日の出2

初心者IR担当がテンバガーを経験し、IR支援者になっていく話

IR担当になり、2年で株価が10倍になりました。
その経験を活かし、IR支援者に転身して新たな挑戦をしますので、キャリアを振り返りつつ、今その想いを言葉に残しておきたいと思います。

目次

・不適切会計から、初心者IR担当の誕生
・初心者IR担当が、一生懸命やったこと
・IR担当から、IR支援者へ
・私は今、どんなモチベーションか


不適切会計から、初心者IR担当の誕生

私は2010年に新卒でリンクアンドモチベーションという、モチベーションを切り口とした経営コンサルティング会社に入社以来、コーポレート部門で仕事をしてきました。
経理業務、管理会計、財務会計、決算、監査対応など会社の数字に関する業務の多くに携わり、その後は経営企画として中期経営計画や新規事業立案などを、代表の小笹の下で取り組んできました。
経営企画時代は代表にコテンパンにのされていたので、なかなか辛かったです。成果らしい成果はあんまりないのですが、その当時一生懸命考えたビジネスモデルのひとつが事業化されていったことがせめてもの救いです。

そんなわけで割とくすぶっている時に転機が訪れました。
それが、「不適切会計」の発生でした。

恥ずかしい話ですが、2015年の下半期に当社グループ会社で不適切会計が発生し、それに伴って当社の決算発表遅延が生じました。ここでは書けないほどいろいろありましたが、会社としてもう二度と起こしてはいけないと固く決心しています。
再発防止策は2015年中に実施完了していますが、当然上場会社としてあるまじき事案でしたので、株価は急落。2016年の初頭にはついに時価総額が110億円ほどにまで落ちてしまいました。

これが資本市場と本気で向き合うきっかけとなります。
「資本市場からの評価はこのままでいいのか」
「私達の存在意義を今一度、資本市場に問うべきではないか」
という代表の想いから、「時価総額経営」を社内で打ち出し、IR活動を徹底的に強化することになりました。

しかし、これまではっきりとしたIR担当がおらず、経理や社長室などがIR活動を兼務するような状態が続いていました。IRを強化するためには、IR専任の部隊を作る必要があったのです。

こうして、これまでなかった「IR担当」というポジションが生まれ、会社として初めてIR専任担当を置く経営判断に至ります。その担当者が、私でした。

初心者IR担当が、一生懸命やったこと

IRを専任でやってきた前任者がいなかったため、決算発表資料を作ること以外、何をやればいいか何もわかりませんでした。自社の株主構成も知らなければ、「機関投資家って、誰?」みたいな感じでした。まさに初心者。

そんな私が一生懸命やったことは、たった一つ。

足で情報を稼ぐこと
これに尽きる。

最初は、「どんなIRの戦略を立てようか」とか頭でっかちに考えていました。しかし、考えれば考えるほど、空理空論の中に居るような感覚が強くなってきました。そのうち「足でリアルな情報を稼がないと、考えようがない」という結論に至るわけです。なので、途中からろくに考えることをやめました。

資本市場のルールなどの基礎的なことは証券会社などIR支援会社の担当者に教えを請い、IR活動のリアルな実態についてはIR担当のコミュニティに飛び込んで先輩IR担当者に根掘り葉掘り聞き、資本市場のリアルな声(当社の評価など)は機関投資家や個人投資家の声をできるだけ自分で集めました。IR活動改善のためのアクションプランを考えるにあたって不足していた情報のパーツを粛々と集めたのです。

そのうち、いろんなことがわかってきました。
当社の強みや弱み、IR活動の課題、投資家のリアルな期待、IR担当者として成長しなければならないポイント、など。そういった問題や課題を一つずつ丁寧に改善していったのが、この2~3年のIR担当としての歩みでした。
具体的に取り組んだことは、今回のnoteでは書きませんが、詳しくお知りになりたい方はこちらの記事を、もっと詳しくお知りになりたい方はこちらの記事をご覧ください。

結果として、たまたま幾重にも運や縁が重なったおかげで、2016年末には時価総額が4倍になりグループ全社で最優秀プロジェクト賞を受賞し、2017年末には時価総額がさらに2倍以上の水準となり、全社MVP受賞に繋がりました。

また、この間取り組んできたIR活動をきっかけに、ありがたいことにメディア露出やイベント登壇機会をいくつかいただけたことは、私のキャリア形成上、大きな潮目となりました。特に、『PR3.0 Conference』に登壇させていただいたことは、自分の歩む方向性について、大いに考えさせられたイベント登壇機会となり、大変感謝しています。

なお、私は時価総額向上が私だけの功績とはちっとも思っていません。むしろ、上記リンクの記事にも「全社一丸IR」とあるように、全社員で取り組んだ活動の結果だと思っていますし、最終的には市場が決めることであり、発行体がコントロールしにいくようなものではないことは十分理解していますが、それでもこうした社内外から当社のIR活動にスポットライトを当てていただいたことは、非常に光栄なことでした。

IR担当から、IR支援者へ

2018年になり、IR・PRの責任者となりました。これまでほぼ一人でやってきたIR実務でしたが、待望の新卒社員も迎えて組織として対応できるようになってきました。戦力が増えたこともあり、兼務で担当するようになったPRにも力を入れることが徐々にできるようにもなってきました。

特に注力してきたのは、「エンゲージメント・レーティング」という業績との相関性の高い非財務指標の発表に関する記者発表会の推進であり、この発表がNHKやフジテレビでもニュースとして取り上げられたことで、グループ全社の最優秀プロジェクト賞にも選ばれました。(当社リリース文面はこちら

このように、これまでIR実務でアップアップだった状況から、新しい種まきができるようになってきたことは、自分自身の仕事のモチベーションに直結していました。こうした種まきは、IR担当者として感じた会社の課題感や問題点から立脚していて、まさにIR活動を起点としたコーポレートブランディング向上や、社会に対する新たなメッセージ発信への挑戦でした。

異動が言い渡されたのは、そんな矢先の2018年12月のことでした。人生とは何が待ち受けているかわからないものですね。

2019年1月からは、グループ会社のリンクコーポレイトコミュニケーションズ(通称LCI)というIR制作物(統合報告書など)や動画配信(決算発表など)を手がける会社に出向し、営業部門の責任者を務めることになりました。これまで「IR担当者」という立場で、資本市場と会社を繋ぐ結節点を担ってきましたが、その経験を活かして今度は、「IR支援者」という立場から、上場企業のIRを支援します。

私は今、どんなモチベーションか

この3年で、IR担当という稀有な職種を経験させていただき、大変多くの学びと発見がありました。今後noteに少しずつ書いていきたいと思いますが、最も思うところは、「資本市場に、期待が溢れていない」ということです。

・日本人の「投資資産」の割合の低さ
・投資家の「不確実な未来」への注目の低さ
・企業経営者や役員層の「IR活動」に対する意識の低さ
・IR担当者の「モチベーション」の低さ

こうした違和感を、IR活動やステークホルダーとの対話の中から感じてきました。

基本的に、資本市場は「勘定」の世界です。得をするか、損をするか。ゼロサムゲームになりがちです。そのことは十分理解しています。ですが、それでは資本市場の世界観は投資家にとっても、発行体(企業側)にとっても、アップデートされていかないでしょうし、世界の「報酬」や「意味」の総量は増えていかないと思います。

私は、ゼロサムゲームからの脱却の鍵は、「期待の創出」にあると考えています。別の言葉でいえば、「エンゲージメント」であり、「ホモ・サピエンス全史」的にいえば「虚構への信頼」かもしれません。これらの存在が「金銭報酬(勘定)」に還元されることに加えて、「非金銭報酬(感情)」に還元されていくのではないかと考えています。そして「期待」や「エンゲージメント」は、市場との間に生じるコーポレートコミュニケーションの活性化でしか具現化・実在化できないはずです。コミュニケーションがなければ、会社と市場は分断されたままで、相互反応を起こさないからです。

長くなりましたが、こういったことをIR担当として感じてきました。だからこそ、上場企業のコーポレートコミュニケーション(IR活動)に変革の機会を提供し、期待があふれる資本市場を創っていきたいと思いますし、「資本市場にモチベーションを」という、これまで誰も言ってこなかったメッセージを社会に問い続けたいと思います。

今回の異動は、資本市場の常識を変えるメッセージ発信への挑戦機会として非常に前向きに捉えています。このテーマは、モチベーションを切り口にIR担当者として本気で取り組んできた私だからこそ、やる意味のある活動だと「期待」しています。きっと資本市場のゲームルールが大きく変わるきっかけや「うねり」を創り出せるはずです。

最後に、こうした機会を作ってくれた運命の巡り合わせと、自分を取り巻く全てのステークホルダーに感謝します。本当にありがとうございます。
これから挑戦する新しい壁に立ち向かう覚悟と決意の表明として、ここに今の想いを刻みます。

リンクアンドモチベーション初のIR専任担当として2年で株価10倍を経験し、全社MVP受賞。同社IR・PR責任者を経て、リンクコーポレイトコミュニケーションズ(LCI)マネジャーとしてIR支援者に。IRの常識を変える。Twitter→@1nose_Ryotaro