造園業の低迷についての考え

10年前の私の造園業の低迷についての意見です。

造園業は、建築と同様に典型的な受注産業であり、発注者側の景況に左右されること、大手元請企業を頂点としたピラミッド型の下請構造が形成されていること、機械施工が困難なため労働集約的であることなどの特徴がある。さらに植物を資材とするため、工事完成後の植物が根づくまでを考慮した設計・施工が求められるほか、植栽に適した時期があるため、受注の平準化が図りづらく、施工は天候にも左右されるなど、他の建設業にはない制約がみられる。
 
1年間の植物の枯れ保証が商慣習として定着しているが、近年は発注者が維持管理費用を十分に確保していない場合が多いため、日照りなどの際の維持管理を事業者負担で実施せざるを得ないことも収益悪化の一因となっている。そして収益悪化のため資金繰りに窮する事業者が増えている。官公庁との取引では、工事費の30~40%を前受金として事前に受け取ることが商慣習として根付いているが、ゼネコンなどとの民間取引では全額を工事完成後に120~130日の手形で受け取ることが多い。仕事の件数が減るなかで、決済期間の長い手形取引は、資金繰りを一層厳しいものにしている。
 
造園業界では、大規模宅地開発やゴルフ場新設などの大規模工事が盛んな時代に豊富な受注に恵まれる状況が長らく続いたため、自ら積極的な営業活動を行うことがなかった。近年、受注が減少するなかで、能動的に受注を獲得することが必要となってきたが、事業者の多くは、従来の待ちの営業体質から抜け切れず、新たな需要に対して積極的に働きかける提案力が乏しい。今後、緑地整備が整ってきている都市部や近郊でのゴルフ場新設や公園などの大規模工事が増加する可能性は低い。
 
従業者数の減少については、職人の高齢化による引退や厳しい経営状況を受けてコスト削減のために賃金カットや雇用調整を行ったため新規の従業者獲得をしなかったことが原因である。

出典:10年前の私のレポート「2章・造園業界の低迷の原因」より

自分のことですが、結構手厳しく書いています。
中段にある手形取引による長い決済期間などの部分はここ10年で結構改善されている印象があります。しかし3次、4次請けはまだ改善されていない気もします。私の印象論ですが、やはり多くは10年前と現状はあまり変わっていないと思います。価格以外での競争力のある造園会社はそんなに多くない印象があります。

「今後、当業界では、小規模工事を効率的に受注するとともに、経営管理能力の向上による事業の高付加価値化を図ることが必要となる。そのためには、提案型の営業が行えるように、企画や設計能力の向上を図るとともに、技術力や品質の向上にも努めることが必要となる。同時に、原価管理の徹底や作業の効率化、工事費見積りの適正化などによって コスト削減にも努め、事業全体の費用対効果を高めることも必要となる。 例えば、A社では、社内人材はコスト管理から、技術、施工管理までを総合的に見ることができるセールスエンジニアのみを配置し、現場施工は全て外注とすることで事業の高付加価値化を図っている。そのために造園施工管理技術士や造園技能士など有資格者を確保し、営業能力の向上に努めているほか、品質向上のため積極的に ISO9001 認証取得に 取り組んでいる。」
 
など上記の事がよく言われてきた。上記は大阪府による造園業についてのレポートからの抜粋である。上記レポートは平成16年前後に作成されたものである。上記のことは10年前から常々言われており、今でも言われている。コスト管理や新規事業の開発などは普通の会社では当たり前のことで、それすらできていなかった。つまり、一般的な会社の体制が最初からできておらず、好景気に甘え何も考えず仕事をしてきたツケを払っているのである。そのため、新規事業を立ち上げる企画力も意思もなく、ピラミッドの構造の中で受動的に仕事を受けるしかないのである。

出典:10年前の私のレポート「3章・造園業界の課題」より

自分で読んでいてちょっと申し訳ない気持ちになります。
少し前から言われ始めた「失われた20年」の説明のような文章です。
過ぎた時間を振り返ると、コストカットによって価格競争が激化した結果人材育成をするこができなくなった為、次世代のプロフェッショナルがいなくなり、その結果人の価値が下がったと思います。
ずっと先を見据えて行動していくことは難しいですが、やはり考えながら行動しなくてはいけないと思います。

次回もレポートの続きで植木屋の価値についてお話したいと思います。