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【Q&A】おすすめの包丁があったら選び方を教えてください

一般に「【牛刀】【ペティナイフ】【出刃】の3種類があればどんな料理でも作れる」と言われる洋包丁。

日本には和包丁があり、【鎌型】や【菜っ切り】、【柳刃(正夫)】、【蛸引き】、【鰻裂き】など様々な形のものがあります。

この他にも【パン切り】や【冷凍包丁】、【細工包丁】、【蕎麦切り】、【中華包丁】等々、集め始めたらキリがありません。

私が愛用しているのは三徳包丁(文化包丁)、牛刀、ペティナイフ、サーモンスライサー、パン切り(冷凍包丁と兼用)、柳刃、出刃、鎌形、中華包丁の9本ですが、これらをおすすめする理由も兼ねてご紹介していきたいと思います。


もくじ

1 りょうりんのおすすめ
1.1 いきなり結論から
1.2 ダマスカス、割り込み、チタン
2 三徳包丁は切れ味を重視せよ
2.1 三徳包丁=文化包丁
2.2 パウダーハイスって?
2.3 ハイスの鋼材は色々ある
2.4 デカイ包丁を選ぶならMisono(ミソノ)一択
3 モリブデン・バナジウム鋼が向いているナイフの種類
3.1 ペティナイフ
3.2 パン切り包丁(冷凍包丁)
3.3 中華包丁
3.4 サーモンスライサー
4 和包丁のおすすめ
4.1 安来鋼(やすぎはがね)の白紙、青紙、黄紙、銀紙
4.2 白紙にはランクにより一号、二号、三号がある
4.3 青紙は一号、二号、スーパーがある
4.4 黄紙はなかなかお目に掛からない
5 まとめ
5.1 まな板は柔らかい素材を選ぶのが優しい
5.2 まとめ


りょうりんのおすすめ

いきなり結論から
これから包丁にも拘って行こうという方に結論を述べますと、三徳包丁とペティナイフはパウダーハイス鋼(鋼)、中華包丁、パン切り、サーモンスライサーはモリブデン・バナジウム鋼(ステンレス)、出刃と柳刃を始めとする和包丁は白紙二号もしくは青紙二号がベストです。

第一に鋼材と製法、第二に工学的なデザインに着目するのが良い選び方のコツです。

牛刀はブレード幅が狭いものは、切った野菜などを乗せるのに向いていませんので一般家庭には必要ありません。

牛刀は別名【筋引き】とも言われるように、本来は牛のような大型の家畜を捌いたり大きな塊肉を掃除したりするのに使用するものなので、三徳包丁というブレード幅の広い便利なものがある日本のご家庭において、牛刀を使用するメリットはまず無いのです。

とはいえ刃渡り30cm近い大型の包丁となると牛刀以外に選択肢がありませんので、この場合はブレード幅の広いものを選択するようにしてください。

ダマスカス、割り込み、チタン
美しい良い包丁を買いたいと思う人ならまず真っ先に検討の対象になるのが、ダマスカスかと思います。

ダマスカス加工は何鉄を何層も重ねた割り込みの一種で、表面模様の凹凸による若干の食材の身離れの良さはあれど(あんま意味ないけど)、切れ味を良くするものではなく、非常に割高な加工だと思いますのでお金が有り余ってる方にしかオススメは出来ません。

「割り込み」というのは切れ味の良い硬い鋼材を柔らかい軟鉄、もしくはステンレスで挟んだもので、これにより刃全体を錆びにくくしたり誤って落とした時にも折れにくくするという強度を補強したものになります。

刀身全体に高級な硬い鋼材を使うとなるとアッチの方がかなりエクスペンジブな事になりますので、一般家庭においては普通の割り込みのパウダーハイスがベストな選択です。

ちなみに最近ではチタンコーティングされた包丁もチラホラ見掛けるようになりました。

私は使った事ありませんが、身離れが良いそうなので食材がくっつかない包丁をお探しの方はチタンコーティングのものを選ぶという選択肢もありますね。

三徳包丁は切れ味を重視せよ

三徳包丁=文化包丁
三徳包丁はもっともポピュラーで、牛刀と鎌型を足して2で割ったような都合の良い形の包丁です。

「最も使用頻度が高い三徳包丁はとにかく固い鋼材を選ぶべき」というのが私の持論で、一度ハイス鋼の三徳包丁を使うともうステンレス包丁には戻れません。

固い鋼材は砥げば切れ味が良く、刃が潰れにくいので切れ味が長持ちするんですね。

鋼材が固過ぎてダイヤモンド砥石を使わなくては砥げませんが、それほど高いものでもないので合わせて購入すると良いでしょう。

モリブデン・バナジウム鋼などステンレス製の包丁ではすぐに刃が潰れてしまってイライラしますし、三か月くらい砥がなくても余裕なので私はパウダーハイス一択です。

パウダーハイスって?

粉末ハイスとも言われ、世界一の切れ味を誇る製法によって作られた製品です。

包丁を鍛えると言うと熱して叩いてを繰り返すイメージがありますが、パウダーハイスは粉末状にした鋼材を型に流し込んで作る【ハイスピード製法(粉末冶金法)】によって作られるもので、アメリカ発の技術の刃物になります。

あちらさんはアウトドア文化が発達しており、パウダーハイスは包丁よりも先にサバイバルナイフで採用されていたようです。

私の使用している牛刀はツヴィリング社の「ツインセルマックスM66」というものですが、ZDP189という日立金属の鋼材を使った(という噂?)もので、ステンレスをハイスピード製法により極限まで硬度を高めたものです。

速水もこみちさんがテレビで使っているのはそれよりもさらにワンランク上のM67というタイプのツインセルマックスになります。

本来ならステンレスは錆びにくくするために鋼にクロムを混ぜる関係で、硬度が下がる=切れ味が下がるわけですが、ZDP189は錆びにくくて良く切れるというニーズを実現した夢の鋼材とも言えるわけです。

ハイスの鋼材は色々ある

ZDP189の他にHAPシリーズ、R2、最近ではスーパーゴールド2なんていうのもよく見掛けますね。

ハイスピード製法で作られた包丁はひとまとめに「ハイス鋼」と呼ばれる事が多いのですが、ハイスの刃物は料理包丁のみならず草刈機や切削工具にも使われていますので種類、クオリティ共に様々なんです。

で、私の愛用している三徳包丁は「藤次郎プロ」の粉末ハイス鋼のものですが、鋼材そのものが違うためかツインセルマックスと比較すると【切れ方】に違いがあります。

藤次郎プロの方が素材に噛み込んでグイグイ切れる感じがあるので私はこちらの方が好きですが、ツインセルマックスは「プツンッ!」と表皮を破ると一気に切れる感じですね。

何で必要ないと断じた牛刀なのにも関わらずこんな高いもん持ってるのかと言われれば「買って貰ったから」としか言いようがありません。

ツインセルマックス・シリーズは見た目もカッコイイのでとりわけ男性には人気だと思いますが、買うなら18cmの三徳包丁、もしどうしても牛刀が良いというのであれば20cmのものがおすすめです。

ちなみにツインセルマックスの柄の部分は木製ではなく【マイカルタ】という「キャンバス=紙製」です。

もっとも、紙もそもそも木から作られるものなのでマイカルタも木材である事には変わりありませんけどね。

デカイ包丁を選ぶならMisono(ミソノ)一択
私はデカイ包丁を一本持っておきたくて刃渡り24cmのツインセルマックスを購入しましたが、ブレード幅が薄くて本当に使いづらいです。

以前持っていたMisono社の「UX10」は、【スウェーデン鋼(ステンレス)】の包丁で刃渡りに合わせてブレード幅が広くなるデザインで非常に使いやすかったのですが、我が家のキッチンにはデカ過ぎたのが玉にキズでした。

UX10はツバが斜めに付いているデザインなので差し込み型の収納には収まりが悪く、几帳面でガッチガチのA型な私にとってはこれが耐えがたいストレスでした。

ハイスの包丁に慣れてしまった私は二度とミソノに戻る気はありませんが、家族が多いご家庭で、給食センターのおば姉ちゃんさながらガンガンに野菜を切りまくらなければならない人には良いかもしれません。

モリブデン・バナジウム鋼が向いているナイフの種類

モリブデンバナジウム鋼は、クロムやニッケルを多く含む錆びにくいステンレス製の包丁です。

砥ぎたてホヤホヤの瞬間は切れ味も素晴らしいので私は結構好きなんですが、オリーブウッドなどの固いまな板を使用していると割とすぐに刃が潰れて切れ味が悪くなります。

ペティナイフ

何故ペティナイフにはモリブデンバナジウム鋼かと言えば、フルーツやレモンなどの果実は酸が強いのでうっかり使用したまま長時間放置してしまうと包丁が傷むからなんですね。

さすがのステンレスも塩や酢、酸には弱く長時間放置すれば錆付いてしまいますが、それでもパウダーハイスや日本鋼よりはずっと耐久性があります。

私の使用しているペティナイフは【片岡製作所】の「Brieto M11プロ」というものですが、刃が薄くブレード幅も狭いデザインなのでペティとしては有能かなと思います。

でも……もし買い替えるとしたらやっぱり粉末ハイスですかね、包丁屋のおっちゃんには「錆びる錆びる」と散々脅されましたが実際、パウダーハイスの包丁は全然錆びませんから。

パン切り包丁(冷凍包丁)

パン切りは波刃になっているので砥げないんですね。

専用の砥石も無いわけではないのですが、非常に難しく手間もかかるため、切れなくなってきたら買い変えるのが良いでしょう。

消耗品となると高級なものを選んでも仕方ないので、安価なモリブデンバナジウム鋼という選択が妥当と言えるわけです。

高級品も使っていた事があるのですが、VG10(V金10号)という材質のものは砥げば砥ぐほど切れ味が悪くなるので全くもって私好みではありませんでした。

現在、私の愛用しているパン切り包丁も片岡製作所のもので柄の材質から「ローズ」という名で売られているものですが、本当にデザインが良く出来ていて超優秀、パン切り包丁においては「これ以外の選択肢は無い」と言い切れます。

中華包丁
中華包丁は非常に便利です。

現在使っているものはメーカー不明の青紙二号のものなんですが、大き過ぎるわ重過ぎるわでステンレス製の安物ほど使い勝手が良くはないんですね。

刀身の大きな中華包丁はその重さを利用して力を入れずに切るのが正しい使用法なんですが、小さめでステンレスの中華包丁の方が大きさも重さも適度で使いやすいです。

また、包丁を収納するスペースが無いので怪我をしないように洗い物カゴの端に置いているのですが、青紙は錆びるので扱いに四苦八苦しています。

重さが切れ味を補助してくれますしモリブデンバナジウム鋼なら砥げば良く切れますので、中華包丁に限っては安物がおすすめです。

サーモンスライサー

脂っこい食材をカットするために、刀身に丸い溝が付いている薄めの包丁がサーモンスライサーになります。

私の使用しているサーモンスライサーはWusthof(ヴォストフ)のものですが、今しがた同じものをネットで検索を入れたらローストビーフスライサーと書いてありましたorz

ゾーリンゲンというドイツ製の包丁ですが、あちらさんは日本の包丁とはだいぶ考え方が異なりまして、切れ味そのものよりも利便性を重視したデザインが多いように思います。

ローストビーフは藤次郎プロのハイスで切れますし、自前でスモークサーモンを作って薄造りにすることはまずありませんので一言で申し上げますと……

「ひひ必要ない……」

和包丁のおすすめ

和包丁の賢い選び方も鋼材に着目することです。

木屋や築地正本のような有名店のブランド包丁はディティールや保証内容がしっかりしているというのが主な違いで、白紙一号を除き無名のブランドだからといって極端に切れ味が悪いというようなものではありません。

安来鋼(やすぎはがね)の白紙、青紙、黄紙、銀紙

和包丁は安来鋼で作られるものがほとんどですが、安来鋼とは日立金属の安来工場で作られる特殊技術による鋼です。

端的に言えば「高品質だからみんなこれを使っている」というわけですね。

よく切れる順から白紙、青紙、黄紙、銀紙とありますが、銀紙は出刃包丁の鋼材として、黄紙はホームセンターなどで売っている和包丁の鋼材として見掛ける事がありますね。

白紙にはランクにより一号、二号、三号がある

白紙は最も純度の高い炭素鋼で非常に固い素材なわけですが、その純度に応じて鍛造の難易度も高まるので最も上位に位置する白紙一号は本職の人でもちょっと躊躇するくらい高いです。

だって……白紙一号じゃなくても刺身は切れますからね(笑)

ですが、まれにチャレンジングとも言えるくらい安い白紙一号もありまして、これは失敗作やナマクラに終わっているものが多いようです。

「安物の白一に手を出すなかれ」といったところでしょうか、私自身後悔していますハイ。

出刃包丁は銀紙(安来のステンレス)の他に白紙三号で作られているものも多いですが、魚の骨と格闘する事を想定して作るものですからあまり固い鋼材では刃が欠けてしまう事を恐れての事でしょう。

ちなみに、私の持っている柳刃はネットで見つけた当時一番安かった白二鋼のものですが、切れ味は申し分ありません。

青紙は一号、二号、スーパーがある

青紙は白紙よりもやや高価と言われますが、こんなもん鋼材の値段がどうであれ加工した後の刃物の値段なんて小売店が決めるわけですから一般人には関係ありません。

ネットで探せば「青紙は白紙よりも安いくらい」です。

タングステンやクロムを加えて白紙よりも作り易くしたものが青紙なので、白紙よりも当たり外れの少ない安定した品質の鋼材と言えるでしょう。

ざっくばらんに言うと「安い青紙はお買い得品」と言えるわけで、切れ味の良い方から順にスーパー、一号、二号という差別があります。

切れ味の要素は鋼材だけではなく刃の厚みやデザインなども関係してくるので一概には言えませんが、予算に応じてお好みのものを選べば良いかと思います。

ステンレスではなく鋼である以上、白紙も青紙も黄紙も本当によく錆びるので、よく水気を拭き取ったりしばらく使う予定がない場合は椿油を塗っておくなど、手入れは入念に行いましょう。

黄紙はなかなかお目に掛からない
ホームセンターの包丁売り場で売っているのがコレ、黄紙です。

私が初めて買った刺身包丁が黄紙で、絵筆を持って日夜油画を描いていた10代の私が何故こんなものを購入したのか未だに不明なのですが、30過ぎになったある日、錆びだらけになった黄紙の包丁が戸棚の奥から転がって来ました。

一生懸命研ぎ直しましたが、さすがに料理に関心の無かった当時の私の手には負えずちょっとアレだったんで捨てました。

手入れの仕方が分からないものを購入すると道具にも可哀想な事をしてしまいます。

誰かがきっと心を込めて作ったものなわけですから「二度とこういう事にはなるまい」と思い、手入れの仕方をよく勉強するためにも包丁と向き合おうとした結果がこの記事を生む事に繋がったわけですね。

ちなみに捨てた柳刃包丁も黄紙とはいえかなり鋭い切れ味だったように記憶していますので、和包丁と中華包丁に関してはホームセンターのものも悪いものではないなと思います。

まとめ

まな板は柔らかい素材を選ぶのが優しい
まとめる前にちょっとだけまな板のお話をさせてください。

柔らかいまな板の素材には檜、イチョウ、柳などがあります。

私は撮影の便宜上オリーブウッドのものを使用していますが、オリーブはかなり硬い材質なため見た目以外におすすめ出来るところがありません。

包丁を長く使いたいと思われるのであれば、上記に列挙したような柔らかい素材のまな板をおすすめします。

まとめ
ちょっと長くなったのでこの辺でお暇しますが、詳しい内容を書こうと思えばキリがないので、もっと詳しい事は包丁専門店の親父に聞くか刃物専門サイトでお調べになってください。

親父の結論も私の結論と変わらないと思いますが、百貨店の包丁売り場で年配のお姉さんたちには聞くだけ無駄です、えぇ。

そのうち鍋や包丁の取扱い、手入れなどにも言及していこうかと思ってます。

特にフッ素加工の鍋の取扱いについて、あまりよく知らない方は少なくないんじゃないか?と思います。

何故なら高級なフッ素加工の鍋を使っている人は、私の回りには一人も居ないから。

私はブランド志向かつ実力No.1の高級品が好きなので、最高級のフッ素加工の鍋を使っています。

「安物だからいいの」とケアなど気にせず、使って捨てるだけでは心のあり方として【料理と向き合う以前の問題】だと私は思うんですね。

何故か包丁ではなく鍋のまとめになってしまいましたが、今回は以上になります(笑)

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