョーカーをとおしてあざ笑うのです。
 そのように考えると、ジョーカーは現代社会における最も恐ろしい殺人鬼と言えるのです。

人々がジョーカーに求めたこと、それはすべてのことに使命と、目的と、もしくはすべての事柄に事情を求め、期待することへの不信と疑念なのかもしれません・・・

 さて、今回はそれぞれの時代に一世を風靡した3人の殺人鬼を見ていきました。3人とも架空のキャラクターではありますが、どれも魅力的なキャラクター設定により人々をいつまでも魅了します。それぞれの時代の殺人鬼巡りをそれぞれの映画で楽しんでみるのはいかがでしょう?✨















































































































































この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?