春の嵐が
ふきあれる夜に
ひっそりと
殴り合いをしています

殴り合いをしています
殴り合いを
髪の先をなでます
殴り合いをしています

夕飯の献立が
ああだろうと　こうだろうと
どうでもいいのですが
殴り合いをしています

生協でも　西友でも
構わないのですが
殴り合いをしています
殴り合いをしています

殴った先っぽから
蜜が溢れて
それは夢を見させます
垣間みる先の先の先の

イメージを殴ります
違います
目の前のものを殴ってません
先のものを殴っています

贈与です　プレゼントです
返信不要と言わんばかりに
殴っています
撫でて　殴らんばかりに

月夜に透明な血が
散ります
それでもわたしたちは
殴り合っています

殴ることが撫でることと
重なるくらいに
殴っています
いいえ　言葉ではありません

テレビは付いています
スマホを見ています
殴り　殴られています
圧迫されます　圧縮されます

殴っています
殴っているのです
きっ　と目を見開いて
それはよいねと

殴っています
続けざまに
痛くはありません
殴っていますと書いてるだけですから

殴っています
潜るように
そこに入るために
固いものを壊さねばなりません

殴っています
もはやこの字を使いたくはない
NAGUTTE IMASU
ブランドロゴです　嘘です

なぐっています
というより
なぐってもらうために
なぐっているのです

わたしがなぐらなくては
あなたはなぐれないから
もうこれをなぐるというのは
完全に止めて仕舞いたい

なぐっています
なぐぐっています
なぐぐぐっています
なぐぐぐぐっていますます

どうしてでしょうか
あなたがそれをやめました
わたしもそれをやめて　沈黙
大男の拳に亀裂がはいるみたいな
殴るのは得意そうな
わたしたちはなぐぐったりなぐぐぐったり
なくったり　いや　それを
なくっていいます。
泣くっていうのです。
わたしたちは春の夜に　ひたすら

泣くっていうことを
していたようなのです
殴ってなどはいないのです
泣くってことを