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「女子選手はそういうもの」の功罪

女子サッカークラブに移籍するとなって以来、女子チームにおける「あるある」や、女子選手の傾向や特徴など、老若男女たくさんの先人から貴重なアドバイスを頂いて来ました。

また2部降格が決まって以降、シーズンを正しく振り返り課題を整理するためにと思い、例えば春高バレー(女子)に何度も出場している名門高校の顧問先生や、女子競技でオリンピック代表チームに帯同していたスタッフ、元選手など、さまざまな人に教えて頂く機会をつくって来ました。

・言葉で納得してもらってから行動させる。行動が先にはついてこない。

・未来の抽象を語るのではなく、今の具体を伝える方が良い。

・「答え」を与えないとモヤモヤする。どの選手が悪いか、どのプレーがだめか、何が間違っていたのか、クリアにしないと先に進めない。

・放っておくとサボる。ここから先は自主性のラインは、決めではなく日々調整しないと行けない。

・男子では考えられないと思うが、あの選手が移籍するから自分も移籍する、が普通にある。

などなど。

どれもがなるほどな、と思うことばかりだった一方で、心のどこかで「それって男女は関係なくないか?」という思いも捨てきれません。

もちろん、生物学上の性差や、特にヘルスケア分野においての専門的な理解、配慮、サポートは今の何倍も充実させていくべきだと考えていますし(その視点で、大和シルフィードでは21シーズンからスポーツファーマシストがチームに加入しています)、

性の多様性に関するアクションもそうですし、

認知や発達の傾向を正しく捉えてコミュニケーションしていくことは大前提だと思います。

でもそれは、女子チームだからそうするのではなくて、古今東西、スポーツでもビジネスでも、「チーム」や「集団」が強くなっていくために必要な人間理解の一部分ではないかと思うし、クラブにとっても指導者にとっても、「今目の前にいるサッカー選手にいかに向き合うか」ということが大切なのであって、「女子選手はそういうもの」となった瞬間に不要なバイアスの呪いにかかってしまいそうで、その点では、学びながらもかなり慎重に生かすべき情報と参考程度に聞いておくべき情報を整理して来ました。

そうして来たのですが、それでも「そういうものなのかな・・・」と諦めにも似た感情を抱かされた、とある関係者のコメントがあって、それは、

「全員とは言わないけど、女子選手の場合、あるシーンでサボった仲間の選手がいたとして、それを怒ってくれない監督は嫌だ」と。

もちろん、監督が即座にプレーの修正を図るべき時もあるし、チーム全体を引き締めることが必要な時もあるけど、それって選手同士で指摘し合うなり、要求し合うなり、時にはケンカでぶつかり合いながら精度を高めていったら良いのではと思ってしまったのですが、「いや、それは言えない。監督に怒って欲しいものなんだ」と。

これは、移籍して1年半の期間のあらゆる経験の中でもトップクラスに衝撃的なことで、「女性だから、男性だから、ではなく目の前にいるサッカー選手に向き合うべき」と考え続けて来たにも関わらず、それが一瞬にしてへし折られかけました。

誤解のないように念の為に記載すると、この発言に近い考えの選手が悪いとか、レベルが低いとか、そういうことでは一切ありません。おそらく、小中高大とサッカー選手として指導を受けて来た中で、自分が対応しなくてもサボった仲間を怒ってくれる指導者がいたのだろうし、そしてそのことによって良い結果や素晴らしい経験を得られたのだろうし、仲間同士で激しくぶつかりながらチームとして成熟していくような経験もそこまではしてこなかったのかもしれない。それらのことはリスペクトされるべきです。

むしろ、2部降格という現実に向き合わなければならないなら、そして本当に勝ちたいなら、そうしたマインドも含めて受け止めて体制を修正していくべきなのかもしれない。そして「女子選手はそういうもの」として対応していくべきなのかもしれないなと、悩み揺らいでいました。

そんな揺らぎが少し落ち着いたのは、とあるトラっぽい有名な方とおしゃべりしていた時に、「でも、監督に怒ってほしいと選手が言うようなチームって、あまり応援したいと思わないですよね」という言葉でした。

そうですよね。

大和シルフィードの掲げるミッションの土台には、スポーツや女子サッカーの力で、社会を、地域を、企業を、女性を、エンパワーメントしていくという想いがあります。観ている人が元気になれること。その源であるべきチームや体現されるサッカーがどういうものであるべきかという原点に常に立ち戻りながら、そしてフラットな視点をキープし続けながら、「女子選手はそいうもの」に関する情報を見極めていければと考えています。

もうこれ以上、負けたくない。チームもクラブも強くなりたい。だからと言って、女子選手や女性スポーツに関する粗悪なバイアスを再生産するようなクラブにもなりたくない。けど負けたくもない。の繰り返しですね。

今週末から、いよいよ22シーズンのトップチームが始動します。


(プロの女子サッカークラブって、どうやってつくればいいんだろう。)




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