コロナ禍収束に向けた企業の雇用に思う

ILO(International Labour Organization)の速報値は、驚きを以て世界中に配信された。

今回のコロナ禍により職を失った人の数は、フルタイムで働く人の1億5,000万人が職を失い、所謂、パートタイマーを含めると、実に4億人に影響が出たと推計している。

当然だが、このコロナ禍が収まれば新たに就労者数は増加するだろうが、それでも、2,000万人が職を失ったアメリカですら、6月の新規就労者数の増加は、430万人台となり、アメリカ労働省が統計開始して以来、過去最高の増加を示した。

ILOの試算により、世界的な雇用統計値の悪化が指摘される中、アメリカのように解雇も採用も柔軟なアメリカ社会のように、失業者も増えるが好調な国内経済は、雇用状況の改善も早い。

日本においては、5月の雇用統計によると、失業者は200万人、失業率は2.9%となり、5ヶ月連続で、増加している。それでも、3%を切る数字は、マクロ経済学上から言えば、まだかろうじて完全雇用状況を維持している。給付金等の緊急経済対策が消費動向の下支えに寄与していることは間違いないが、例え自粛ムードから徐々にコロナ禍前に戻っていると言っても、例えば外食産業やサービス業等、接客を伴うような業種は、今後、更なる廃業等が増加する懸念があるだろう。

同時に、働き方そのものが変革期を迎えたことで、特にリモートワークが可能な職種については、雇用条件が緩和されることも予想される。

既に外資系の営業職は、かなり前から事務所勤務を経ないで、自由な営業活動を行っているが、それらが国内企業にも拡大するのではないだろうか?

私も、本業は大きなくくりで言えば、営業職に該当するが、あの事務所に出勤するという昭和〜平成の勤務形態には多いに違和感を感じている一人だ。要は無駄な時間なのだ。出勤時のストレスも重なり、それだけ疲労も蓄積する。

課題は、接客業種の人材が不足になる将来展望が見えているということだ。

非正規雇用が多いこれらの職種は、簡単に解雇に追い込まれるが、一方で経済活動が戻った際に、比較的容易に雇用が回復するとも言える。ただ、そこにネックとなるのが、賃金の問題だろう。実際、大企業は今回のコロナ禍の影響で業績悪化が見込まれる場合、人を雇うことに及び腰になる。

事実、令和3年度の新卒者について、新規採用数を減らすと回答している企業も多い。

そのような中、非正規雇用者の比率が高いサービス業において、果たして経済活動の回復と共に、企業が求める人材の再雇用が潤滑に行われる可能性は極めて低い。

その解決策は、時給を上げる以外にない。

今の国内の状況は不景気とは言えず、如何にコロナ禍から脱却するかにかかっている。つまり雇用形態や、働き方の変革を求められているに過ぎないのだ。

規模の大小に関わらず、今、企業に求められているのは、柔軟な採用姿勢であろう。言い換えれば、この機会を利用すればより優位な人材の発掘も可能になるし、働き手もより好条件の職場を探しやすくなったとも言えないだろうか?実際に、全国平均の求人倍率が1.2倍に下がったとは言え、決して低いとは言えない。

その意味で、雇用主も労働者も切り替えの時であるとの認識が必要になる。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?