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AI時代に「Style 京to琉」つくってみた。

ラフなタイトルで恐縮だが、2023年4月29日(土)・30日(日)の2日間、京都劇場にて「Style 京to琉」という新たなオーケストラバンドのコンサート制作を担当させていただいた。人間とは本当に妙な生き物で、願えば願うほど人と人が繋がり、想いを込めて発する言葉には魂が宿って心と心を繋いでいく。そして、生身の人間が奏でるからこそ生まれる「音楽という芸術」による感動と興奮の複雑性に改めて気付かされた。「Style 京to琉」とはまさにこの感動と興奮を具現化したプロジェクトであり、AIやChat-GPT最盛の時代に突入した今だからこそ、我々人間は中央値から外れた趣のある楽しみに心を傾けられ、本質的な心の豊かさをますます手に入れられるはずだと考えている。

私は2019年からAnlyのライブ制作をお手伝いさせていただいており、これまでいくつかのツアーやイベントライブを本人・マネージメントと共に共創させていただいてきた。しかしながら、2020年2月から始まったコロナ禍により、予定していた数々のライブを中止・延期せざるを得ず、やれるとなっても厳しい条件付き(入場者数半分など)の中で開催してきた。お客様の歓声を奪われたJ-POPやROCK業界にとって厳しい状況の中、クラシックコンサートについては早い段階でコロナ禍前に近い形で開催されていた。J-POPやROCKに比べてクラシック音楽には圧倒的な歴史があり、学問として成立していることで大きな社会性も獲得している。そして、そもそもお客様が歓声も出さないので飛沫感染というリスクも低く、コロナ禍の厳しい状況において、行政や地方自治体から多少の優遇があったとしてもおかしいことではなかった。逆に、我々はクラシックコンサートから学ばなくてはいけないのではないかと感じ、コロナ禍に何度かクラシックコンサートに足を運ぶようになった。そんな行動をしている際に、Style KYOTO管弦楽団プロデューサーの柴田氏との出会いに恵まれ、AnlyとStyle KYOTO管弦楽団によるオーケストラバンド「Style 京to琉」の結成話に至ったのである。

従来のクラシック音楽やオーケストラ業界の枠を超え、「伝統と革新の融合」をモットーとされているStyle KYOTO管弦楽団との出会いは、このプロジェクトの実施においてとても重要なポイントだったと考えている。始動したタイミングから「新しいものを作る」という意気込みに溢れ、Anlyサイドとして関わる私も手探りながらも興奮が隠せなかった。従来の「ボーカリスト+オーケストラ」という構図のコンサートではなく、「バンド」を創ることがミッションとなっていたこともあり、あえて包み隠さずに、バンドが創られていく過程もお客様に公開して楽しんでいただけるのではないかと考え、イープラス(SPICE)様にご協力いただき、事前リハーサルからレポートを入れて、プロジェクトの裏側を積極的に公開していくことにした。

SNSでもあえて事前にリハーサル音源を公開し、コンサート制作の過程も含めてプロセスをエンターテイメント化できないかと試みた。

本番の内容についてはここでは多くを語ることはせず、以下のライブレポートを是非ご一読いただければと思う。バンド名の通り、京都と琉球のアイデンティティが詰め込まれた新曲も誕生し、オーケストラバンド「Style 京to琉」の初演はこれでもかと言わんばかりに有機的な爆発が起きまくった事件(コンサート)になったと感じている。

冒頭にも少し触れてみたが、AI全盛の時代にも関わらず、「Style 京to琉」のステージ上にはコンピューター制御されている楽器は一つもない。オーケストラとしては当然のことかもしれないが、生身の人間が作り出す空気振動が何重にも重なり合い、音楽となって魂が宿るということを、今回改めて肌で感じることができた。伝統的要素と現代的要素、そして日本が世界に誇る琉球文化と京都文化の融合。既存の概念や価値観に囚われず、令和時代の新たな芸術を発明できたという手応えがある。なんと、ルネッサンスはパンデミック後に勃興したという歴史的事実もあるらしく、まだまだ何かが起きそうな「Style 京to琉」の今後に是非ご注目いただきたい。

to be continued…。


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