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歌野晶午『首切り島の一夜』(講談社)【読書メモ】

※ネタバレには気を付けますが、未読の方はご注意を。

 いやー、困ったな。これ。どうしよう。……とのっけからひどい一文で、はじめてしまった自覚はあるのですが、正直作品の説明がしにくい。そしてたぶん私は作者の企みを三割も理解できていない気がする。そんな私が敢えて言えるとしたら、私はちょっとずつ作品を読み進めていたのですが、これは途中で時間を置かずに、まとめて読んだほうが、ミステリ的な企みへの理解を深めやすい気がする。……なんか気がする、ばっかり言ってるな。本作『首切り島の一夜』は同窓会で離島に集まった男女が殺人事件に巻き込まれる、いわゆる孤島もののミステリ、と言えばいいのでしょうか。そのミステリの中で、彼らが辿ってきた半生、彼らのバックボーンがつぶさに描かれていって、そこに惹き込まれているうちに、あれっ、もうページ数が残りすくなくなっているけど……となっていき、これ、どうやって、終わらせるだろう、なんて思いながら途中で、んっ、もしかしたら作者はすごいことをやっているのでは、感じてしまったわけです。帯には、『二度読み、三度読み必至!!』と書かれていますが、まぁ一回通読しただけで分かった気になってはいけないのでしょう。

 ちなみに歌野作品で私が印象に残っているのは、『密室殺人ゲーム王手飛車取り』『葉桜の季節に君を想うということ』『世界の終わり、あるいは始まり』の三作品。こんなこと考えるひとがいるんだ、と思わず唸ってしまうようなミステリが好きなひとに、お薦めです。

 ……こんな感想で本当に良いのか。この【読書メモ】は基本的に読んで面白かった(そして言及したくなった)作品についてのみ書く方針なので、もちろん楽しく読みました。改めて再読したい、そんな作品です。