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『僕だけがいない街』2巻を読んで


※ネタバレ含みます。


やっぱりこの漫画は面白い。引き込まれて、夢中で読み終えた。



タイムリープした主人公は、失踪すると思われる同級生の女の子を助けるために、その女の子と出来るだけ一緒に過ごすように努める。そのために(?)、女の子と交際し、周りの友達からも認められるようになる。


だけれど、この女の子と一緒に過ごしている時の主人公の姿を見ていると、ただ問題を解決するためだけに一緒にいるようには見えない。この女の子に好意を持っているように見える。そして、この女の子も、だんだんとそんな主人公に惹かれていく、ように見えた。


この女の子は、可愛いと思う。無口で打ち解けない子で、「バカなの?」が口癖の子だ。ぱっと見、根暗な陰キャラのように見えるかもしれない。だけど、そうは見えない不思議な魅力を感じる。


ボードゲームなんかがとても強い、という描写もあった。頭のいい子なのだろう。そしてこの口癖の「バカなの?」というのは、相手をバカにしているようでバカにしていない言葉なのかもしれない、とも思う。


そんな彼女だが、母親からの虐待を受けている。父親は何をしているのだろう、まだ登場していなかったと思う。殴られ、罵声を浴びせられ、火傷を負った顔を、氷水に無理やりぶちこまれたりする。


見ていられないようなシーンだったが、こういうことって現実の日本でもあるのだろうな。こういう悲しい事件を未然に防ぐためには、まず健康に生き、そして恋愛をちゃんとやる、ということも重要だと思う。若い頃にまともな恋愛をしていた人間が、親の立場になって子供に酷いことをしている絵は、あまり想像できない、と思う。


この作者が描くキャラクターは、よく個性をとらえているように思う。例えば、主人公のクラスの担任の先生。誠実で人を惹きつける人柄で、父兄や生徒にも人気の人物だ。この人物の、顔立ちや、立ち振る舞いが、リアルに思えて、現実にもこういう人っているよな、思う。



自分語りになるが、この「現実にもこういう人いるよな」ということを、創作に対して、最近よく思うようになった気がする。そして、そういうふうになってから、創作をより楽しめるようになったような気もする。これが、「良い聞き手」であり、「楽しむスキル」が磨けてきている、ということなのだろうか。


脱線ついでにもう一つ。この作者は、主人公に自己投影しているように思う。それは、主人公の考え方やものの見方が、この漫画自体の世界観を反映しているように思うからだ。

そして、さっきも書いたが、この作者は他者の個性をよく捉えていると思う。だが、一つ違和感を感じるのは、主人公の姿だ。この主人公だけが、際立って、現実味のない、つまり「現実にもこんな人いるよな」と思えない、キャラクターに見えるのだ。

邪推かもしれないが、この作者というのは、他人のことはよく観察するし、向き合うことができるが、自分と向き合う、自分を知る、ということができない人物なのではないだろうか。そしてそれは、誠実に対話できる他者がいない、ということでもあるかもしれない。


ストーリーに話を戻す。結局、前の世界線で少女が失踪した「Xデー」になっても、彼女はそこに居て、一緒に登校し、そして無事に1日を終えた。主人公は一旦は喜び、安堵する。

なのだが、しばらくして、少女は学校を休む。主人公は心配でいてもたってもいられなくなり、授業を抜け出し、少女の家や、少女がいそうな場所を探すのだが、少女は見当たらない。そんなところで、2巻は終わった。




これからどうなっていくのだろう。続きが気になる漫画だ。

作者の自己投影についてや、作者自身のことについての推察(?)は、根拠のない自信がある。こういうこと考えるのが得意なのかもしれない。


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