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日銀の政策転換の意味とは?

令和6年3月19日は大きな歴史の転換点になった。

日銀がこれまでの量的緩和政策から、それ以前の短期金利を見据える政策に転換した日だ。

私はこの前の拙稿で、春闘の途中経過でゼロ金利政策の見直しは拙速であると指摘してきた。

これまでの量的緩和策によって、インフレ状況に転換したと言っても、10年間の日銀の政策によりインフレ状況が作り出されたとは言えず、あくまでもコストプッシュインフレでしかない。

野村総合研究所の木内登英氏が指摘するように、所謂、継続的なインフレ状況とは言い切れない。つまり景気が上振れしたことによる社会全体の安定した需要増(デマンドプル)とは必ずしも言い切れないのだ。

コアCPI予測値

物価上昇率は低下傾向を辿るも実質賃金の増加は2025年後半に(1月CPI):2%の物価目標達成は難しい:日銀の政策転換が、円安・株高の流れを反転させる可能性も

巷間、指摘されているように、ゼロ金利解除を切望していたのは、金融機関であり、庶民生活には関係が無かった。今回の政策変更を踏まえ、大手都市銀行は相次いで預金金利を20倍に引き上げた。具体的には、0.001%から0.02%となる。

庶民にとってさしたる違いは無いと思われがちだが、そもそも、日本国民には1,300兆円の個人資産が眠っている。その個人資産に対し、20倍の金利を全体の数値で見ると約25兆円の金利収益が増加する。個人資産には恩恵があるように見えるが、実は預金金利は個人の住宅ローン、自動車ローンをはじめ、企業の設備投資に大きな影響が出る。それらの金利も跳ね上がるということだ。

勿論、貸し出し金利がいきなり20倍になることはないが、少なくとも、消費意欲の減退に繋がるのは間違い無いだろう。

また日銀は、春闘の途中経過で平均5.3%の賃上げを大きな判断材料としているかのように言うが、あくまでも途中経過であることと、中小零細の賃上げ動向はこの数字には反映されない。日本の労働人口の8割を抱える中小零細に賃上げが波及してこそ、実質賃金の増加の全体像が見込まれる。

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