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湖面と、あと残ったなにか

卵黄が沈む湖をみて
息を凍らせながらまばたきをする
誰もここにはいない
失われることのないからきしの凪

指先から また 別の
五本揃って そのあとの
黒髪を弦にして
水面に波紋が響き始める

た たた たた た
たたたた た たた
た た た たたた
たた たた たたた

木々が葉を散らす
食いちぎって深緑の中に
新緑をむき出しにする
香りまでもが までもが

たんに反響するのではなく
一音一音が
夜を明かしていくような
足取りの乙女

ここはすっかり静かになってしまって
随分経つ
たたたたた たたたたた
あなたの声が今も聞こえる

耳鳴りに耳を澄まして
神経の底に触れる
ひりひりとした音が
足元にはえる根を嫌う

明ける朝を見送って
たたたたた
手を振り風がからみつく
たたたたた

西に烈火が沈んだら
別の東に烈火がのぼる
つまりはそれの繰り返し
確からしそうにわたしを映す

眼前の調べに溶かされながら
今日も踊っていたい
あつい ここは
あたたまりながら

燃える湖面を踏んでは跳び
踏んでは跳んで
いじけては跳ねる
跳ねてはいじけた またひととおり

酒と2人のこども達に関心があります。酒文化に貢献するため、もしくはよりよい子育てのために使わせて頂きます。