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[19/20 CL] RB Leipzig vs PSG マッチレビュー

両チームともRound 8で劇的な勝ちをした。ライプツィヒはナーゲルスマンがアトレティコ相手に用意をした3331から343への可変戦術、パリは後半終了間際の怒涛の逆転劇。

さらに言えば、ナーゲルスマンが現役時代アウクスブルグのリザーブチームにいた時の監督がテュヘルだ。ナーゲルスマンは怪我で悩まされていたが、戦術眼を見初められてコーチングキャリアをテュヘルに進められた。言わばドイツ時代の師弟対決だ。

マネージャーとしてもコーチとしても優秀なそんなドイツ人指揮官二人がどんな戦術を選手たちに授けたか見てみよう。

1, Lineups

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ライプツィヒ

5バックスではなく、中盤3枚の451のような形をとってきた。攻守切り替えの部分で良い働きをできるライマーを右サイドハーフに持ってきた。

PSG

インサイドハーフにはヴェラッティとエレーラを入れてきた。この試合は怪我から戻ってきたものの安全をとってヴェラッティはベンチから、ゲイエは怪我でベンチ外。

ムバッペは足首の怪我から復帰して万全のようでスタメン。驚いたのはムバッペがトップではなく、ネイマールを0トップ(フォルス9)で使って来たところだ。

2, ネイマールの0トップ起用

攻撃面

ビルドアップ時は相手ディフェンスラインと中盤のライン間で縦パスをもらうか、もしくは中盤の脇まで降りていってボールを引き出していた。

ネイマールがボールを受けに降りてくる時、ムバッペとディマリアはかなりの頻度で相手CBとSBの裏を狙う斜めの動き(ダイアゴナルラン)をしていた;PSGのセンターバックや中盤からの浮き球のパスでもゴールに直結させる事ができる。

ネイマールが前を向いて仕掛けたときはマークに付いた相手選手を一人以上外せるので、前線3枚でビックチャンスシーンを多く作り出していた。

守備面

驚いたのは前線3人が相手ディフェンスとGKにプレスを仕掛けていたことだ。特にネイマール。ライプツィヒのアンカーとセンターバックのパスコースを消しながら絶妙な距離感のプレスをしかけていた。

*ディマリアの得点に結びついた41分のシーンを挙げよう。

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ライプツィヒの左サイドバックのアンへリーニョがボールを戻した瞬間、ディ・マリアがライプツィヒの左CBのクロスターマンと右CBのウパメカノのコースを切りながらプレスをかけた。そしてネイマールが中盤の底に下りてきたザビッツァーとウパメカノの間のコースを切りながらプレスでGKに圧をかけた。そしてムバッペは右サイドバックのムキエレ、ザビッツァー、ライマーにアプローチに行ける距離で見ていた。

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この三人の絶妙なプレスによってGKのグラーチは圧を感じて選択を誤り、パスを中盤に通してしまった。結果、パスがずれてプレスをはめに来たパレデスに奪われ、ネイマールがボックス内右側でフリックで落として、最終的に3人のプレスがディ・マリアが決めたゴールに結びついた。

3, PSG中盤の機能性

ビルドアップのポジショニング

改善できる点があったとするならパレデスだ。オフザボールの時、センターバックのキンペンベからボールを引き出すポジションが良くなかった。

*37分のパレデスのポジショニング

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ご覧のようにキンペンベがムバッペに縦パスを入れられるレーンにかぶって遮っている。しかもライプツィヒの中盤に後ろからチャレンジされる恐れがあるボールの引き出し方をしている。

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もしキンペンベの左真横に体をより開いた状態でポジショニングできていれば、相手の前線のプレスからより距離を置けて、ライン間にいるネイマールやオーバーラップしたベルナトへなど、縦パスをつけられる選択肢が増えただろう。

ファイナルサードで失った時のボールリカバリー

基本PSGの前線3人は下がってブロックを組まないので、3センターのマルキーニョス、パレデス、エレーラが如何にうまくボールリカバリーをするかが重要だった。

その点でいうと、ファイナルサードでボールを失ったときの素早いエレーラのボールリカバリーがかなり良かった。

*36分と37分のエレーラのボールリカバリーシーン

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ポールセンがキンペンベを背負って上がってくるダニ・オルモにパスをつけようとするシーン。エレーラが素早く駆け上がるエンクンクとダニオルモの間に入ってパスカットしてファールをもらったシーン。カウンターを受ける場面でマルキーニョスとともに非常にプレスバックが早かった。

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ネイマールがドリブルで仕掛けてムキエレとカバーに入ったカンプルに奪われたシーン。

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ディマリアがファーストチャレンジに行ったがかわされるも、エレーラがザビッツァーの背中の死角から素早くボールリカバーしたシーン。エレーラが中盤から守備担当エリアを捨てて素早くカットしに駆け上がってきた動きが良かった。SofaScoreによるとエレーラのデュエルの勝率は4/6そしてインターセプションの数はマルキーニョスと同様2回とスタッツからも守備の面で良かったのが見て取れる。

4,ライプツィヒ後半の交代から見えるナーゲルスマンの意図?

後半にオルモとエンクンクに変わってシックとフォルスベリを入れてきた。

RBL後半

攻撃時にはフォルスベリが左のハーフスペース(ケーラーとチアゴシウバの間)、シックがよりポールセンに近い位置でツートップ気味に右のハーフスペース(キンペンベとベルナトの間)ポジションを取らせる意図がナーゲルスマンにはあった。

基本PSGは押し込まれた時43のブロックを組むのでどうしてもサイドバックが孤立する時がある。ナーゲルスマンはそこを狙った。

要はサイドで2対1の状況を作ろうとした。ライプツィヒ右側ならライマーとザビッツァー(シックのときもある)対ベルナト、左側ならフォルスベリとアンへリーニョ対ケーラーだ。理論としてはハーフスペースを取ることでサイドバックが中に絞らざるをえなくなり、大外のアンへリーニョとライマーがクロスを上げるときに活きてくるという寸法だ。

しかし、交代で入ったフォルスベリはライン間、ハーフスペースにとどまらず自由にふわふわとした動きで下がりすぎる事が多かったため、活かしたいアンへリーニョのオーバーラップとクロスで思ったほど多くのチャンスを作り出すことはできなかった。

5, 感想

ドイツ人師弟対決でどんな試合になるかと思いきや圧倒的なパリの攻撃力の前にライプツィヒは為す術なく負けることとなりました。

やはり試合の局面で実力差が出たなと思った面は、欧州の舞台で数多のビックマッチを接戦で戦ってきたPSGとの経験値の差。あと一回の勝利で決勝に行けるという精神面での焦りが選手のエラープレーに現れてしまった気がします。

ライプツィヒはナーゲルスマンという実力を兼ね備えた良い監督のもと、チームはベスト4まで勝ち上がってきた実績は紛れもない事実なので来季のCLも楽しみです。

次にPSGが当たるのはバイエルンとなるか、番狂わせでリヨンとなるか。いずれも楽しみな決勝になりそうです笑。

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Sources: Whoscored (https://www.whoscored.com/) and SofaScore ( https://www.sofascore.com/)

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