東大まちづくり大学院での講義

母校の東大都市工学科の大学院に、社会人向けのまちづくり大学院というものがある。数年前から、非常勤講師という立場で、講義を担当している。コロナ禍の影響もあり、オンライン開催の時もあったのだが、去年・今年は対面で本郷キャンパスにて講義をしてきた。

その今年の講義が昨日だった。都市の文化政策・観光政策というテーマの科目の中で、特に観光政策の話をするのが私の担当コマ。社会人大学院なのでスタートは夜18:40。ここから途中休憩を挟みつつ、21:35までの約3時間という長丁場である。

毎年履修者は変わるので、ほぼ同じような話をしても良いのだが、私が心から尊敬する恩師、中島直人先生がファシリテーターになっている科目でもあるため、講義をする立場としては実は非常に緊張するのである。恩師の前で授業をすることほどハードルの高い仕事はないかもしれない。

そうすると、1年に1回のこの機会は2つの側面を持つことになる。まずは講師として履修者に観光政策や観光まちづくりについての話題を提供し、議論を展開すること。そしてもう1つは、恩師に対して、自分の成長を見せる場になっているということ。

人文系と異なり、理工系は研究室という1つの単位の中で、教授・准教授・助教という3人の教員がいて、3人から論文などの指導を受ける。中島先生は、私が修士課程の頃は助教として、博士課程の頃は准教授として都市デザイン研究室におり、地域プロジェクトや修士論文、博士論文で直接的には最もお世話になった恩師であり、気安く近づくのは恐れ多いほどの業績を持ち(でも気さくな方ですが)、心から尊敬する研究者である。この先生を前にして、毎年3時間もの講義の機会をいただけることが、自分としては貴重であり、毎年同じ講義ではなく、何か新しい知見を提示できるようにしなければ、というプレッシャーを感じつつ、それを心地よいものと実感しながら今年も新たなパワーポイント資料を作ったのだった。

また来年に向けて、新たな話ができるよう、研究に邁進するのみである。研究というのは1日・2日で成果が出るような世界ではなく、拙速にやろうとするものでもない。結局は、日々の積み重ねで研究が進み、論文というアウトプットになる。それを丁寧に進めていくしかないのだ。

この意味で、教育(講義)と研究というのは別軸にあるものではなく、同じベクトルを向いているもののように感じる。つまり、大学教育(講義)は各研究者の研究蓄積を知る機会なのだ、ということ。

東大本郷キャンパスの図書館。

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